メッシ絶賛!女子サッカーの至宝

 ベッカムも羨むべきタトゥー、イブラヒモビッチ顔負けの弁舌。ロシアの女子サッカー選手、ナジェージダ・カルポワ(21)が、リオネル・メッシの選ぶ「若き才能ベスト10」中の紅一点となった。
Nadya Karpova
ナジェージダ・カルポワ=  グリゴリー・スィソエフ/ロシア通信

 サッカー、タトゥー、猫、そして愛犬(イタリアン・グレイハウンド)のルイ。それが彼女の人生のすべてだ。若干21歳にしてロシア選手権の得点王、女子代表チームのエースストライカーとなったナジェージダ・カルポワが、今月、リオネル・メッシ(アルゼンチン代表、バルセロナFW)版・10人の「世界で最も才能のある若い選手」に選ばれ、その名前入りスパイクを授与された。

 女性として唯一リストに入ったカルポワは今後、自身の人生とキャリアについて物語る一連の動画をYouTube上で公開する。胸のすくような話には事欠くまい。ロシアの女子サッカー界の現実は厳しい。そこで生き残れるのは絶対的な熱狂をもって自らの仕事に向かうもののみである。

 

「冷水シャワーも何のその」

 スポーツ専門の国際ポータルサイト「ユーロスポーツ」は彼女の言葉を次のように伝えている。

 「小さいころは女の子がサッカーするなんて考えたこともなかった。でもある晩、眠りにつくまえに、思いついてしまったの。女の子で、しかもサッカー選手、それってなんてカッコいいんだろうって。ママをつかまえて訊いたわ。サッカーってどこで出来るのって。でも、『そんな場所はありません』て言われてしまった」

 両親は娘の身をサッカーに委ねることなど考えてはいなかった。しかし彼女は、何もかも自分で決めてしまった。夢を追って15歳で親元を離れる。事の顛末はこうだ。ある大会で「男子に紛れてボールを追いかける女の子」がしかるべき人の目にとまり、五輪強化選手のスクールに招かれた。「すぐにママに言ったの。『私は行くわ』って。ママは『ダメよ、ちゃんと10年生と11年生をやって大学に行くのよ』なんて言う。でも私は聞かなかった。行かなきゃならないのよって」

 かくしてナジェージダは学校を退め、故里ヤロスラヴリ(モスクワ北東265㎞)からズヴェニーゴロド(モスクワ西郊65㎞)に転居した。

 夢の味はほろ苦かった。あてがわれた住居はプレハブ小屋。しかし彼女は意に介さなかった。「いっそ気持ちがよかった。他に何もすることがない、ただサッカーあるのみ。しかも、これでお金が稼げるかも知れないなんて言うんだもの。そりゃ続けるわよ。水で体を洗うくらい、なんてことないわ」

 

「パパが助けてくれなかったらお陀仏だった」

 プロへの道は険しかった。卒業時点ですでにロシアのジュニア代表選手だったナジェージダ・カルポワに、スクールのメインチームである「ロシヤンカ」が提示した俸給は、月額たったの9000ルーブル(1万5000円)。そこへ「ゾールキイ」という別のチームが3倍の俸給を提示して、辛くも極貧の運命は逃れたが、いずれにしろ雀の涙であった。「サッカーで稼ぐお金では何の贅沢もできません。買えるのは地下鉄の定期くらい。パパが助けてくれなきゃお陀仏だったわ」とは、2014年、彼女がユーロスポーツに寄せた証言である。

 それから2年で彼女は鮮烈な代表デビューを果たした。モスクワのクラブ「チェルタノヴォ」の一員として、2016年のロシア選手権では得点王にも輝いた。今や名実ともにロシア女子サッカー界のスターである。それでも依然として、生活は慎ましやかだ。ロシアの女子選手は誰でもそうだが、勝ち試合のボーナスは3000ルーブル(5000円)ぽっきりだし、遠征は列車移動、それもプラッツカルタ(3等寝台。個室なし、一車両ぶち抜き)だ。

 「男子が貰っているようなお金は雲の上の世界。もう数字を聞きたいとも思わない。5万ドル貰ったって、私にはどうしようもない。いいことなんて何もないわ。派手に騒いで、有頂天になって、それでお終いよ。大金をもった人はみんなそうなってしまうような気がする」とナジェージダ・カルポワ。

 

一張羅のユニフォーム

 意気阻喪するようなガラガラの客席、いつ建てられたとも知れないボロボロのスタジアム、そして貧窮。これがロシア女子サッカー選手権の厳しい現実だ。「やってるのはサッカーが好きで好きでたまらない物好きたちだけ。金のことなんか考える暇ないのよ。ないものはないんだもの。誰も女子サッカーなんかにお金は使わないわ」と悲観的なことを言うナジェージダ。「代表試合だっていつか誰かが着たユニフォームで出場してるのよ。サポーターからサイン入りのユニフォームを欲しがられても、恥ずかしいけど、ユニフォームは1シーズンにつき一着だから、あげられませんって言うしかないの」

 

タトゥーのテーマは神と猫

 ロシア代表の試合をご覧になる際ナジェージダ・カルポワを見分けるコツは、まずは得点後に見せる、マリオ・バロテッリばりのゴール・セレブレーション。

 それから、タトゥーだ。代表の6番の体にはおびただしいタトゥーが刻まれている。インスタグラムで誇らしげに紹介がなされているが、最初のタトゥーはロシア語による「神はすべてを見ている」との文字。最近入れたもののひとつは飼い猫にまつわるものだという。

 

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