ウラルで闘う日本の舞姫

エカテリンブルク・オペラ・バレエ劇場に所属する日本のバレリーナ、朴慶順(パク・キョンスン)さん=

エカテリンブルク・オペラ・バレエ劇場に所属する日本のバレリーナ、朴慶順(パク・キョンスン)さん=

パーヴェル・レブルック撮影
 エカテリンブルク・オペラ・バレエ劇場に所属する日本のバレリーナ、朴慶順(パク・キョンスン)さん。ロシアNOWによるインタビューで、生活と芸術について語ってくれた。

 日本出身の朴さんはエカテリンブルグ在住・勤続はや4年。ワガノワ・バレエ・アカデミー卒業後に移住した。劇団には他に3人の日本人ダンサーがいる。先日は同劇団の初演となる「雪の女王」で主役のゲルダ役を務めた。そんな朴さんが、ウラル地方の主都エカテリンブルクの厳しい気候の中での生活や、劇団における自らの役割、ロシアのバレエの特性について、ロシアNOWに語ってくれた。

 

―バレエを始めたきっかけは?

 小さい頃からバレエに強く惹かれていて、「バレエをやりたい」と母に言っていました。ビデオでワガノワ・アカデミーで稽古している女の子たちを見て、自分もうまくなりたいと思い、ロシアで勉強することを思い立ちました。

 

―ロシアに暮らして何年になる?

 今年で8年になります。2009年に初めてロシアにやって来ました。17歳でした。サンクトペテルブルクのワガノワ・バレエ・アカデミーに入りました。

 卒業後はオデッサで半年働きましたが、ビザの問題で、滞留ができなくなってしまいました。そのときペテルブルクの恩師がヴャチェスラフ・サモドゥロフを紹介してくれました。現在私が働いているエカテリンブルク・オペラ・バレエ劇場の芸術監督です。審査の結果、採用していただきました。

パーヴェル・レブルック撮影パーヴェル・レブルック撮影

―ウラルの気候はどうですか?

 ここに来たのは4年前の2月です。最初はショックでした。雪の降ること、寒いこと、風の強いこと!そんな中を、ここの人たちは平気で歩いていきます。こんなところで生きていけるのか?と思いました。でも、次第に慣れてきて-20度でも今はそれほど寒く感じません。ロシアだと、たとえ表が寒波でも、部屋に入れば温水暖房が張り巡らされていて、すぐに温まれます。そして体感温度は日本とは少し違います。ここは乾燥した気候なので、-10度でも風がないと寒くありません。日本は湿潤なので、5度でも寒く、0度だとひどくこたえます。

 

―先日は初演の「雪の女王」で主役のゲルダを演じました。感想は?

 主役を頂いたのは今回初めてです。実はインタービュの前に自分がデビューした踊りをビデオでみてきました。やはり不十分な所が多く少し落ち込みましたが、ビデオで自分踊りを客観的に見るのはとても大切な事だし勉強になります。次に向けての課題も見つかります。

 

―日本のバレエとロシアのバレエの差異はどの点にあるでしょうか?

 ロシアはクラシックバレエの本場です。日本のバレエとは少し違います。日本にも高い技術をもったバレリーナはいますがやはり全てに違いがあります。現在日本ではバレエ人口が増え続けていますが、もし本格的にバレエを習いたいなら本場である海外で学ぶことをおすすめします。何故なら海外で学ぶ事とは自分の目で本物をみてバレエを習得するとゆうことに繋がります。自分の目で見て学ぶのはとても重要な事だと思います。当然日本で学ぶより厳しいしつらいです。ですが辛い事に耐え経験することにより自分自身の目標がきっと明確になるはずです。

 私自身もアカデミーに入った当初は辛かったです。アカデミーではロシア全土から選ばれた優秀な子達だけが幼い頃から厳しいレッスンをこなしてきているのですから。そんな中でのレッスンは初めの頃、私は何をやってもうまくいきませんでしたし、周りと自分のレベルがあまりにも違い何度も落ち込み泣きましたよ(笑)。

パーヴェル・レブルック撮影パーヴェル・レブルック撮影

 

―劇団にはもう3人日本人がいるそうですが、交流は?

 あります。一人がやはり奈良の女の子で、それから大阪の男の子。もう一人新しい女の子が東京から来ています。

 

―日本が恋しいですか?

 つらいときや落ち込んだ時恋しくなります。後はお正月です。友達のSNS を見て羨ましくなり帰りたくなります笑。日本は自分の生まれ育った場所であり家族や友達,私を応援してくれてる大切な人が沢山いますから。

 

―生まれは日本なんですよね?

 はい。私の祖父母は第二次世界大戦中に朝鮮半島から日本に渡り、日本に留まったんです。ですから私も韓国語ができます。滅多に使うことはありませんが。普段の日常会話は日本語です。

 

―余暇には何を?

 基本は仕事が忙しくなると家の用事が追いつかなくなるので時間ができたら料理や掃除、洗濯をします。後寝るのが好きです(笑)。勿論映画をみたり友達と会ったりもします。フィットネスやピラティスをしてバレエじゃない違う動きで体を動かしたり鍛えたりするのも大好きです。カフェで一人で読書するのも好きです。

パーヴェル・レブルック撮影パーヴェル・レブルック撮影

 

―バレエ以外に、ロシアの好きな点は?

 ロシア人はオープンで、困った時はいつも助けてくれます。電車やバスでお年寄りに席を譲る習慣もいいですね。私自身も席を必ず譲る癖がつきました。最近日本ではそういう風景を目にする機会が少なくなりました。日本に帰ってくる度それを見て少し悲しく思います。ロシアの好きな所で他には冬の美しさ。氷点下で外を歩いていると樹氷をよく目にします。樹氷は本当に美しく絵本の世界に引き込まれてしまったような気分になります。

 

―将来の計画は?エカテリンブルグでの生活を続けたいですか?

 今はまだ自分が将来どうするか明確には考えていません。今の劇場でもっと学んで成長したいと思っているからです。もしかしたら将来ここを離れる時が来るかもしれませんが 、今は予測できないです(笑)。

 

―バレリーナの卵に何かアドバイスするとしたら。

 バレリーナはとても大変な職業です。誰もが簡単になれる職業ではありません。私自身何もかも投げ捨ててしまいたい!と思うことは何度もありました。でも   そうゆう時こそ諦めずぐっと歯を食いしばって耐えください。そして自分自身にこう言い聞かせてください《すべてはここから始まる。自分を信じて前に進め》と。そしたら結果はどうであれ、大きな成果を得ることができると思います。大切なのは諦めない強い心です。

 そしてあと一つ。バレエは美しい芸術であり夢を与える仕事です。だから常に希望をもって自分の夢に向かって歩んで欲しいです。

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