大学間交流は関係発展のエンジン

第6回日露学長フォーラム=

第6回日露学長フォーラム=

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 第6回日露学長フォーラムが今週モスクワで開かれた。2009年以来大学間の経験交換の場として機能してきたこのフォーラムが今、二国間関係発展の強力なエンジンとなりつつある。

 ロモノーソフ記念モスクワ国立大学キャンパスで開かれたフォーラムにはロシアと日本の大学から前例のない多数の学長たちが集まった。その数、80人あまり。参加者たちの昂揚した気分は会場に満ち、ほとんどそれは身体的な感覚として感じられた。

 登壇した学長たちは口々に、現在は国の最高レベルで二国間関係が上昇の気運にあり、関係発展には絶好のタイミングである、と述べた。

 フォーラムの議長を務めたモスクワ国立大のヴィクトル・サドーヴニチイ学長は次のように述べた。「露日の学長フォーラムは創設以来の数年で露日関係発展のための場となり、またその著しい原動力となった」

 フォーラムの共同議長を務めた東北大学の里見進総長は、ロシアの学長たちとの交流は同種の国際交流の中で一番頻繁に行われている、と強調した。「おそらくその理由は、ロシアも日本も両国間の高等教育・学術研究部門での結びつきに多大な意義を置いているという点に求められる」と里見総長。

 

政府レベルでの支援

 2013年10月の安倍・プーチン会談で安倍首相は、2020年にかけて学生交流を5倍に増やす(双方とも、年間400人から2000人へ)という提案を行った。このイニシアチブを発展させるべく文部科学省は2014年より5つの大学(北海道、東北、筑波、東京、新潟)に対し、ロシアとの協力推進への支援を行っている。

 文部科学省高等教育企画課・国際企画室の岩渕秀樹室長は次のように現状と展望を語り、あわせてロシア側に呼びかけを行った。

 「2013年から大学間交流が大きく進展を見せている。しかし安倍首相はこれを不十分と考え、今年、これを倍増させる考えを示し、先の日露首脳会談でもその方針で合意が得られた。この合意を実現するための予算を財務省に求めているところだ。安倍首相自らのイニシアチブであるため、予算が得られる可能性は大きい。予算が得られれば、新たに6件の日露大学間交流が可能になる。それを見越して、文部科学省は、全国800の大学全てに対し、これについて説明しているところだ。また、一部の大学は既に新たな交流を模索し、ロシアの大学にアプローチをかけている。ロシアもそうしたアプローチを真剣に検討してほしい。新たな予算で政府の支援を得、新たに6つの大学で交流ができれば、日露大学間交流は確実に活性化する」

 

大学のドアは開かれている

 ロシアと日本合わせて20校あまりの代表者がこの機会を利用して自分の大学について華やかなプレゼンテーションを行い、二者間協力が現在どのようなレベルに達しているかをアピールし、関係深化の道を提示して見せた。日本側からは名古屋、早稲田、北海道、筑波、新潟、金沢、山口、上智、創価、神戸学院、東北、広島、長崎、神戸、東海の各校の学長や教員が登壇した。

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 日本の大学の多くは90年代、ソ連崩壊後に協力プログラムを開始したのだが、創価、上智、東海など一部の大学は50年代・60年代からロシアとの緊密な関係を持っている。

 創価大学には今年6月、「ルースキイ・ミール」基金の支援のもと、「ロシアセンター」が開設された。「センターはすでに積極的な活動を行っており、複数のイベントを開催している。これが日露両国民の友好促進において重要な役割を果たすことを確信している」そう語る創価大学の馬場善久学長は誇らしげだった。

 モスクワ国立大学や極東連邦大学のようなロシアの名門校は日本の多くの大学と様々な分野で多年にわたる交流の経験を有している。

 極東連邦大学のニキータ・アニシモフ学長は語る。「アカデミックな交流プログラムにより日本の18の主要大学と作業を行っている。助成金や奨学金に関しては日本政府や日本の大企業と合意を結んでいる。我々は日本に分校をもつロシア唯一の大学だ。分校は函館にある」

 

学術協力

 露日の大学間学術協力は医学、環境から、物理、ITまで、実に多分野にわたっている。若干の例を挙げてみよう。

 長崎大学はチェルノブイリ原発事故以後、ロシアの学者たちと医療分野での協力を活発に推進している。同大は放射線病の治療および放射線の健康への影響の研究について大きな蓄積を有していた。「福島第一原発事故後、この方面の医療における協力は新たな次元に進んだ。今後も協力を継続かつ深化していきたい」と松島大輔教授。

 物理学における成功に満ちた共同研究について語ったのはモスクワ物理工科大学のニコライ・クドリャフツェフ学長だ。同大の全論文の4%が日本の学者たちとの協力に基づくものであるという。また同大の学者らは日本の研究プログラムBelle II(ベル・ツー)に参加している。

 自然利用やエコロジーの分野では太平洋国立大学(ハバロフスク)と武蔵野大学で集中的な協力が行われている。前者のセルゲイ・イワンチェンコ学長は語る。「我々は既に25年の間、ハバロフスク地方の森林を再生し、日本の専門家たちの協力を得て、しかるべき研究を行っている」

 北極調査における協力について幅広い可能性を提示してみせたのは北海道大学の望月恒子教授だ。望月氏は北海道大学で行われる次回2018年のフォーラムへの参加を一同に呼び掛けた。

 

連合の形成

 フォーラムでは膨大な数の提案やイニシアチブが発せられた。中でも最重要なのが、モスクワ国立大学長が語った、ロシアと日本の間で大学連合を創設するという構想だ。

 「それはとても自然で、裏付けのあることだと考えている。我々の協力は成功裏に、多年にわたり発展してきており、多くの共同事業を行っている。連合の創設により協力はより組織的な性格および地位を与えられる。そうすれば、さらに多様な共同プロジェクトを実現できるようになる」とモスクワ国立大学長。

 露日の学長らの採択した総括コミュニケには露日大学連合の創設に関する今後の作業という一章が設けられた。

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