米国のジョン・ケリー国務長官とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相=
ロイター通信10月3日(月)、アメリカ国務省は、停戦合意に基づく自国の義務を履行していないとしてロシアを非難し、シリアをめぐるロシアとの2国間対話を打ち切ると声明した。ロシアも、黙ってはおらず、ロシア外務省は、シリアの政権交代のみを目指してイスラム過激派という「悪魔と取引する」用意があるとして米国を非難した。
本紙は、シリアをめぐる米露対話の停止を受けて事態がどう推移するかを分析した。
しかし、シリアにおける露米の軍事対立のシナリオは、それでもやはり、想定しがたい。ロシア科学アカデミー・東洋学研究所のウラジーミル・ソトニコフ氏は、米国が、シリアに関するロシアとの協力を断ちつつも、両国の軍用機間の衝突を回避すべく軍事的な連絡手段を維持した、という点を、本紙へのインタヴューで強調した。このようにして、米国は、両国の軍人間の何らかの衝突を防ごうとしている。
米国のジョン・ケリー国務長官は、先に、行き詰まった和平プロセスに取って代わるものとしての謂わば「プランB」に言及した。米国およびカナダの研究所に付属する中東紛争分析センターのアレクサンドル・シュミリン所長が本紙に語ったところでは、現在、「プランB」は、「反アサドおよび反イスラム国の反体制派の強化」を想定しており、アラブの君主国およびトルコが、米国の合意のもとでこれに従事している。同氏によれば、その際、それらの国は、国連や米国によってテロ組織とみなされている「アル=ヌスラ戦線」といった悪名高き組織にも、武器を供与する。言い換えれば、アサド大統領に反対するすべての勢力が、動員されることになり、これは、ロシアをはじめとするアサド政権を支持する同盟国には譲歩する意向がないだけに、戦闘の激化と益々多くの犠牲をもたらすに違いない。ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、すでに、ロシアは、米国の決定後もテロとの闘いおよびシリア当局への支援を放棄しない、と声明した。
このシナリオの枠内で、米国は、カダフィ大佐が権力と生命を奪われた2011年のリビアでの作戦と同様に空軍を出動させて武力でシリアの大統領の政権を交代させようとする可能性がある。しかし、その場合には、シリア軍の拠点を空から防禦しているロシア航空宇宙軍との直接の衝突が避けられない、という点を、モスクワ国立国際関係大学・軍事政治研究センターのミハイル・ウラジミロフ氏は、本紙へのインタビューで指摘している。核兵器を保有する両大国のそうした衝突が予断できない結果をもたらすことは明らかであり、米国がこうしたリスクを冒したくないことを考慮すれば、そうしたシナリオも想定しにくい。同氏によれば、反体制派は、すでに必要十分な兵器や資金の提供を受けているため、アサド政権に敵対する勢力にリソースを供給しても、意味はない。追加の支援も、ロシアの空軍が武装勢力を一掃しつつ空を制しているうちは、紛争における力の均衡を変えることはできない。
アサド大統領の軍隊が、米国の決定後に和平合意の枷を脱し、ロシアの支援のもと、米国とその同盟国の側からの支援を受けている敵をアレッポから追い出し、大きな成果を遂げる、という可能性もある。ウラジミロフ氏によると、シリア軍は、この極めて重要なシリアの都市を支配すれば、イドリブ県での攻撃を開始するが、そこでは、アサド氏の勝利は、スンニ派勢力の姿勢にかかってくる。少なくとも、それらの一部が、政府軍の成功を見てとって政権側と和平協定を締結する場合には、紛争は、ほどなく終熄し、そうでない場合には、シリアでは、「だらだらした戦争」が何十年も続くことになろう。
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