ロシアの障害者たちは今

 ロシアでは、現在、障害者がほぼ1300万人を数え、そのうち、障害児は60万4千人を超える。国民の約7割は、国内では今のところ障害者のための均等な機会や条件が創り出されていない、と考えている。
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ロシア出身のスーパーモデル、ナタリヤ・ヴォジャノワ(左側)と妹のオクサーナ=写真提供:ナタリヤ・ヴォジャノワのFacebook

 ロシアでは、あまり障害者について語られることがなく、国民は、メディアやインターネットから主な情報を入手している。2015年夏、世界的に有名なスーパーモデル、ナタリア・ヴォジャノワさんは、自閉症と脳性麻痺を患う自分の妹がカファから追い出されたことを自身のホームページで明らかにした。すると、取調委員会は、障害者の人権侵害にあたるとして刑事告発し、カフェの所有者らは、300万ルーブルの罰金を課せられ、その一月後、裁判で和解が成立した。ヴォジャノワさんは、インタビューで、「大部分の人が、そのようにしますが、それは、悪意からではなく情報がないためであり、啓蒙が必要なのです」と語った。

 

アンフォトジェニック・シンドローム

 10月末、ダウン症の7歳の女の子、マーシャちゃんの一件が、ロシアのフェイスブックさらにはメディアで紹介された。母親は、学校の教師をしており、勤務中はマーシャちゃんが家に一人きりとなってしまうため、わが娘を学校へ連れて行った。マーシャちゃんは、一番後ろの席で静かに絵を描いており、クラスでアルバムを作ることになるまでは、何事もなかったが、7歳のマーシャちゃんの写真がアルバムのページに載ると、スキャンダルが持ち上がった。父兄らが、ダウン症の女の子の写真を外すよう求めて、アルバムを返して寄こしたのだった。

 ある生徒の母親、オリガ・シニャエワさんは、「マーシャは、このクラスに溶け込んで、みんなとおしゃべりしたり、ハグしたりしようとするのですが、みんな、あの子を避けるのです」と記している。

 五人の生徒は、すでにほかのクラスへ移った。

 全ロシア世論調査センターの調査によれば、未成年の子や孫をもつロシア国民の17%は、自分の子や孫のクラスに障害児がいることに賛成ではない。

 慈善基金「ダウンサイド・アップ」の広報担当者ユリヤ・コレスニチェンコさんは、こう語る。「社会には、今もって“普通でない”人たちと触れ合う経験がないのです。みんなが遊び場や劇場や教室で障害児らと一緒に過ごすようにならないと、そうした経験は生まれません。経験がないため、今なお、ダウン症の子は危険で教育できないとか、彼らは親の非社会的な行いの結果であるとか、そんな空説や偏見がはびこっています」

 

国家の施策

 ジャーナリストのエカテリーナ・メーニさんの人生は、2歳の息子が自閉症と診断された9年前に一変した。

 現在、自閉症問題センターを主宰するメーニさんは、こう語る。「うちの子は、システムから見るとごみ屑かもしれませんが、私にとっては大きな宝物です。私は、まさにこうした矛盾を感じて、立ち上がったのです。子どもに何の支援も施されない状況のなかで、私は、国外へ移り住んで然るべき支援を受けられる国へ息子を連れて行くべきだったかもしれませんし、この国で彼のために何かをすべきだったかもしれませんが、実際に行動してみると、一人の子どものために何かをするのではなく構造そのものを変えなくてはならないことが分かりました」

 メーニさんは、まず、自分の子が普通教育学校に通う権利を得ようとし、4年前、彼女の協会は、自閉症児を普通教育環境へ組み込むインクルージョン・モデルを開発した。

 メーニさんは、こう語る。「願いが叶えられたのは、慈善基金『ガルチョーノク(コクマルガラスの子)』のおかげです。国家の資金だけでは、とても足りませんから。登録されている障害者へ支給される今年の年金の額は、平均1万1千ルーブル弱ですから、家族は、所持金や寄付金に頼らなくてはなりません」

 2015年4月、子どもの権利の全権代表パーヴェル・アスタホフ氏の公報係が発表したところでは、ロシアでは障害児の数がここ5年間でほぼ10%増えた。しかし、未だにそうした児童の単一の連邦台帳はない。児童オンブズマンの考えでは、現在、障害児を支援する社会団体は数多く存在するが、システマティックな活動は見られない。

 

 

*以下の記事、資料を参照。

世論調査基金

全ロシア世論調査センター
インターファクス通信
ロシア連邦統計局

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