現代の若者は長寿に備えを

健康な人間の正常な寿命は110歳から120歳であると、ロシアの老年学者ウラジーミル・ハヴィンソン氏は確信する。=Getty Images/Fotobank撮影

健康な人間の正常な寿命は110歳から120歳であると、ロシアの老年学者ウラジーミル・ハヴィンソン氏は確信する。=Getty Images/Fotobank撮影

健康な人間の正常な寿命は110歳から120歳であると、ロシアの老年学の専門家は確信している。

数年前に著名な女優ソフィア・ローレンが71歳で、美女の起用で有名なピレリ・カレンダーに登場したとき、自分が大革命を起こしたなどと思っていたわけではあるまい。彼女はその後、80歳でも大人気のカレンダーの撮影に招かれるほどの容姿を保つことが出来ることを証明した。それによって、年齢制限にまつわる多くの紋切り型見解を打ち壊したのだ。

健康な人間の正常な寿命は110歳から120歳であると、国際老年学協会・ヨーロッパ支部の会長をつとめる、ロシアの老年学者ウラジーミル・ハヴィンソン氏は確信する。公式記録に残っている最長寿は122歳。フランスの女性長寿者がこの年齢まで生きた。ロシアの公式最長寿は117歳。現在、世界で110歳から114歳の長寿者は88人で、100歳以上の人は20万人以上いる。老齢化は世界中で進んでいる。より正確に言えば、老齢化というよりも「高齢化」だ。19世紀末の小説では「40歳すぎの初老の男性が部屋に入ってきた」と書かれたが、現在ではこうした定義は、60歳どころか70歳でも当てはまるとは限らない。

現在の西側諸国の平均寿命は、75歳から80歳で、上限は110歳から120歳。その差の30%から40%はどこからくるのだろう。それは、すべての器官や組織に、予備の細胞、あるいは幹細胞という、ある種の「部品」があるからだとハヴィンソン氏は説明する。脳出血や心筋梗塞のような重い疾患のあと、器官は、それらの予備能力によって回復するチャンスを持っている。もしこの可能性が完全に機能すれば、人間は100歳から110歳まで生きるというのだ。

だが問題は、ほとんどの人間にはそれらの細胞が含まれていないということだ。有害な生活条件、劣悪な環境、喫煙、飲酒など、さまざまな原因によるものだ。つまりわれわれは、長生きするためにわれわれの中にある貯えを、自分で無駄に浪費している。人間が長生きをして、若く健康でい続けるという積極的長寿のテーマが、現在の科学で最も人気ある潮流の一つだというのは偶然ではない。じつはすでにソ連の時代から、「若さの秘薬」を探す試みは行われていた。もっとも、やはりこれに参加したウラジーミル・ハヴィンソン氏によれば、当初これは、有害因子の影響を受けた際の器官の抵抗力を向上させるという、軍事目的の開発だった。だが、思いがけず、それらの薬剤が免疫系にプラスの作用をし始めたことが判明した。とくに癌性腫瘍の増殖を遅らせたのだ。

「若さの秘薬」発見に関して、誰も発表することはなかったが、それまで一般的だった老人概念に収まらない人がますます多く現れてきている。有名なバレリーナのマイヤ・プリセツカヤさんは、70歳まで舞台に立ち、68歳で「瀕死の白鳥」を踊った。彼女は今でも20歳から25歳は若く見える。ロシアのフィギュアスケーターのオレグ・プロトポポフとリュドミラ・ベロウーソワのペアは、75歳を過ぎた今も、アイスショーでファンを魅了し続けている。

現在、多くの国々で、年金受給年齢の引き上げが話題になっている。老年学者ウラジーミル・ハヴィンソン氏は、経済的視点からも、長い人生のための「資金」としても、それは必要だと確信する。西側諸国では、年金受給年齢の人々の数が増大の一途をたどっている。完全な労働能力のある国民をより多くもつ国家が勝利するだろう。莫大な数の働かない年金生活者を維持していくのは、どこの経済にとっても手に余ることなのだ。

興味を持てる仕事に就き、自分が社会に貢献していると信じる人たちの方が、ずっと長く若さを保っていられることは、よく知られている。しかも医学や科学は同じ場所にとどまっていることはなく、「若さの秘薬」の発明は、そう遠いことではない。つまり、現在20歳から30歳の人たちは、長生きに備えなければならない。

おそらく、ある人たちにとっては、マイヤ・プリセツカヤやソフィア・ローレンの年齢記録は、これまでどおり、手が届かぬことのように思われるだろう。あるいはそうした人たちは、この二人の女性は時代の先を行ったのだと思っているかもしれない。だが、もしかするとその逆に、50歳で老化することに同意する人たちは、どうしようもなく時代遅れだと言えるのかもしれない。