ムトコ・スポーツ相に聞く

ロシアのヴィタリー・ムトコ・スポーツ相=

ロシアのヴィタリー・ムトコ・スポーツ相=

アントン・デニソフ撮影/ロシア通信
 ロシアのヴィタリー・ムトコ・スポーツ相は、ロシアNOWの独占インタビューに応じ、ドーピング騒動、ロシアの陸上競技の問題、次世代のアスリートについて語った。

-最近、ドーピング、サッカーのサポーター、その他のスキャンダルにより、海外でのロシアのスポーツのイメージは悪くなっています。名誉挽回に必要な資源とは何だと思いますか。

 主な資源とは選手であり、ロシアのスポーツのイメージをつくる存在です。世界中に知られている優れたチャンピオンがロシアには多く、非常に才能のある世代が育っています。多くの種目においてです。ロシアへの風当たりを強めているのは欧米のマスメディアです。誰もがマスメディアを鵜呑みにしているとは思っていません。

 

-これだけのドーピング騒動があっても、ロシア代表をリオデジャネイロ夏季五輪で応援する意味とはなんでしょうか。どう外国のファンに説明しますか。

 ロシアでこの分野に問題があることを我々は理解しており、可能なあらゆる手段で阻止しようと努めています。ウラジーミル・プーチン大統領が述べたように、善意ですべての人と協力する用意がこちらにはあります。我々はオープンです。スポーツとドーピングに国が介入していたという事実が一つでも証明されれば、私は大臣ではなくなります。

 2008年まで、ロシアからいかなる検体も持ち出すことができませんでした。国境で止められたのです。まともな研究所もありませんでした。そこで「モスクワ反ドーピング研究所(MAL)」に数十億ルーブル(数十億円)を投じました。また、世界最高と考えられていたノルウェーの研究所を基準に、「ロシア反ドーピング機関(RUSADA)」を創設しました。

ユリヤ・ステパノワ=AP通信ユリヤ・ステパノワ=AP通信

 その後、「ドイツ公共放送(ARD)」の番組が放送され、ドーピングに染まったステパノフ夫妻(妻のユリヤがドーピングを使用し、RUSADAの職員である夫のヴィタリーが隠ぺい)が登場し、我々の積み重ねてきたことの質が不十分だと発表されました。我々はこれを甘受し、今年1月には「世界反ドーピング機関(WADA)」とロードマップを締結しました。ロシアはイギリスのアンチ・ドーピング機関に年間3万2000ポンド(約430万円)支払っており、その検査官を支え、また仕事の無い状態にあるモスクワの研究所の職員50人も解雇していません。解雇したら、このような資格要件を満たす専門家を10年は探さなくてはいけなくなります。大丈夫だと我々は言われますが、それでは不十分です。ロシアの選手の不明瞭な除外は続いているわけですから...

 このような話をするのは、この大きなゲームにおいてロシアの選手には非がないからです。選手はただ五輪に出場し、良い結果を出したいだけで、2検体ではなく、20検体提出してもいいという構えです。自分の夢のために、あらゆることへの用意があります。そのため、応援を受けるに値するのです。

 

-「国際陸上競技連盟(IAAF)」は、ロシアの陸上選手全員(ドーピング疑惑がかけられたことのない選手も含め)を除外した理由を、このような状況を生み出すシステムの中にいるためだとしています。このようなシステムがつくられたとお考えですか。つくった責任者は誰ですか。悪い人は処罰を受けましたか。

 私は、ロシアの陸上に問題はないと言ったことはありません。ARDの最初の番組が放送されるかなり前に、この問題について、マスメディアにオープンに話していました。2014年にIAAFから文書を受け取りました。そこには、調査を行った結果、125人の選手が2009年から2011年の間に禁止薬物を体系的に摂取していたと書いてありました。125人の選手のうち、ロシア人は15人でした。速やかに対応し、陸連の幹部全員を解任し、15人の選手を排除しました。自国の選手を罰したのです。さて、残りの110人の選手の問題はどうなっているのでしょう。この問題を細かく観察していますが、それらの国の選手も陸連の幹部も、放置されています。なぜでしょうか。

 それ以前に、恐ろしいスキャンダルは、サイクリング(ランス・アームストロング)、クロスカントリー(2001年W杯のフィンランド代表)、重量挙げ(2008年北京五輪のブルガリア代表)、アメリカのトップ・アスリートにありました。なぜその時に委員会が設置されず、また、例えば、アメリカ自転車連盟を五輪から除外するよう要求がなされなかったのでしょうか。アメリカでは、NHLやNBAを含め、すべてがプロリーグで、WADAのアンチ・ドーピング規則の対象になっていません。なぜ誰も騒がないのでしょうか、なぜこの問題について皆が仲良く沈黙しているのでしょうか。すべてがとても偏った解釈になっています。

 

-専門家の間にはこんな意見があります。皆がドーピングを使用しているが、皆がつかまるわけではなく、ドーピングでつかまるかは、ドーピングとみなされることに決まっているかどうかの違いだと。これは本当ですか。ドーピングとみなされるべきか否かについての決定に、ロシアは影響を与えることはできますか。

 競走などサイクル性を持つ有酸素運動の種目の選手はそう考えています。これを主な言い訳の手段にして、選手が禁止薬物を摂取するのです。これはダメな考え方です。こういうメンタルとは闘う必要があります。選手やコーチがこのように考えていたら、何も良いことなどありません。

 スポーツ相に就任したばかりの時、2010年バンクーバー冬季五輪に行って、この問題にぶつかりました。ロシアの35~37歳の古参選手が、ドーピングなしで勝てるわけないと言ったのです。彼らに助言する私を馬鹿にしていました。この一件に私は大きな影響を受けました。

 そして、新世代の選手を育て続けていくという課題を、自分に課しました。ハイテクを用いた練習を重ね、対戦相手に勝てる選手を。ドーピングは厳禁です。最新式の施設の創設に数十億ルーブルを投じています。すぐにこれが実を結ぶだろうと信じています。

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