ジェニファー・エレメーワ撮影
それにしても、どうして自分はこんな挑戦を引き受けてしまったのか。何のことかというと、それは、私に言わせれば、ロシア料理の底辺ともいうべき2品目のことである。つまり、「サラート・オリヴィエ」と「毛皮を着たニシン」だ。これらの品を自分が作ることはいうまでもないが、まさかそれを作ることを他人に勧めることになろうとは夢にも思わなかった。
定番だが難点も
ソビエト時代に愛された古典的な2つの料理にケチをつけることが危険なのは十分に心得ているが、それでもあえて言ってしまおう。どちらの料理も、いくらか手を加える必要がある。どちらとも、興味をそそることがない食材の面倒な下ごしらえを要する。その主たるものは、茹でた根菜あるいはその缶詰だ。どちらとも、見栄えが良いことがまずない。なんと言っても、これは合成マヨネーズをたっぷりと使ってモルタルのように結合された代物である。通称「毛皮を着たニシン」には、食欲も失せるピンク色か黄色がかかったものだが、その色合いはシェフがどのように層を構成するかによって決まる。サラート・オリヴィエは単調なベージュ色で、舌触りが悪い。
しかし、両方ともロシアの新年を飾る中心的な料理である。ロシア人にとって、これらのないお正月休みなど想像さえできない。これらは、イギリス人にとってのクリスマス・プディングと同様にロシア人にとって大事なものなのだ。そこで、今年最後となるこのコラムで、私は料理の究極のチャレンジに挑むことにした。両方とも、食欲をそそるような見栄えのいい料理を作ってみせるぞ!
革命前の料理本がヒントに
サラート・オリヴィエを救う手はないかと、私は歴史書をむさぼり読んだ。オリヴィエは、モスクワの高級レストランで働いていたベルギー人シェフだ。彼の有名なサラダのドレッシングは企業秘密だが、最近の報告によればスパイシーでぴりぴり感があり、どうもケイパーやパセリが使われているらしい。1909年に出版されたP.P.アレクサンドロワ=イグナチエワ著の料理本『料理の実用的基本』は、ライチョウとザリガニのほか、さいの目状にされたアスピック(煮こごり)を材料にあげており、これが私にとってヒントになった。私は退屈なチキンのかわりにカモとベーコンを、そしてどろどろに煮つぶしたエンドウ豆の缶詰のかわりに冷凍のエンドウ豆を使用し、外見を魅力的にするために、これらの材料を層状にアレンジし、味付けしたアスピックで固めてみた。
「毛皮を着たニシン」とは簡単なビートサラダがソビエト風にアレンジされたもので、ニシンの塩漬け、すりおろしチーズ、ゆで卵の角切りとジャガイモも組み合わせ、マヨネーズで層状にする。私はこれらの材料を使いつつも、単に異なる方法でアレンジした。辛く味付けした卵の前菜、ニシン/ビート/卵黄のミックスにワサビを加えて辛みをきかせ、ビートの汁にゆで卵を漬け、卵に紫色の色彩を施すのだ。
タンジェリンとシャンパンも加えれば、さあおいしいお正月の始まりだ!
「毛皮を着たニシン」:卵の詰めもの
調理法:
アスピックで固めたサラート・オリヴィエ
材料:
①サラダ:
②アスピック:
③ソース:
付け合わせ:
ネギとディル、きざんだばかりのもの
調理法
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