日露2プラス2は中身よりステータス?

(左から右へ)ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相、セルゲイ・ラブロフ外相、岸田文雄外相、稲田朋美防衛相。日露外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)にて。東京、2017年3月20日。

(左から右へ)ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相、セルゲイ・ラブロフ外相、岸田文雄外相、稲田朋美防衛相。日露外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)にて。東京、2017年3月20日。

=ロイター通信
 日本とロシアのハイレベル協議では、新たな材料はあまり出てこなかったが、昨年勢いづいた両国の関係を維持していくことが確認され、示された。

 両国の新たな政府間協議が東京で行われた。18日、イーゴリ・モルグロフ外務次官と秋葉剛男外務審議官が、南クリル諸島(北方4島)の共同経済活動について話し合った。

 その2日後の20日には、外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)が再開し、セルゲイ・ラブロフ外相と岸田文雄外相、セルゲイ・ショイグ国防相と稲田朋美防衛相が会談した。どちらの協議でも新たな材料はあまり出てこなかったが、昨年勢いづいた両国の関係を維持していくことが確認され、示された。

 外相会談では、安倍晋三首相の次のロシア訪問が4月末になることが確認された。閣僚会議を、首脳会談の調整の段階と見なすことができる。

 どちらの協議も画期的なものとはならなかったが、両国関係の土壌の確認を効果的に続けることができた。ロシア政府にとっては、主要7ヶ国(G7)の一ヶ国との関係が改善していることを示す協議となった。G7の他の国とは、ウクライナ問題をめぐって緊張しているにもかかわらず。

 安倍首相は2016年に南部のソチを訪問した時と同様、今年もイタリアのシチリア島で5月に開催されるG7首脳会議の前にロシア訪問を設定している。G7サミットで、安倍首相は再びロシアとG7諸国の仲介役に選ばれるかもしれない。アメリカがドナルド・トランプ政権に替わったことで、日本は現時点で、ロシアよりもその恩恵を受けているように見えるため、なおさらである。

 

協議を行うことの意義

 どちらの協議にも個別の価値があった。18日の協議は、南クリル諸島での共同経済活動という特別かつ難しそうな提案を実際に検討する初めての会合となった。提案のデリケートさからして、これを実現する責任を負うのは両首脳になりそうだ。

 ウクライナ問題で3年ぶりの開催となった2プラス2では、日本もロシアも国際的なテロとの戦いといった世界共通の問題に重きを置き、島については互いの立場を改めて伝え合った。

 日本側は、南クリル諸島の一部を含むクリル諸島でロシア軍が展開されることに抗議。ロシア側は、アメリカによる北東アジアへのミサイル防衛システムの配備を批判した。

 日本が2プラス2の相手国としているは、一部の近いパートナー国のみである。具体的にはアメリカ(1960年~)、オーストラリア(2007年~)、インド(2010年~)、ロシア(2013年~)、フランス(2014年~)、そしてイギリス(2015年~)。相手国によって実施の状況は異なっている。アメリカおよびオーストラリアとの対話はかなり安定的に行われているが、ロシアを含む他の国との対話は「断続的」である。

 ロシアの現職の国防相が日本を訪れるということ自体、あまりあることではない。イーゴリ・セルゲエフ国防相が初めてで、1997年、次に2000年に訪問している。セルゲイ・イワノフ国防相は2003年に訪問した。ショイグ国防相は2プラス2が初めて開催された2013年、つまり10年後に訪問している。

 ロシアについては、2プラス2が日本にとって大きなメリットとなるかもしれない。両国の政府間で行われているというだけでなく、現代ロシアの政府において、ラブロフ氏とショイグ氏の閣僚在職期間が長いためだ。

 ラブロフ氏は2004年から外相を務めているし、ショイグ氏は非常事態相を18年務め、2012年に国防相になっている。また、ショイグ氏は内政の重鎮であり、ウラジーミル・プーチン大統領の側近である。国内外のメディアで、ショイグ氏はプーチン氏の潜在的な後継者の一人とも憶測されている。

 ショイグ氏には、日本と協力した経験もある。2011年に東日本大震災が発生した後、ショイグ氏率いる非常事態省が救助隊2隊、約160人を被災地に派遣している。

 

日露2プラス2と中国

 2013年と2017年の2プラス2の大きな違いとは、ロシアと中国の関係がここ2年でかなり近づいたことである。

 2013年の2プラス2は、日本とロシアの共通の懸念のように見えたできごとの数ヶ月後に開催された。具体的には、中国の習近平主席が、カザフスタンに入る新シルクロード経済圏とインドネシアに入る海上シルクロードの構想(一帯一路)を発表したできごとである。中国が中央アジアに入り込むことに対するロシアの懸念というより冷めた当初の反応が、日本の従来からの中国に対する懸念に加わった。

 だが2014年、中国とロシアは大規模なガス輸出入契約を結び、2015年半ばからはユーラシア経済連合(EEU)と一帯一路を結ぶというユーラシアの経済構想で近づいている。

 ロシアはアジア・インフラ投資銀行(AIIB)に参加したが、日本は参加していない。この点で、中国の台頭に対する警戒感がロシアで完全に解消されていなくとも、日本とロシアの2プラス2の議題は、朝鮮半島問題および今のロシアと中国の共通の懸念であるアジアにおけるアメリカの防衛政策に取って代わられる可能性がある。

 より広く見てみると、ロシアも日本も、米中競争の主な利害関係国となり続けるということである。日本とロシアはアメリカと中国へのそれぞれの近さを、日露関係で活用するのだろうか?来月の日露首脳会談で明らかになるだろう。

 *ニコライ・ムラシキン氏はイギリスのケンブリッジ大学聖キャサリン学院アジア中東研究学部の博士号取得候補者。日本、カザフスタン、ウズベキスタン、アゼルバイジャンの学者が参加するプロジェクトで活動中。本オピニオンは個人の見解である。

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