人類の分かれ道:技術の爆発的進化か中世への回帰か

サミットのスピーカー=Global Future 2045 / Press Photo撮影

サミットのスピーカー=Global Future 2045 / Press Photo撮影

文明社会の住人が、特に疑念も抱かずに、目下の経済危機を乗り越える術を模索する中、より深刻な問題が差し迫っている。近い将来、相転移が起こり、文明社会の発展の方向性が変わるのだ。暗黒の中世へと急激に下降するか、まったく新しい世界へと上昇するかである。これを議題として、世界会議「地球の未来2045」がモスクワで開催された。

 ロシアの童話には、分かれ道で正しい道を選ぶという展開が多い。あるところで主人公が分かれ道に近づくと、案内の石がある。右に進めば馬を失い、左に進めば頭を失い、真ん中に進めばお姫さまと王国の半分も手に入る、と書かれている。

 人類はまさにこうした分岐点に立っていると言える。科学者の計算によれば、21世紀半ばないしはそれ以前に、地球の文明社会に相転移が起こり、世界がまったく変わるというのだ。どのような世界になるのかはまだ誰にもわからないが、輪郭の一部はすでに描かれている。

 アメリカの科学者、未来学者、発明家で、「技術的特異点」という概念を提示したレイ・カーツワイル氏は、「地球の未来2045」の主賓として初めてロシアを訪れた。「技術的特異点」とは、仮定されたある時点より急速に技術が進歩し、人間がそれをコントロールすることが不可能となることである。つまり、何よりも先に人造人間が現れるということだ。

 危険な瞬間となるのは、人間レベルの人工知能が開発された時だ。どの研究者もその開発を確信しており、時期について意見が異なるのみである。特異点を2045年とするカーツワイル氏など研究者や、それよりも早い2030年と予測する研究者もいる。

 このシナリオを絵空事にすぎないと考える人に、カーツワイル氏は次の数字に注目することをすすめている。印刷機が世界中に普及するのに400年、固定電話で50年、携帯電話で7年、ソーシャル・ネットワーキング・サービスで3年である。1980年、カーツワイル氏は「インターネットは世界的なネットワークになり、毎年ユーザーが倍増していく」と書いたが、これは優れた洞察であった。2045年までには、「人体にナノロボットが適用されるようになる」とも予測している。

 人体について、この会議の参加者の多くは、物理的な人体そのものに投資をする時期が訪れたと確信している。人間の急速な発展があって、初めて機械の急速な躍進が可能になるという論理はわかりやすい。アレクサンドル・フロロフ生物学博士の考えによれば、人体と人工頭脳装置はいずれひとつになるという。「それは、身体的な力や持久力の増強に、骨格と呼ばれるものを利用して可能となるかもしれないし、特定の条件下での作業に、三本目の腕などの追加的な器官の利用を利用して可能となるかもしれない」。博士の展望では、人工身体またはアバターができる。また、開発に必要な資金調達を行えれば、最初の成果が数年後に披露されることも確信している。看護師や、子守役の機能を果たす関節ロボットなどが、そのひとつだ。

}

 これは活発な宇宙開拓時代以来の、過去40年から50年で初となる新しい世界的プロジェクトになる可能性がある。事実、ロシアの作家で未来学者のマクシム・カラシニコフ氏は、今日使用されている技術の前衛すべてが、1960年から70年に開発されていたことに注目している。当時は資本主義と社会主義の二体制が世界で対立し、緊張した状態となっていたが、激しい競争のおかげで、最も壮大な課題が実現可能となったのである。例えば、有人月旅行計画にいたっては、課題が掲げられてから月面着陸するまで、わずか9年しかかからなかった。ソ連が崩壊した途端、世界の技術開発は違う道を進み始め、浅宇宙や深宇宙の垂直的開発より、地球内通信の水平的開発を好むようになった。

 現在、西側諸国は自国の産業をアジア地域に積極的に移管しているが、専門家にしてみれば、生産が消えるということは、科学や教育が必要なくなり、崩壊していくことを意味する。その後にくるのは文化である。そこから中世への回帰までは、そう遠くない。「新しいタイプの蛮族が現れるだろう。原因から結果への流れがわからず、簡単にだまされてしまう。非論理的な考えで、自分たちの行動がもたらす結果を予測できず、簡単に破滅して行くだろう」とカラシニコフ氏は考える。地球上の人口の半分近くがこのような人々となったら、人類の新たな「中世」が訪れるのだ。文明社会を救うのは、新たな宇宙開拓や「アバター」プロジェクトといった、世界的規模の大型プロジェクトだと考える。このようなプロジェクトが、新エネルギー資源、産業の新技術など、科学技術の新たなアプローチの模索へとつながるのである。 

 現在、息も絶え絶えの金融システムを救うため、数兆ドルも浪費されている。人類の発展や革新の基盤となるような、まったく新しい開発に、この多額の予算を配分したらいいのではないだろうか。このようなプロジェクトの立ち上げは、さまざまな国の研究者が力を結集してこそ実現できる。会議に参加した試験宇宙飛行士のセルゲイ・ジュコフ氏は、NASAの火星開拓プログラムが廃止された際、アメリカ人研究者が「これからは、ロシアや中国と共同開発しなければならない」と述べたことをあえて例にあげた。