ロシア全土でランドラッシュ

中国の鉱員=Reuters/Vostock-Photo撮影

中国の鉱員=Reuters/Vostock-Photo撮影

2007~2008年の食糧危機をきっかけに地球規模のランドラッシュ(農地獲得競争)が繰り広げられているが、広大なロシアもその主舞台の一つだ。極東で、また、中央黒土地帯で、外国政府や企業が農地の獲得に狂奔している。その中で、トップの本命はやはり世界一巨大な胃袋を抱える中国だ。土地法改正と、外国人への農地レンタル奨励がラッシュの導火線になった。

まず極東では、韓国造船最大手の現代重工業が9月下旬、沿海地方ウラジオストクの150キロ北方に農業法人を設立したと発表した。広さは6700ヘクタールで、2012年から豆、小麦などを年間7千トン生産。2012年までに農地を5万ヘクタールまで拡大する計画。


また、アムール州政府の公式サイトによると、北朝鮮の代表団が9月に同州を訪れ、数十万ヘクタールの農地貸借の交渉を始めた。ヘクタールあたりの年間貸借料として約50ルーブル(約120円)を提示して交渉しているという。

しかし、主役となりそうなのは、やはり13億の人口を抱え、ロシア極東と境を接する中国だ。中国は早くも4年前にアムール州などで計5千ヘクタールをレンタルするなど(レンタル料は1ヘクタール=10ドル=約770円!)、主に極東、シベリアを中心にロシア全土で様々な規模の農場を経営。

さらに、先月プーチン首相が訪中した際に、中国側は最大40億ドル(3千億円)規模の投資ファンドを中露共同で創設することを提案、合意をみた。「農業プロジェクト」が投資対象候補の一つに挙がっている。



中央黒土地帯では欧州勢

一方、中央黒土地帯では、欧州勢もラッシュを演じている。社会運動団体「農民戦線」副議長のドミートリー・ラリオーノフ氏によると、イタリアとスイスの合弁企業は最近5年間で40万ヘクタール以上を取得し、さらに近い将来面積を倍増させる予定だ。リトアニア企業も5万ヘクタールを買収。

ロシアの全耕地面積は4億2百万ヘクタールで、実際に耕作されているのはその半分強。うち民間の所有(非国有地)は1千万ヘクタール強で、これが当面のラッシュの対象となる。

ラリオーノフ氏は、中露ファンドの目的の一つは、「旧ソ連圏の農地への投資」であり、地の利から見て、第一に極東が投資の対象になるのは明らかだと推測する。



農地取引法はザル法

ロシア全国でのランドラッシュのきっかけは、第一に、2002年の土地法改正だ。それまで売買が禁止されていた農地が、実質的に外国人でも買えるようになった。

一応、外国人の農地買収に対する「制限」はある。「外国人、外国の法人、および出資率が50%以上の法人は、賃借することのみが可能である」(農地取引法第3条)。だが、子会社を設立して農地を買うなど抜け道がある。

第二に、最近ロシア政府が、農地をアジア人にレンタルさせて農業振興をはかる方針を打ち出していることだ。

だが、外国人の農地レンタルは、一般のロシア人には評判が悪い。「どんな肥料や農薬を使っているのか分からないのが心配。土地をひどく酷使しているので、後で使い物にならなくなった例がある」といった批判が多い。

ラリオーノフ氏は「農地の価格は二束三文だし、ロシアの汚職のひどさを考えると、しばらくすると農地はすっかり買い占められてしまうだろう」と警鐘を鳴らす。