遠距離爆撃機Tu-22М3=
APロシアの空軍は、ロシアで禁止されている「イスラム国(IS)」の戦闘員らとのシリアにおける戦いでイランのハマダーン基地を使用することを停止している。これについては、8月22日、ロシア国防省の公式報道官であるイーゴリ・コナシェンコフ陸軍少将が、声明した。
同氏は、遠距離爆撃機Tu-22M3と戦闘爆撃機Su-34に課されたすべての任務は遂行され、ハマダーンから出撃していた飛行機はロシア領内へ帰還した、としたうえで、シリア国内の状況次第ではイランの空軍基地が再び使用されることもありうる点を指摘した。
イランのホセイン・デフガーン国防軍需相は、ハマダーン空軍基地からのTu-22M3の出撃開始に関するロシアの声明を受けて、AP通信へのインタビューで「ロシアは、シリアの政治的将来における自国のパイ(分け前)を確保すべく、自国が超大国であることを示したがっており、もちろん、これに関連して、自賛と非紳士的な振る舞いが見られた」と反応した。
CIS(独立国家共同体)諸国研究所の副所長で軍事アナリストのウラジーミル・エフセーエフ氏は、イランは、ロシアの政治指導者らの声明がイラン側との間で調整されていなかったことに強く反発した、とし、次のように指摘する。「イランは、非常に複雑なパートナーであり、メディアへの情報提供は、一緒に行う必要がある。イランのメフディ・サナイ駐露大使とロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相の声明を、双方が軍事基地の戦闘用の使用の開始に関する共同声明を行うような形で、組織する必要があった。ロシアは、軍部を通じて一方的に情報をメディアへ提供してしまった」
問題の重要な政治的側面も、存在する。ウラジーミル・エフセーエフ氏は、ロシアには、シリア危機の解決をめぐるサウジアラビアとの協議を行う必要があり、サウジアラビアにとって、地域における自国の主な敵[イラン]へのロシア軍の配備は、雄牛にとっての赤い布に等しい、とし、次のように指摘する。
「『ジュネーヴ-3』会議において、ロシアは、西側のパートナーおよびシリアの反体制派といったすべての紛争当事者と交渉を行うことになっており、すべての当事者にとって、ロシアの飛行機によるイランの空軍基地の使用は、交渉における一種の『刺激材料』となる」
ロシアは、すでに、シリアでの作戦開始を控えた2015年の秋に自国の部隊を輸送する際に、飛行機の補給場所としてハマダーンを使用している。
しかし、専門家らは、2016年8月の最初の2日間の出撃の後に一連の技術的な問題が生じた、という点を指摘している。空軍の十全な活動のためには、イラン国内に然るべき通信チャンネルを備えた管制ポイントを展開する必要があった。また、保守し警備する必要のあるTu-22M3用の弾薬(一機当たり、最大で20トンの弾薬を搭載できる)を保管するための格納庫を建造する必要もあった。
エフセーエフ氏は、こう述べる。「イランにおけるロシアの軍人の地位(ステータス)が、依然として大きな問題であり続けている。突発的な出来事が生じれば、深刻な事態となりかねない。彼らには、シリアに駐留するロシアの兵士にあるような治外法権がない」
専門家らは、空軍基地の賃借と使用のために、両国の国会議員は、イランにおけるロシアの軍人の駐留のすべての技術的および外交的な側面が明記された合意文書に調印すべきである、という点を指摘している。
アナリストらは、ロシア軍部隊の撤退を暫定的な措置とみなしている。
エフセーエフ氏は、「ロシアの空軍は、シリアにおけるイランの兵士にとってのほとんど唯一の掩護部隊である。最新のデータによれば、シリア領内における戦闘で400人以上のイランの兵士が死亡しているが、これは、非常に大きな損失である」と語った。専門家らによれば、現在、ロシア空軍によるハマダーンの使用の問題に関する入念な作業が、必要とされている。しかし、危機が深刻化すれば、飛行機は、猶予なく現地へ派遣される。
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