ホッキョクグマの砦より

今日は「ロシアNOW」が皆さんをホッキョクグマの保護区にご案内します。

アレクセイ・ベズルーコフ撮影

 雪のウランゲリ島は、北極圏に棲む多くの動植物にとって生命の砦である。ここでは何メートルもの積雪の下で、体重わずか400グラムの小さな赤ちゃんが誕生する。まだ目も見えない、かよわい姿をしているが、これが地球上で最も巨大な猛獣、ホッキョクグマの子どもだ。

 夏の間中、ホッキョクグマの暮らしぶりは、近づきがたい北氷洋の氷によって、人間の目から隠されている。ホッキョクグマは氷塊にのって浮遊し、アザラシやセイウチの狩りをする。春の終わりから夏の初めにかけてホッキョクグマは交尾期にはいる。この時期にオスはメスを求め、小熊はオスによって生命の重大な危険にさらされる。

 厳しい冬に向けて、ホッキョクグマは積極的に脂肪を蓄える。満腹になり満足したホッキョクグマは砂浜で眠ったり、海を泳いだりして、小熊も成獣もよく遊びを楽しむ。ホッキョクグマはおどろくほど生活を愉しむ動物で、互いに我慢強い。

 冬眠の穴から出てくるホッキョクグマを見るのはとても楽しい。母親のあとから柔らかい毛の小熊が2匹、転がり出てくる。長い冬眠のあと、母親は背伸びをして、雪の上を転げまわる。太陽の日差しの下に寝そべり、小熊たちに身を投げ出す。小熊たちは乳を吸い、すぐに互いに遊びを始め、機をうかがってはひっきりなしに母親の鼻を舐めようとする。母親は小熊に合わせ、手足や頭をのっそりと動かして、それに応える。小熊はもう体重が5キロほどになり、暖かい白い体毛で被われている。

 3月になると、ホッキョクグマは冬眠の穴から這い出て、小熊たちに外の世界を見せる。

島には「ホッキョクグマの家」として知られる保護区がある。この保護区が始まったのは162年前のことだ。島の生態系を調査している保護区職員と極地気象観測所の職員のほかは、島には人間は誰もいない。この自然保護区はユネスコの世界自然遺産に登録された。

 卵の形をした雪穴への通路は狭く、ちょうど斥候兵のように匍匐前進で行くしかない。穴の中は大人が楽に4、5人は入れるほどの広さだ。氷層に覆われた床面は、つるつるに光っている。壁と天井には、足の爪で引っ掻いた無数の傷痕があり、雪に埋まった白い体毛でいっぱいだ。 

 ホッキョクグマは好奇心旺盛で、新しいものや珍しいものには何でも興味を示すが、攻撃性はまったくない。おそらく高緯度での暮らしがこれらの獣に、お互いに対する驚くべき寛容さを教え、危険なときには、起こりうる問題から逃げることによって身を守ろうとする性癖を身につけさせたのだろう。

 「ある州で太平洋セイウチの小さな群れと10頭ほどのホッキョクグマを観察していました」と保護区の職員ウラジーミルさんが語る。「暗い時間帯に、大胆な振る舞いでホッキョクグマが、われわれの居る古い錆びついた有蓋トラックに近づいてきます。ホッキョクグマの鼻息に目を覚ますと、われわれは彼らの関心を逸らすため、棒で壁を力まかせに叩くのです」

 冬が再び海を氷で覆うとき、ホッキョクグマは北氷洋の王国に帰っていく。お腹に子を宿したメスだけは陸に残り、雪の毛布が山の斜面を被う、輝くオーロラの下で、新しい世代が世に現れるのを待つのだ。