モスクワのクレムリンの夜景 =GeoPhoto撮影
現在モスクワは、外国投資の約80%が投下され、資本のほとんどが集まっている。生活水準が他の都市とは段違いになり、「モスクワっ子」は「貴族」に近い響きをもち、全ロシア人の嫉妬と羨望の的
ところが、実際には今や人も物も集まりすぎて破裂寸前、ほとんどの専門家が、首都拡大または一部移転の問題は待ったなしだとみている。すでに前世紀の20年代、60年代、80年代にも似たような拡大計画があった。
モスクワ市の面積は、現在1070平方キロメートルだが、2510平方キロメートルになる見通しで、神奈川県の面積を上回る。20年間かけて6000万平方
メートルの住宅地域および4500万平方メートルのオフィス地域が開発され、国際金融センターやイノベーション・センター、それに市中心部から移転する省
庁のビルが建設される。
こうして首都は過剰な居住密度から解放され、不動産市場の過熱は適当に冷めるだろうし、市の放射状・環状の構造も変わるので、車の流れも変わり渋滞は緩和、町の歴史的景観を守ることもできようというわけである。
モスクワの外に首都機能を移した例は、歴史上二つしかない。16世紀のイワン4世(雷帝)と18世紀のピョートル1世(大帝)のみだ。しかし、今回の計画
の進み方の速さは、決定プロセスの不透明さと相まって、市民の間に不安を呼び起こしている。ルシコフ前市長の時代に、モスクワ市とモスクワ州は何年にもわ
たり境を接する数百ヘクタールの土地をめぐって空しく争っていたが、今回はわずか数週間で1440平方キロメートルの土地をモスクワ市へ移譲するという
「互恵的決定」で合意に達しているのだ。
こんな猛スピードでは、どんな議論を始める暇もなかっただろうから、社会が懸念を抱くのも驚くに当たらない。市中心部から環状道路の外側へ強制移転させられたり、職場が勝手に移されたり、新たな大渋滞が待ち受けていたりするのではないか?
都市工学が専門のビャチェスラフ・グラズィチェフ・モスクワ建築大学教授は「モスクワの拡張は、この15年間の無秩序に歯止めをかける手段です。現在60%を占める森林地帯・別荘地区・酪農施設にもおそらく手はつけません。省庁に関して言えば、たぶんコンパクトな中心区域が設けられて、移転するのは三つか四 つの役所で、人数にしてせいぜい1万人程度でしょうね」。
けれども、このバラ色の未来を実現するには、世界の経験と人材の誘致が肝要だ。
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