雪と酷寒の中のサッカー

FCアムカル・ペルミのゴールキーパーアレクサンドル・セリホフ、ロシアサッカー・プレミアリーグ2016-2017=

FCアムカル・ペルミのゴールキーパーアレクサンドル・セリホフ、ロシアサッカー・プレミアリーグ2016-2017=

ミハイル・ジャパリゼ/タス通信
 例年になく寒い天候となった11月、サッカー、プレミアリーグの試合は過激なスポーツと化した。

 寒い冬に驚くロシア人はいないが、夏のスポーツであるサッカーが冬のスポーツになれば、酷寒に慣れた人でさえ戸惑うことだろう。今年は11月初旬にロシアの大部分で吹雪が舞い、ロシアサッカーのプレミアリーグにおける最終月の試合はまさに生き残りをかけた戦いとなった。

 

カラーボールが足りない

 どのチームよりもラッキーだったのは、ロシアでもっとも人気のチーム「スパルタク・モスクワ」だろう。マイナス15度まで気温が下がったシベリア、トムスクでのアウェイの試合となった。古い陸上競技場には暖房もなく、氷ついた芝と嫌がらせのように襲いかかる雪に地元のスペシャリストも対応することができず、両チームは雪が積もり、ラインすらよく見えないピッチでプレーすることとなった。

 「スパルタク」、そして地元チーム「トム」の選手たちがなかなかのスピードを見せ、身体も暖まってきたころには、観客席に集まった数千人の勇敢なサポーターたちは自分たちで楽しまなければならなくなった。試合は白いボールでプレーが開始されたのだが、雪に覆われたスタジアム「トゥルード」ではボールの位置を判断するのが難しくなってきたからだ。通常こういうときに使われるカラーボール(通常オレンジ色か赤色)が見つかったのはそれから数分後のことだった。

 ロシアの有名なコメンテーターのワシリー・ウトキン氏は「トムスクの天候は厳しい。酷寒に対応できるボールが赤く熟すのは普通9月頃で、それも熟している期間はそう長くはないし、毎年というわけではないのでね」と皮肉たっぷりに苦笑した。

 

外国人選手は雪など怖くない

 しかし、シベリアの冬はその日も「スパルタク」の勝利を妨げることはできなかった。「スパルタク」のマッシモ・カレーラ監督は薄手のコートを羽織り、帽子もかぶらずにテクニカルエリア内を行ったり来たりし、酷寒には気づかなかったように見えた。そう、特別なことなんてなにもない。「スパルタク」の宿敵である「ツェスカ」がプレーするモスクワでも、サッカーはまさに同じ過酷な条件の下で行われていたからだ。

「ツェスカ」のアレクセイ・ベレズツキーと「アムカル・ペルミ」のダルコ・ボドゥル=ウラジーミル・フェドレンコ/ロシア通信「ツェスカ」のアレクセイ・ベレズツキーと「アムカル・ペルミ」のダルコ・ボドゥル=ウラジーミル・フェドレンコ/ロシア通信

 「スパルタク」の広報部は戦意高揚のため、「雪も怖くない!」というタイトルの動画をアップした。ちょうど、イタリア、ブラジル、カーボヴェルデといった国出身で、暖かい天候を好む選手たちを擁する同チームは12月初旬まで雪の中でプレーすることになっていた。

 

雪かき機の代わりにシャベルを手にするファン

 地元の「ルッチ・エネルギー」とクラスノダールの「クバン」との2部リーグ戦が行われた太平洋沿岸の港町ウラジオストクでも雪対策に追われた。夜中に降った雪がスタジアムに積もり、試合開始が数時間遅れることとなった。

 

 危機的状況に陥ったホームチーム「ルッチ・エネルギー」は機転を利かせ、試合ができるようスタジアムの準備を整えるための手助けをファンたちに求めた。「ルッチ・エネルギー」のオフィシャル・サイトでは「シャベルや箒がある人はそれを持ってきてください」と誠実なファンたちに呼びかけるメッセージが流れた。最終的には50人ほどのファンたち(中には試合のために7000キロを移動してきた「クバン」のファンもいた)の努力によってピッチは雪から解放された。

 

ファンは冷静

 一方、ロシアのファンたちは天気による状況を大げさには捉えない。スポーツサイトchampionat.comのユーザーgraf-olenevさんは「なぜみんな天候のせいにしたがるのか?僕はまだ小さいとき(1980年代始め)、週末になると父や父の友達とともにサッカースタジアムに行っていたよ、ものすごい雪が降るまで。酷寒割引なんてなかったね。それは素晴らしかったよ」と書き込んだ。

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