民間企業で働く第1世代

2011年11月30日 猿谷徹
私は、どの国で働くにせよ自分が働く国の人々のことをよく理解することが、その国での仕事を成功させる決め手だと信じている。いったいロシア人とはどんな人たちなのだろう?どうすれば一緒にいい仕事ができるのだろう?この素朴な問いからロシア人の異質性が見えてくる。
正社員たち=PressPhoto撮影
正社員たち=PressPhoto撮影

ロシア人国家の起源は 世紀にさかのぼる。リューリク率いるノルマン人たちが南下して、キエフ公国(現在のウクライナ)を立てたのが始まりとされている。ヨーロッパ圏、イスラム圏、アジア圏と三つの異なる民族文化地域の接点という地理的、歴史的なバックボーンを持ち、それらが融合しながら1000年の時を経て現在に至っている。

こうした背景からか、ロシア人はアジア的なメンタリティも持つ不思議な民族である。

ロシア人の気質は、意外に日本人と同じように新しいもの好きで、良いものなら伝統やしがらみに縛られることなく、積極的に受け入れる。同様に、初対面の人、特に外国人に対してシャイだ。外国人にとってロシア人が、武骨で笑わない人たちと思われているのはそのせいだ。

しかし、何かのきっかけがあると、家族のような親しさで接してくれる。そして実に義理堅い。一方彼らは日本人には無い、極めて強烈な個人主義、自己主張、執念深さを胸の内に秘めており、協調的なチームプレーは苦手だ。

会社設立前後、社員の採用面接をしていた時に感心したことがあった。どのロシア人も教育・知的レベルが非常に高いことだ。ところが採用後、彼らと接する中で、なぜこんな常識が分からないのだろうとか、なぜこんな考え方をするのだろうと悩むことが多かった。 

ある時、ハタと気がついた。少なくとも 
20 年程前のソ連時代には、まともな民間企業など存在していない。民間企業で働く目的、基本的なビジネスルール・マナー、スキルの向上といった教育機会もなかったはずだ。ということは、世代を超えて現在の全てのロシア人が、民間企業で働く第一世代なのだ。

この気づきは私にとって強烈な一撃だった。自分の親も親せきも民間企業で働いた経験のない環境で育った当社の社員は、働くことに対して何を期待しているのだろう?

それは、 
40 代以上の旧ソ連世代と 20 代 30 代の新生ロシア世代で大きく異なる。旧ソ連世代は、「やってもやらなくても給与は一緒」的な価値観が強い。一方、新生ロシア世代は、仕事に対しては意欲的な姿勢は見せるが、基本的に指示待ち族だ。以前こんなことがあった。指示した仕事が進んで無いことを指摘すると、「どうやるのか指示されていないので、やってない」との答えにはさすがに驚いた。両世代に共通していることは、自分の仕事の範囲と責任を限定的にとらえ、何か問題が発生すると他に責任転嫁してしまうこと。休暇や自分の都合を優先し仕事を平気で放り投げてしまう傾向があること。しかも、自分の権利主張だけは忘れない。

まるで、学校を卒業したばかりの新入社員の集団のようだ。であるならば、時間はかかるが全員をグローバル企業で働く新入社員として一から教育しよう。教育すべきは、「公平性」「透明性」「個の尊重」「実力主義」「チームワーク」等のグローバルスタンダードから基本的ビジネスルール・マナーまでの全てだ。同時に、業績に連動したボーナス制度や福利厚生等の充実も図ろう。 

この発想の転換から 
年、ロシア人社員との信頼関係が築かれると共に、彼らの仕事に対する姿勢は激変した。期待以上の業績も実現できたが、日系企業にとっては当たり前のことを導入したに過ぎない。この当たり前なことが、一般的なロシア企業では得られない。ロシア人社員が、我々外資系企業に期待していることは、この当たり前のことなのだと最近改めて気がついた。

現在私は、ロシアは非常に優秀な人材の宝庫だと認識しており、彼らに期待と信頼を寄せている。

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