=タス通信撮影
買物用網袋、車の「ザポロージェツ」、多面形のコップ、学校の制服など、この世代のロシア人なら、見れば子供時代がよみがえってくるものばかりだ。美的観点からこれらを評価する人は、恐らくいなかったであろう。与えられた物を、ただ使っていたにすぎないからだ。だが、これらのものは、傍目からはどのように映るのだろうか。Slon.ruは、イタリア出身の工業デザイン専門家で、イギリス・デザイン大学で教鞭をとるウンベルト・ジラウード氏に、ソ連のデザインについてどう思うかを尋ねてみた。ジラウード氏は感動していた。
1. 三角パックの牛乳
「テトラ・パック社開業当初の包装資材が、陶器でリメイクされたものがあるのですが、最近それを見たばかりです。これが基本形であり、時代のシンボルであることは知っていますし、今日のデザイナーがこのシンボルをアレンジしていることを嬉しく思います」
2. 日めくりカレンダー
「日めくりカレンダーは、西側諸国でも人気がありましたし、今でも普通に使われています。たくさんの紙を使用しますが、日付をめくるたびに物理的に時の流れを感じられるので、何か愛着を感じますね」
3. コーヒー
「おもしろい容器ですね。シンプルかつ経済的で、2色しか使われていないのに今風です。このような容器のコーヒーなら、喜んで買うと思います。最近のプラスチック製のコーヒー容器より、本物感がありますね」
4. オーデコロン
「ラベルの写真の男性がちょっとコワイかもしれませんね(笑)。面白半分で評価するなら、ラベルの繊細なグラフィック・デザインと、容器のがっしりとした形のコントラストがなんともいえません。ビンの首とフタを見る限りは、オーデコロン以外にも汎用されていた容器のような気がします。例えば日用化学製品とか、安いお酒です。実用的なビンですね。具体的な市場も決まらないうちに、次から次へと独特な包装容器の開発に資金を投じている現状は、私にはよく理解できません。現代の若き実業家の多くが、商業分野におけるデザインの意味を知らず、投資価値が不明なものにお金をかけているわけですから、残念です」
5. コンデンスミルク
「これぞロシアの傑作です。この製品が好きな人は多いですし、缶のまま温めることができるから好きだという人もいますね」
6. コンドーム
「正直、これには驚きました。ソ連では、コウノトリが子供を運んでくると信じていましたから。ソ連にセックスが存在したとは…。包装について言うと、機能的の一言です。感情的なものが一切入っていません。あの時代に誰か包装を気にする人がいたのでしょうか。私は好きですよ」
7. おもちゃ
「子供の時、似たようなゲーム機を持っていました。ほとんど同じですね。アメリカのミッキー・マウスと、ロシア語のキリル文字の組み合わせがとてもおもしろいです。気に入りました」
8. 多面形のコップ
「シンプルかつエレガントな普通のコップで、どっしりとした安定感が表現されています。ふちギリギリまでウォッカを注ぐ人がいないことを願います」
9.買物用網袋
「ソ連時代の優れたデザインのひとつだと思います。生態系や環境汚染、過度な消費の問題に関心のある人ならば、これがそのような問題を解決できる、生活に根付いた知恵であることがわかるでしょう。網袋は、私にとって合理的体系の一部で、系統的デザインの一種なのです。つまり、食品を購入する際、袋に入る量が決まっているため、備蓄用となってしまう余分な買い物を防ぎ、必要な分しか買わなくなります。食品をムダに包装する必要もなく、袋は何度でも使うことができる上、小さくまとめられて、いつでも携帯することができます。現代のデザイナーが最重要視すべき製品でしょう」
10. 学校の制服
「とてもエレガントで、正統派お嬢様の地位を反映しています。私自身、学校に通っている時は制服を着ていました。今このスタイルは、ウェイトレスなどが着用する場合が多く、学校の生徒さんでは見かけませんね」
11. 「ザポロージェツ 」
「FIATのデザインが基本にありますが、ソ連デザインの最高傑作でしょう。ザポロージェツには独自の特徴があり、例えばボンネットの網は、自動車に迫力を与えています。自分の目で本物のザポロージェツを見たことはありませんが、この車の話はたくさん聞いてきました。特に修理や装飾の話ですね」
12. 冷蔵庫
「魅力的なデザインです。現代ロシア人は中国製の冷蔵庫を調達し、商標変更して流通させていますが、なぜ独自の古き良き製品に、新たな息吹を吹き込もうとしないのか、私にはまったく理解できません」
引用元記事 slon.ru
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