ウラジーミル・プーチン大統領=
アレクセイ・ニコリスキー撮影/ロシア通信国民の所得の伸びと急速な消費増加は、ロシア経済を困難な状況へと追い込むと、連邦経済発展省は考える。そのため、不況を打開することを目指して、所得を制限し、利益を企業の投資に向けることを提案している。
投資は、消費低迷の条件で、今後数年で7~8%拡大するという。すべての雇用主に給与制限を強制することはできないが、国家予算で成り立っている、国に依存した機構には、影響を与えることができる。
また、年金受給年齢を男女ともに63~65歳まで引き上げる案も経済発展省は提案している。現在は男性60歳、女性55歳である。労働市場のゲームのルールを簡単にするために、経済発展省は、経済的な理由による従業員の解雇の手順も簡素化する、すなわち労働法を変更することを提案している。このような前例は、20世紀前半にソ連であった。民間消費を犠牲にして、すべての資金が産業界の発展に向けられたのだ。ただ、このメカニズムは、資金が産業界内部へ配分されるよう指令のあった、計画経済の時代に用いられていたものである。現在、このような財源はロシア政府にはない。
別のプランを発表したのは、20世紀の初めのピョートル・ストルイピン大臣にちなんで名付けられている、いわゆるストルイピン・クラブ。このクラブは保守的な経済学者の集まりである。例えば、幹部会のメンバーには、プーチン大統領の顧問で、ウクライナ東部の独立に賛成している左派経済学者、セルゲイ・グラジエフ氏がいる。
ストルイピン・クラブのメンバーは、ロシアで「量的緩和」政策、例えば、1兆5000億ルーブル(約2兆5100億円)の特別な債券の印刷だ。これらがインフレに影響をおよぼさないように、2014年末に導入されたルーブルの変動制を止め、以前の為替バンド制に戻ることを提案している。
このようなプランは1980年代末の最大の危機の時にソ連で実施され、ソ連崩壊を含む結果をもたらした。この方法は、欧米では積極的に活用されている。「このような政策は現在、欧米で用いられているが、欧米の経済状況とロシアの経済状況は比較できない」と、ロシアの企業グループ「フィナム」のアナリスト、ボグダン・ズヴァリチ氏は話す。主な違いは、ロシアのインフレの高さである。これゆえに、このような債券が発行されたら、価格の急激な上昇を引き起こす。
経済成長は財産権の保証なしには不可能であるため、不況の打開に不可欠な条件は、法執行機関や司法制度の改革であると、プラン3の作者、アレクセイ・クドリン元財務相は考える。
2011年にクドリン氏は財務大臣を辞任し、現在は政府に対して野党的立場をとる市民団体「市民イニシアチブ委員会」の委員長を務めているが、ロシアで最も影響力のある金融専門家の一人になり続けている。クドリン氏によると、不況の打開のために、法執行機関と司法制度はより客観的になる必要があり、経済における政府のシェアを、中小企業のためにも、減らすべきだという。とはいえ、2019年までに経済成長率を最大4%にするには、経済に450万人と、40兆ルーブル(約66兆9000億円)の投資を固定資本に、追加的に呼び込まなくてはならない。このような政策は、東南アジア諸国で導入され、成功したと、「ロシア経済・国家行政アカデミー」経済研究所のエミリ・マルチロシャン准教授は話す。
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