未体験のロシア

2016年5月8日 マリナ・ミロノワ
 観光客向けの「キャビアとウォッカ」のロシアから外へ出るには、モスクワ、サンクトペテルブルグの両首都を離れて、世界にまだ知られていない最良食品リストを求めて、ロシアの奥深くに出かけねばならない。
Untasted Russia top
 Lori/Legion-Media撮影

1.ウラジーミル・サクランボ

 800年にのぼるウラジーミルのサクランボ園の歴史は、ビザンチン、モンゴル帝国、そして中世キエフ・ルーシからロシア国家への変転を一つに結び合わせた。甘いビザンチンのサクランボは中世のキエフ・ルーシの人々の心をとらえた。キエフ・ルーシがモンゴル軍に解体されたのち、ロシア人の好んだサクランボはウラジーミルに移り、ウラジーミルが古代ロシアの政治と宗教の中心になった。

 手のかかる南方のサクランボの木はウラジーミルで、この土地の寒さに強いステップ地方のサクランボと交配され、甘酸っぱいエレガントな味の独自の品種になった。

 19世紀までに「ウラジーミル・サクランボ」はすでに最優良品種の高価な全ロシアブランドになり、業者が他の地方の普通のサクランボを「ウラジーミル・サクランボ」と言って売るほどだった。

 ウラジーミル・サクランボの味覚を試すには、「サクランボの祭日」に行ってみるのが一番だ。サクランボやジャムを食べる儀式から、サクランボの種吹き競技やピロシキ投げ競技にいたるまで、色とりどりの趣向を楽しむことができる。

 

地域:ウラジーミル市とその周辺

シーズン:7月中旬~8月初め

サクランボの祭日:7月10日

 

2.アストラハンのスイカ

Shutterstock/Legion-Media撮影Shutterstock/Legion-Media撮影

 砂漠と塩湖と気温35℃の夏。アフリカ原産のスイカが第2の故郷としてアストラハンの地を選んだのは驚くには当たらない。アストラハンの人々は18世紀からスイカを栽培しており、一度ここのスイカを食べたら、その後は、どこのスイカを食べても酸っぱく水っぽいと思われるほど、みごとなスイカを作り上げた。

 アストラハンのスイカ栽培では、現代のワイナリーがやっているように、スイカの蔓を熱と渇きに曝し、その結果、きわめて甘くみずみずしい、糖度の高いスイカを作り出している。

 収穫期は暑い季節の8月。理想的なスイカを手に入れるため、蔓からスイカを切り取るのは完熟の瞬間であり、それより1日早くても1日遅くてもいけない。収穫シーズンにアストラハンの市場に出るスイカの価格は、1キロわずか6ルーブル(4月24日現在、1ルーブルは約1.68円)だ。

 収穫の終わりには伝統的なお祭り行事がある。この日は、古典的なスイカだけでなく、ありとあらゆる形態と色の、実験的な品種の味覚を試すことができる。

 

地域:アストラハン市、アストラハン州

シーズン:7月末~9月初め

祭日:「スイカの日」は8月26日

 

3.オネガ湖のリャープシカ(ウスリーシロザケの仲間の淡水魚)

パーヴェル・シュトキン撮影パーヴェル・シュトキン撮影

 カレリアの人々は数世代にわたって、お隣りのペテルブルグのキュウリ魚よりも、オネガ湖の白身魚リャープシカの優しい味を好む。リャープシカ独特の繊細な味は、オネガ湖のエコシステムのせいだ。オネガ湖では冷水が古代の地層であるシュンガイト地層という自然のフィルターを通過する。これは効果的な天然吸着剤だ。

 カレリアの新鮮なリャープシカを葱のころもで包み、香辛料は入れず、少量の水に少しの塩を振るだけで蒸し煮する。この伝統的なカレリア料理は純粋なグルメ食で、どの質の高さと純粋な味は天下一品だ。

 ロシア帝国では、珍味のリャープシカはペテルブルグの美食家の間でよく知られており、高級レストランで料理が提供された。現在、このカレリア料理を熟知し、高く評価するのは、カレリアの住民とペトロザヴォツクのレストラン、それに釣りが大好きな大公望たちくらいだ。

 

シーズン:10月~11月

地域:ペトロザヴォツク、オネガ湖

 

4.ロマノフ玉葱

パーヴェル・シュトキン撮影パーヴェル・シュトキン撮影

 ソ連時代に忘れられていた小さな地方都市トゥタエフは、帝政ロシアではすでに17世紀からグルメ志向の町として知られ、ここではロマノフ玉葱という特別な品種の玉葱が栽培されていた。

 つよい刺激臭と辛味のある普通の玉葱とちがい、ロマノフ玉ねぎは、甘くてみずみずしく、苦味が全くない。土地の人たちはこれを、熱処理することなく生のまま使うのを好む。

 

シーズン:7月末~8月

地域:トゥガエフ、ヤロスラヴリ州

 

5.ヤクートの子馬肉

写真提供:ysia.ru写真提供:ysia.ru

 肩幅が広くずんぐりした体躯のヤクート馬(スィルグィ)は、土の下から草を掘り出す能力を持ち、冬の-70℃から夏の+40℃という極端な温度差の中を生き抜くことができる。厳しい自然淘汰と、飼養・飼育の伝統により、世界最古の品種の一つであるヤクート馬が、昔と変わらぬ姿で保存されてきた。

 ヤクート馬肉の味は、荒々しいと言ってよいほどの濃い味だ。数世紀にわたる品種改良、すぐれた血統、自由放牧、適度な屠殺、――それら全てがヤクート馬肉を土地に根差した食品にしている。

 特に珍重されているのが「オイゴス」と呼ばれる子馬の胸肉だ。この肉を数切れに切り、熱湯を注ぎ、ネギとトウガラシと月桂樹の葉を加える。さっと煮立てて薄く切り分け、大皿に盛る。

 ヤクートの珍味は、もし凍寒を怖れないなら、一年中いつでも食べられるが、国民の祭日である「夏の祭日(ウィスィアク)」に行くのが良いだろう。

 

シーズン:通年

地域:サハ共和国(ヤクーチヤ)

祭日:夏の祭日は6月24~26日。祭日行事の場所はヤクーツク、ウスハティン

 

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