2月7日の北朝鮮による人工衛星用ロケットの打ち上げの数日前、ロシア外務省は、そうしたテストを実施する北朝鮮のプランに対する「懸念」を表明した。ロケットを撃ち落とすとした日本の声明や、国防相が打ち上げに「アクティブに」反応するよう軍に命じた韓国と比べると、ロシアの反応は、控えめに見えた。ロシア科学アカデミー・極東研究所・朝鮮研究センターのコンスタンチン・アスモロフ主任研究員は、「準備されている発射についての報道に対して露中サイドから厳しい反応がなかったことで、北朝鮮は、さらなる行動も罰せられることはないと判断した可能性がある」と述べている。
そうした予想は外れ、発射が行われるやいなや、ロシアは、その措置を厳しく非難し、国際社会に背を向ける政策が国益に適うものかどうかと北朝鮮に自省を促した。しかし、専門家らは、より深刻な結果はもたらされないと考えており、ロシア科学アカデミー・世界経済国際関係研究所付属・現代朝鮮研究センターのリサーチ・プログラム責任者のゲオルギー・トロラヤ氏は、「私は、今回の発射に関連した北朝鮮に対する制裁の強化や厳しい圧力や孤立化にロシアが同意するとは思わない」と語る。
ロシアNOWの取材に応じた朝鮮学者らは、キム・ジョンウン体制が自国のミサイル核計画を中止すべく北朝鮮に圧力を加えるための有効なツールをロシアは有していないと考えており、ソウルの国民大学校のアンドレイ・ラニコフ教授は、「これは、ロシアに限ったことではまったくない。ここ数十年の出来事は、北朝鮮に大きな影響を及ぼすことがほぼ不可能であることを示した。現在、おそらく中国にだけそうした可能性が理論的にはある」と述べている。
同氏は、他の国々は自国を満足させる北朝鮮の行動に対する褒賞としての経済的・政治的優遇という若干の「賞与」を提案しつつ北朝鮮と「取引する」ことしかできないが、北朝鮮がそうした「賞与」を受け入れる保証はない、と考えている。
ゲオルギー・トロラヤ氏は、北朝鮮指導部は、ロシアを自国の主なパートナーである中国に替わりうるものとみなしているとし、「キム・ジョンウン氏は、中国への依存を望んでおらず、そのためには、それに替わるものが必要であり、まさにそこで、ロシアのカードが切られている」と述べている。
現在、中国は、依然として、北朝鮮の枢要な貿易相手国(貿易高の3分の1程度を占める)であり、主な人道支援および投資の供給源となっている。しかし、東アジアのこの両国の関係には、改善の余地がある。
専門家らは、北朝鮮の攻撃的な声明や核実験は中国をも苛立たせているが、北朝鮮には自国の政策を放棄するつもりがない、と考えており、コンスタンチン・アスモロフ氏は、「(中国には―編集部)“手綱を締めて”北朝鮮をより従順にさせたい意向があり、多くの点でまさにそれゆえに、北朝鮮は、中国から完全に自立しようとし、ロシアとの関係を強めている」と述べている。
ロシアのプーチン大統領の初の訪朝(2000年)以来、両国の政治的交流は活発化し、協力に関するあれこれの協定が調印された。ロシアは、北朝鮮に対して定期的に人道支援を行っており、ミサイル核計画を非難しつつも国際的な制裁体制の強化には反対している。
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ゲオルギー・トロラヤ氏は、「北朝鮮は、中国よりもロシアを好ましく思っており、中国ほどロシアを怖れておらず、ロシアと関係を保とうとしている。この面で大きな役割を演じたのは、いずれにせよ徴収が不可能であろう債務の帳消し(2014年5月にロシアは北朝鮮に対し対外債務の90%を免除した―編集部)である」と述べている。
一方、両国関係には、経済的基盤がない。アンドレイ・ラニコフ氏は、「露朝間には、事実上、貿易や経済協力がない」とし、両国の経済体制をその理由に挙げ、「北朝鮮が世界市場に供給しているものは、単にロシアには必要ない(おそらく安い労働力を除いて)。北朝鮮は、たしかに、一部のロシアの商品を購入するにやぶさかではないものの、しかるべき代価を支払うお金がない」と述べている。
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