ロシアのユネスコ世界遺産、全33件

観光・自然
アレクサンドラ・グーゼワ
ユネスコが、まだ当時ソ連だったロシアにやってきたのは1990年のこと。最初に世界遺産に登録されたのは3件、モスクワのクレムリンと赤の広場、サンクトペテルブルク歴史地区、そしてカレリアのキジー島木造教会群である。

 世界遺産には毎年新たにロシアの名所が追加され、2023年にはカザンから2つの天文台、2024年にはロシア北部の「ケノゼルスキー国立公園」の文化的景観が登録された。

 現在、ロシアの33件の文化遺産と自然遺産がユネスコ世界遺産に登録されている。

1. サンクトペテルブルク歴史地区

 1990年、まだソ連だった頃に最初の登録が行われ、その中にサンクトペテルブルク歴史地区があった。この歴史地区というあいまいな用語には、郊外のペテルゴフやガッチナの宮殿を含む、膨大な数の建築物が含まれている。

2. キジー・ポゴスト

 カレリアの18~19世紀の木造教会群は、釘を1つも用いずに建設されたと伝えられている。

3.モスクワのクレムリンと赤の広場

 広場に加え、聖ワシリイ大聖堂およびその他の13~17世紀のクレムリン敷地内の建築群が登録されている。

4. ノヴゴロドの周辺の文化財

 ノヴゴロドのクレムリンとその周辺の修道院と教会が登録された。その中でも最も古いものは、11世紀にまでさかのぼる。

5. ソロヴェツキー諸島の文化的・歴史的遺産群

 16世紀のソロヴェツキー修道院は、白海の群島に位置している。城壁と教会を備えた主要部分の他、離島の修道院や教会も登録されている。

6. ヴラジーミルとスズダリの白亜建築群

 「黄金の環」に属するこの2都市には、12~13世紀のロシア古建築の傑作が集中している。

7. セルギエフ・ポサードの至聖三者聖セルギイ大修道院の建造物群

 モスクワ郊外のセルギエフ・ポサードには、かつてラドネジの克肖者聖セルギイが開いた、ロシア正教で最も重要と位置付けられている修道院がある。

8. コローメンスコエの、主の昇天教会(モスクワ)

 16世紀の白亜の建築は、石造りの教会としては初のテント型屋根であった。当時としては珍しいタイプの傑作建築である。

9. コミの原生林

 ウラル北部に広がるこの特別保護区の原生林は1995年に登録され、自然遺産としては最初期の登録の1つとなった。

10. バイカル湖

 淡水の貯水量は世界最大であり、地球で最も深い湖である。

11. カムチャッカの火山群

 極東の火山群は1996年に世界遺産に登録され、2001年にはその対象が拡大された。これらの多くは活火山である。

12. 「アルタイの黄金山地」

 シベリアのアルタイ山脈に広がる3か所の美しい景観は、「黄金山地」という呼び名で登録された。

13. 西カフカ―ス

 フィシュト山からエルブルス山にいたるカフカ―ス(コーカサス)連峰の一部が登録された理由は、これらの山地の一部はほぼ人間の手が及んでいないことである。ヨーロッパ(ロシアのヨーロッパ側を含む)では、これは極めて稀なことだ。

14. カザン・クレムリンの歴史的・建築的複合体

 カザン・クレムリンが建設されたのは、まだこの地がイスラム王朝のカザン・ハン国の支配下にあった頃だ。後にカザンはイワン雷帝に征服され、クレムリン内に正教の教会も建てられた。

15. フェラポントフ修道院の建築群

 この美しい修道院は14~17世紀に建設されたもので、ヴォログダ州の人里離れた地にある。内部には伝説的フレスコ画家ディオニシウスのフレスコ画が残されている。

16. クルシュー砂州

 カリーニングラード州のバルト海の砂州と、曲がりくねった松は、人間と自然環境の関わりの傑出した好例として遺産リスト入りした。この風景がこんにちに伝わるのは、人々の努力の賜物なのである。

