トランプ氏勝利で露経済どうなる

ロイター通信
 アメリカの大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利したことが伝わると、世界の株価指数は下落した。この時、ロシアでは企業の株価が上がるという逆の現象が起こっていた。専門家によると、トランプ次期大統領がロシアに対する経済制裁を解除し、両国の関係が正常化すると期待されたことの表れだという。

 9日序盤のモスクワ証券取引所では、主要指標の一つであるMICEX指数は1.44%安の1939.66、ドル建てRTS指数は1.5%安の958.33まで下落した。ロシアの証券会社「ブロケルクレジットセルヴィス」がロシアNOWにこれを伝えた。

 ところが、昼にかけて指標は回復し、その後1.5~1.7%高の2000まで上昇した。これはトランプ氏の勝利が伝わった後の世界の市場の反応とは逆である。専門家によれば、アメリカの外交政策が変わって不安定化するのではないかと世界の投資家が恐れたものの、ロシア的には制裁緩和の可能性を意味したのだという。

 

最初の反応

 ロシアの投資家の行動には時間差の影響があった。「ロシアの市場が始まったのは、原油、金、ドル、アメリカの株価指数先物の回復を背景に選挙結果が伝えられた後」と、ロシアのFX会社「テレトレード」の上級アナリスト、アレクサンドル・エゴロフ氏は説明する。そのために、ロシアの指標とルーブルの反応は大きくならなかった。

 国際的な投資家の最初の反応は、トランプ氏が選挙戦で示していた複数の公約から、多くの点でネガティブなものとなった。「トランプ氏がアメリカ大統領に選ばれたということは、金融市場の不確実性、それも長期的な不確実性の始まりを意味した」と、FX会社「eトロ」のパーヴェル・サラス・ロシア・CIS統括は話す。トランプ氏の行動は予測困難であることから、投資家はリスクの高い資産から「安全な避難所」へと移り、具体性を待っているという。

 トランプ氏の経済公約およびいくつかの発言では、中国との貿易を制限していくことが示されていると、ロシアの大手証券会社「フィナム」の金融アナリストであるティムール・ニグマトゥッリン氏は話す。これ以外にも、欧州連合(EU)との自由貿易圏の創設に関する協議が止まるリスクもあるという。このような取り組みは、短期的にも世界経済の冷え込みを招きかねない。

「世界経済はここ10年で貿易障壁を低め、競争を高めて成長してきたことを考えると、アメリカ政府のこのような取り組みは逆行になる」と、ロシアの証券会社「オトクルィチエ・ブロケル」市場分析部の専門家、ドミトリー・ダニリン氏は話す。

 

長期的な見通し

 中国、EUとは異なり、ロシアにとってトランプ氏の当選は、むしろプラスの変化を意味すると、専門家らは考える。ウクライナ情勢を受けて発動された経済制裁の緩和または解除は、ロシア経済に影響をおよぼす可能性があると、ロシアの投資会社「フリーダム・ファイナンス」取引部のイーゴリ・クリュシュネフ部長は考える。ロシアにより柔軟なトランプ氏は、経済制裁を延長しない可能性があり、早期解除に寄与する可能性もあるという。

 「経済制裁の解除、または部分的、段階的な解除は、今後の可能性の一つ。ただ、今のところ、このシナリオの実現について話すのは時期尚早。解除の条件は近い将来、実施されそうにない」と、エゴロフ氏は慎重な見方をする。ニグマトゥッリン氏によれば、トランプ氏は選挙戦で、ロシア政府との対話を確立する必要性について何度も話していたという。

 エゴロフ氏によると、いずれにしても、トランプ氏が候補者として発言した内容は、大統領としての具体的な動きとは異なるという。「一つ明らかなことがある。2017年は世界経済にとって変化の年になる。イギリスのEU離脱の問題があり、アメリカの政治の影響を受ける」とエゴロフ氏。

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