認識の隔たり

=Reuters / Vostock 撮影

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世界経済フォーラムで、ロシア人ビジネスマンたちはそろって、西側の投資家がロシアを誤解していると主張するが、本当に彼らが指摘する通りなのであろうか。

ダボスで開催された世界経済ファーラムでは、ロシア人ビジネスマンたちの口調はそろっており、それはめずらしくも、ロシア政府の見解に類似したものだった。彼らはブルームバーグやCNBCなどの国際ビジネスチャンネルに登場し、ロシアの実情と西側諸国および国際社会が同国に対して抱いている見解の間に「認識の隔たり(パーセプションギャップ)」がある、と不満を述べた。

 しかし、彼らが言う「認識の隔たり」とは、一体何のことなのであろうか。先ず、ロシア政府、ロシア人ビジネスマンおよび同国内で事業を展開している国内外の投資銀行は、ロシアの資産が、先進国、発展途上国双方の市場における同等の資産に比べて過小評価されていると、何年もの間指摘してきた。

その典型的な例は、数年前に物価が高騰した際、市場評価額で短期的に世界最大の企業となったガスプロムである。政府関係者およびガスプロム社幹部の中には、近く同社の評価額が1兆ドルを超えることを予想する者もいた。

しかし、ガスの供給を巡ってロシア政府と欧州が繰り広げた争議が思い起こさせるように、政府が国内および外交政策の目標を達成するためにガスプロム社を利用していたということは、周知の事実である。このことから、ガスプロム社が純粋に商業目的で運営されているのではない、という認識に至る。

同様のことは、ロシア政府が過半数の株式を所有するロスネフチやその他の大企業にも当てはまる。

しかし、政府はロシア企業の低市場評価額がこの理由によるものであると認識することを拒否し、その代わりに、同国の弱体化を企んでいると疑われる西側諸国の政策を非難する方を選んでいる。 

これらの陰謀論は、国内の支持強化に役立ち、国民からの受けが良いだけでなく、変革の必要性に対する認識度も低下させている。しかし、国内に起因する理由を見いだすことを拒否することで、ロシア企業は何兆ドルにも及ぶ市場評価額やその他の機会を失っているのである。

ロシアの地に落ちた評判とビジネス環境は、さらに状況を悪化させている。ロシア人の専門家までもが、腐敗と官僚主義が2000年よりも著しく悪化し、今日の同国の発展を妨げている、と指摘する。

ロシア政治と、この国から絶え間なく発信されるネガティブな見出しは、世界に悪印象しか与えていない。ユコス社の解体およびミハイル・ホドルコフスキー氏の逮捕、西側諸国の主要企業が大規模の投資を行った後に支配権を失ったとする数々の訴訟、そして最近の政治家、銀行家、ビジネスマンやジャーナリストに対する攻撃などは、そのすべてが重なってロシアへの投資を防止し、ロシアの資産評価額を不必要に下げることにつながっている。

しかし、政府や大多数のビジネスマン、国際投資銀行家らは、この問題を解決するどころか、これらの否定的な側面を無視して、ビジネスのみに専念したいと考えている。確かに彼らが指摘する通り、ロシアにも改善は見受けられる。しかし、モスクワ在住の懐疑的で抜け目なく現実的な各国の特派員たちが、腐敗や官僚主義を背景とする投資ストーリーに騙されることはない。無論、ソ連を「核兵器を持つアッパーボルタ共和国」になぞらえるという、古いネタを彼らが蒸し返すことも時にはある。

ロシアは残念なことに、第二次世界大戦後の英国のように、帝国を喪失した後、自国の役割を見いだせないという状態にある。ロシアは未だに帝国のうぬぼれをぬぐい去ることができず、自国の肯定的なイメージを世界に押しつけようとする。ロシアは、このアプローチが最初から功を奏する見込みがないことを全く理解できていないため、その努力は見事に失敗するのだ。

ウラジーミル・プーチンは安定を掲げて現在キャンペーンを行っているが、世界がどれほどのスピードで変革を遂げており、変革を受け入れること以外に選択肢がないということに、彼自身も大多数のロシア人も気づいていない。変革しない、またはそれを遂げることができない国々は、単に取り残されるだけである。これが、ダボスでロシア人ビジネスマンが議論するべきであった真の「認識の隔たり」なのである。

イアン・プライド氏は、モスクワに拠点を置くEurasia Strategy & Communications社の創業者で現在同社のCEOを務めている。