「世界反ドーピング機関(WADA)」特別委員会のリチャード・マクラーレン委員長は、1000人強のロシアの選手がドーピング問題に関わっていたと発表した。=
ロイター通信「ロシアのドーピング隠ぺいは未曾有の規模」との大きな見出しのついた記事が、海外の新聞に掲載された。リオデジャネイロ夏季オリンピック・パラリンピックが終わり、沈静化したように思えたドーピング・スキャンダル。だがカナダ人弁護士マクラーレン氏が9日、WADA報告書の第二部を公表すると、スキャンダルは再び大きくなった。
マクラーレン氏が公表した数字は衝撃的だった。2012年から2014年までの間に、1000人強のロシアの選手が、ドーピングの陽性検体の隠ぺいに関与したというのである。マクラーレン氏によれば、これは個人で行われたものではなく、ロシアの役人や特殊機関の支えがあったという。検体すり替えは2012年ロンドン夏季オリンピック・パラリンピック以降、2013年世界陸上モスクワを含むすべての主要な大会で行われ、2014年ソチ冬季オリンピックではロシアの選手の検体の入った試験管96本が、ソチ冬季パラリンピックでは試験管21本が、損傷していたと、マクラーレン氏。
7月18日に公表されたWADA報告書の第一部の結果も、今回具体的に説明した。「ロシア連邦スポーツ省」がソチ冬季オリンピック・パラリンピックで特殊機関の支援を受けながら、体系的に陽性検体をすり替えていた、という話を初めて出したのが7月18日である。WADA特別委員会は、スイス・ローザンヌに保管されている11検体のデータにもとづき、このような結論を出した。すべての検体で、開けられた痕跡を見つけたという。
アメリカの「ニューヨーク・タイムズ」が5月に掲載した「モスクワ反ドーピング研究所(MAL)」のグリゴリー・ロトチェンコフ元所長のインタビューに、ロシアで国家的な陽性検体の隠ぺい体制があったと記されており、それを受けて、数日後にロシアのドーピング容疑を調査する委員会が設立され、マクラーレン氏は委員長になった。マクラーレン氏は第一部で、記事の内容に重きを置いていた。第一部の公表後、WADAはロシアをリオデジャネイロ夏季オリンピックから除外することを推奨していたが、「国際オリンピック委員会(IOC)」は極端な措置を取らないことを決めた。ロシアのパラリンピックの選手は、この推奨により、リオデジャネイロ夏季パラリンピックに出場できなかった。ロシアの役人は、WADA報告書で具体的な証拠が示されていないことを指摘した。
WADA報告書の第二部も、具体性に欠けている。ロシアの政治家やスポーツ関係者は、公表を受けて、「証拠がない」との指摘をしている。「マクラーレン氏は今回の声明で、ロシアのドーピングについて、何も新しいことを言っていなかった。ある『1000人の選手』、ある手紙、ある目撃者」と、ロシア下院(国家会議)体育・スポーツ委員会のミハイル・デクチャリョフ委員長は短文投稿サイト「ツイッター」に書いた。
今回はマクラーレン氏が態度を軟化させるのではないかとの期待がロシアにあったため、反応はわかりやすい。第一部が公表されてからの4ヶ月間、ロシアの選手の評判を守るため、多くのことがなされていた。
特別に創設された反ドーピング委員会には、国際オリンピック委員会(IOC)の名誉委員である81歳のヴィタリー・スミルノフ氏が招かれ、対策が行われた。ドーピング使用に対して刑事責任を導入すること、「ロシア反ドーピング機関(RUSADA)」の設立関係者からスポーツ省を外すことなどを推し進めた。第二部が公表される前、スミルノフ委員長はマクラーレン氏がロシアの関係者の作業に満足していることを明かしていた。「ロシアは今年、ドーピング対策の再構築を始めた。ロシアの活動を見て見ぬふりをするなんて」と、反ドーピング委員会のセルゲイ・クシチェンコ委員は話す。
マクラーレン氏は、記者団に対し、WADA報告書のすべての結論が口頭の証拠ではなく、物理的な証拠にもとづいていると強調した。だが、不正にかかわった人物の具体的な名前は公表せず、WADAと関係連盟にすべての情報を渡したと話した。WADAは、調査データを確認できるウェブサイトを立ち上げた。選手の名前はここでも公開されていない。デジタルコードに置き換えられている。
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