イギリスのフィリップ・ハモンド外相は1日、シリアで内戦を煽っているとして、ロシアを非難した。ロシアが空爆を開始してからというもの、シリアの政治危機を解決しようとしてきた欧米の努力すべてが台無しになっていると、「ロイター通信」に語った。「我々のやることすべてがロシア人によって台無しにされていることが、私の持続的な失望の源になっている。ロシア人は『それでは話し合いましょう』と言い、その後ずっと、話し、話し、話している」とハモンド外相。ロシア人が話をしている間にも、空爆を続け、アサド大統領を支援し続けていることが、問題なのだという。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相の反応ははっきりとしていた。「このような指摘には慣れた。どれも事実無根である」
ロシアが欧米にとっていかなる喉の奥の骨(邪魔者)であっても、シリア内戦の勢力バランスを変えることに大きく寄与したのはロシアの軍事作戦だと、専門家は認めている。シリア和平協議がようやく始まり、社会の空気も変わった。シリアの国境が変わるというシナリオは以前ほど起こりそうにない。
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アメリカ、トルコ、サウジアラビアなどが反対しているアサド政権は、確かに空からのロシアの支援によって、強固になった。ロシア航空宇宙軍がシリア入りするまでに、シリア政府軍は装甲車両の70%近くを失っていたし、4年の戦いで疲弊していた軍人の多くが退散していた。
このような変化は当初から明らかだった。シリア政府軍が強くなれば、アサド大統領の立場も強くなる。むしろ重要なのは、これが和平協議開始のための条件をつくったということだと、モスクワ・カーネギー・センターのアレクセイ・マラシェンコ科学評議会員はロシアNOWに話した。協議がどれほど続くのか、どのような結果になるのかは、大きな疑問だが。「愚かな挑発が一つでもあれば、すべては決裂する。そのような挑発をする用意のある者がいる」と、マラシェンコ科学評議会員。
また、今はシリアの分割を心配する必要もなくなっている。数ヶ月前にはこのようなシナリオになる可能性は非常に高かった。
シリア政府軍が攻勢に移行すると、アサド大統領に対する世論も変わった。大変な内戦が勃発して以降、シリア国民のほぼ半数(2000万人中1100万人)が居住地を変更し、地元から避難したと、ロシア科学アカデミー世界経済・国際関係研究所のヴィクトル・ナデインラエフスキー主任研究員は話す。今はシリア政府軍や補助志願部隊に、人々が戻っている。
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クルド勢も強くなった。特に、トルコがシリア領域でロシア軍機Su-24を撃墜し、ロシアが対抗措置としてシリアに地対空ミサイル・システム「S-400」を配備した後は。「『イスラム国(IS)』と戦っているクルド人の野営地を、トルコはもはや簡単には空爆できないだろう」と、ナデインラエフスキー主任研究員。テロリストとの戦いには、シリアの民主的反政府派の一部、特に自由シリア軍が加わった。
これらすべてがISへの打撃となった(ISは「フォーブス」誌によると、世界で最も資金力のあるテロ組織で、稼ぎは年間20億ドル≒2400億円)。第一に、IS内では戦闘員の脱走が急増した。第二に、ロシアはISのタンクローリー=資金源を少なくとも1200台破壊した。「我々の試算では9000~1万2000台だから、蓄えはまだあるが、すでに深刻な損害を被っている」と、ナデインラエフスキー主任研究員。
「ロシアが介入するようになってから、状況は変わった。シリアとトルコの国境にある8キロのテロリスト支援”穴”をふさげる可能性は十分ある」と、中東・中亜諸国研究所のセミョン・バグダサロフ所長も話す。シリアとトルコの国境に、ISが戦闘員と食料品の輸送用に使っている非管理領域があるということは、アメリカで言われていた。ロシアの外務省と国防省は、シリアの戦闘員補充に、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領自身が寄与している可能性まで憶測している。
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シリアでは政府側がラタキア県を奪還し、アレッポ県の一部およびダラア県の戦略的に重要な街ラビアも奪還したが、内戦終結について話すのは時期尚早である。政府側は現在、シリアの大部分をコントロールしている。それでも、どの予測をもとにしても、内戦は少なくともあと2年続くようだ。
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