17. シホテ・アリニ山脈中心部

 極東にあるこの自然保護区は、アムール虎を筆頭に、独特で貴重な動植物が生息している。

18. ウヴス・ヌール盆地

 この自然遺産はモンゴルからロシアのトゥヴァ共和国にまたがる。2003年、中央アジアで最北の内陸盆地として登録された。この地域は極めて多様な鳥類の生息域でもある。

19. デルベントのシタデル、古代都市、要塞建造物群

 ロシア最古級の都市の1つで、紀元前6世紀に創設された。6世紀に建造された要塞は、ロシア最古である。

20. ウランゲリ島保護区の自然体系

 ロシア極東の北極海の島に、最北の自然保護区がある。この地にだけ生息する固有種の生物が多い。その他、クジラ、シロクマ、セイウチ、ジャコウウシなども生息している。

21. ノヴォデヴィチ修道院の建築群(モスクワ)

 モスクワで最も美しい修道院の1つで、16~17世紀のモスクワ・バロックと呼ばれるスタイルの建築である。皇室や、多くの名家の女性たちがここで修道女になった。

22. ヤロスラヴリの歴史地区

 古都ヤロスラヴリの名所旧跡は、1000ルーブル紙幣に描かれている。世界遺産に登録された理由は、古代ルーシの文化遺産はもちろん、「エカテリーナ2世が1763年に全ロシア規模で実施した都市再建計画の顕著な例であること」も重視された。

23. シュトルーヴェの測地弧

 ノルウェーから黒海に至るこの弧に沿って測量を行った結果、世界中の学者たちが地球の正確な形を計測できた。調査はロシア帝国とスウェーデン=ノルウェーが共同で行った。265か所の三角測量点(測地学に基づく測量点)のうち、残った34か所が世界遺産のリスト入りしている。そのうち2か所がロシア領内にあり、オベリスクが設置されている。

24. プトラナ台地

 地球上で最も到達困難な場所の1つであり、山脈の裂けた稀有な地形が広がる驚くべき景観を誇る。

25. レナ石柱自然公園

 ロシアを構成する最大かつ最も寒冷な地域である、サハ共和国のレナ川の河岸に並ぶ巨大な石柱群だ。

26. ボルガルの歴史的考古学的遺産群

 イスラム系であるタタルスタン共和国のボルガルという町には、10~15世紀の貴重な遺跡が残されている。霊廟やハーンの墓所、失われたモスクのミナレットなどである。かつてヴォルガ・ブルガール人が建設したこの都市は、ジョチ・ウルスの一部であった。

27. ダウリアの景観群

 貴重な生態系が保全されているダウルスキー自然保護区は2017年に自然遺産に登録された。希少な鳥類の生息地であり、モウコガゼルの移動経路でもある。

28. スヴィヤズスク島のウスペンスキー大聖堂と修道院

 タタルスタンが誇る、もう1つの文化遺産である。16世紀の建築群で、かつてのカザン・ハン国の領土だったこの地において、正教会のゆり籠となった場所である。

29. プスコフ建築派の教会群

 ロシアの古建築の希少な遺産は、ここでしか見られない貴重なものである。最も古い建築は、12世紀のもの。2019年時点で、プスコフとプスコフ州に点在する10の教会が世界遺産リスト入りしている。

30. オネガ湖と白海の岩絵群

 ロシア北部には、有史以前の芸術的記念物も残されている。これらの岩絵や彫刻は紀元前4000~5000年前のものとされている。

31. カザン連邦大学天文台

 カザンの2つの天文台は、最も新しく登録された遺産である。

32. ケルソネソス・タウリケの古代都市とその農業領域

 ケルソネソスには、紀元前5世紀の遺跡も含まれている。この地でウラジーミル大公がルーシをキリスト教化したとされているため、特に重要な場所とされている。

33.「ケノゼルスキー国立公園」(ケノゼリエ)

 「ケノゼルスキー国立公園」(ケノゼリエ)は、ヨーロッパ・ロシア北西部、アルハンゲリスク州にある自然、歴史、文化の複合体だ。ケノゼリエの主な観光スポットは、16~17世紀のロシアの木造建築のオリジナルがあるいくつかの村だ。ここの「八角尖塔」を戴いた教会は、その美しさで驚嘆させ、ユニークな壁画が保存されている。