冬の日暮れ=ロイター通信/Vostock Photo撮影
モスクワの寒さと除雪
赤の広場の除雪=AFP/East News撮影
モスクワでは冬はおよそ4カ月続き、1月と2月の平均最低気温はマイナス10度ほど。記録は1940年のマイナス42,2度だ。50日ほど雪が降る。日本の豪雪地帯に比べれば積雪量はずっと少ないが、一夜で40センチ積もることもある。
雪が降り始めると、市の公益事業局除雪車が出動する。長いこと雪が降りしきると大変で、そのときには10分おきに除雪車の横隊が道路を進んでいく。一台で一時間におよそ12キロの区間を除雪する。
雪は道端に寄せられ、できた雪の山がダンプに積まれ、200ある融雪施設の一つへ運ばれる。そうした施設では、一日に300トンほどの雪を水に変えることができる。除雪装置の維持費として市は年間1200万ユーロ(約12億円)を支出している。
ロシアのドライバーも冬は出費がかさみ、液体ワイパーだけでも一日5リットル分ほどかかる。
暖房
橇遊びが好きなら橇の運び上げも厭うな(楽は苦の種、苦は楽の種)
ロシアの伝統的な暖炉=ロシア通信撮影
都市化とともに伝統は過去のものとなりつつある。現代のロシアではもう暖炉の上で脇腹を暖めることはなく、暖房は集中管理システムで行われている。
人々は、酷寒の戸外へ向けて窓を開け閉めすることで、快適な室温をつくりだしている。
暖房による空気の乾燥は、加湿器メーカーにとって「金脈」となった。
ドイツのボッシュ社やシーメンス社の資料によれば、ロシアで現代的な暖房と断熱技術を用いれば、80%ほど暖房費を節約できるという。にもかかわらず、依然として「集中暖房」が唯一可能なモデルであるようだ。
パイプラインが凍らないように温水はまず発電所で温められてからパイプで家庭に直接運ばれている。ロシア人は夏にその代価を払っており、温水パイプラインの修理作業により温水の供給が3週間ほど止まるのをじっと我慢する。
娯楽
氷点下20度で水浴する快感
ロシアでは、寒中水泳愛好者は『セイウチ』と呼ばれる=ロイター通信/Vostock Photo撮影
冬は「ロシアン・エクストリーム」の季節。例えば、ロシア正教徒がイエス・キリストの洗礼を祝う1月19日は、真の「セイウチ」にとっていちばん大切な日だ。氷に開けた穴での定期的な水浴は身体を鍛え健康を増進すると確信している人たちは、自分たちをセイウチと呼んでいる。
その1月19日の深夜12時ごろに大勢のセイウチが水に浸かる。幸い、首都の気温がマイナス20度を下回った昨冬でさえ大きな事故は起こらなかった。万一に備えて救護班が常に待機しているのだ。
三度浸かったら身体をしっかり擦って暖かく着こむか、もっといいのは、蒸し風呂へ行くこと。ロシアの蒸し風呂は、高温(80度~100度)で高湿度なのが特徴だ。
凍った湖では、日頃の慌ただしさを逃れてきたロシアの男たちの姿が見られる。彼らは、防寒着に身を包み、砕氷具で氷に穴を開けると、魚が冬眠から目覚めて餌に食いつくのを待ちながら、直径20センチの穴の前に何時間も座っている。
森や野原ではスキーを楽しむ人が多い。年金生活者が、愛用のソ連時代の木製スキーを履いて、強化プラスチック製のスキーを履いた若者たちを楽々と追いぬく―。こんな光景を目にすることも珍しくない。
いでたち:厳寒への備え
Getty Images/Fotobank撮影 |
ワーレシキ:このミトンの手袋はワリャーグ人(スウェーデン・バイキング)によってロシアへ伝来したもので、「ワーレシキ」という名前もそこから来ている。保温にすぐれ、おばあちゃんたちはじぶんの孫たちにせっせとそれを編んでいる。
ワーレンキ:羊毛のフェルトで作られる長靴。マイナス30度以下の寒さをものともしないが水気を通してしまう。そんなときはオーバーシューズが併用される。ロシアではそうしたフェルトの長靴が年間450万足製造されている。
ウシャーンカ:下にさがる耳蓋い(名前の由来は、耳〔ウーシ〕)のついたこの帽子は、まさにロシア人のシンボル。今日、人造の毛皮でできた粗末なものからクロテンの毛皮を使った豪華なものまでありとあらゆるウシャーンカがある。
自然
寒さを防ぐ厚い毛皮と皮下脂肪
アムールトラ=Alamy/LegionMedia撮影 |
アムールトラとしても知られるシベリアトラは、世界最大のトラで、全長3メートル、体重350キロを超えた例もある。そればかりでなく、氷雪の中でも棲息する唯一のトラでもある。極東の大河アムール流域では気温がマイナス45度まで下がることがある。トラを凍死から守るのは、毛足の長い毛皮と厚さ5センチの皮下脂肪だ。現在、ロシア、中国、北朝鮮の国境地帯には、およそ500頭が棲んでいるが、棲息圏は徐々に狭まっており、今も絶滅の脅威に晒されている。
もっと稀少な野生動物は、コーカサスヒョウで、長いあいだ絶滅したとみなされていたが、2003年に、コーカサス地方で一頭の棲息が再び確認された。多くのロシア人は、一年前に2014年の冬季オリンピックのマスコットにヒョウが選ばれたとき、自国にヒョウが棲んでいることを初めて耳にした。コーカサス山脈では、冬は寒くて雪が多く、夏は乾燥して暑いので、アムールトラと同様、ヒョウは高い適応能力で際立っている。
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