現代ロシア文学の旗手ビクトル・ペレービン 『恐怖の兜』

ビクトル・ペレービン 『恐怖の兜』

ビクトル・ペレービン 『恐怖の兜』

角川書店刊:2006年

 ソ連崩壊直前の1991年に、短編集『青い火影』10万部が数日で売り切れるという伝説的なデビューを飾ったビクトル・ペレービン(1962年生まれ)。素顔や所在が不明というこの謎めいた作家は、世界そのものであると信じてきた特急から下車する青年 を描いた中篇『黄色い矢』、主人公が革命期と現代との往還をくり返す長編『チャパーエフと空虚』ど、幻想と叙情と諧謔と風刺が渾然一体となった小説を、混乱と夢と野望で飽和した1990年代のロシア社会に向けて次々と送り出した。社会が比較的安定した今も、ミノタウロス伝説を縦糸にした、言説と存在をめぐる哲学的チャット小説『恐怖の兜』などで健在を示している。現代ロシア文学を知るうえで必読の作家である。