ウラルやシベリアには、不思議な自然の地形がある。それは、石の川。専門家はクルム、もしくはクルムニクと呼ぶ。通常は、高低差のある山岳地帯に形成される地形である。岩石がゆっくり上方から移動して、水路のような流れを作って堆積する。
我々はプトラナ高原を訪れた際にこの現象を見ることができたが、それはまだ小さなクルムだった。世界最大の石の川は、ウラルにある。
石の川はどこで見られる?
ウラル地方のタガナイ国立公園のクルムは、その全長は6キロメートル、幅は最大で700メートルに達する。もっとも大きい岩石は重さ10トンにもなる。世界最大の岩石の堆積層である。しかも、この最大の石の川は、通常の河川と同様、水が流れている。堆積した岩石の数メートル下を、100以上の小さな水流が流れ、クルムの上を歩くと、水のせせらぎが聴こえるのである。
こうしたタガナイの岩石の中には、アベンチュリンという鉱物が見られる。
クルムは、ウラルやシベリアの他の地域にも存在する。その多くは、踏破困難なタイガの山地にある。例えば、バシコルトスタンのボリショイ・イレメリ山のふもと(ウラル南部で、チェリャビンスク州との境近く)には、ティギン川という珍しい河川がある。最大の特徴は、約6kmにわたって水流の大部分がクルムの下を流れていることだ。その6kmを経てようやく、普通の川になる。
他にも、ペルミ地方のマルタイ山、そしてシベリア南部のサヤン山脈にも似たような石の川が点在する。
また、まれにではあるが、クルムはロシア西部でも見られる。ロシアの北西、フィンランド湾にゴーグラント島という離島がある。住んでいるのは、気象観測所や灯台に勤務するわずか数世帯のみ。石の川、つまりクルムは、島の至る所に点在している。丸みを帯びた石から成っており、植物は生えていない。
クルムはどのように発生したのか?
このような自然現象の発生については、複数の説がある。最も有力な説は、最終氷期との関連である。
約1万年前、山岳の頂上は氷河に覆われていた。その氷河が溶け始めると、山頂付近の岩石はゆっくりと山肌を滑り落ちていく。その過程で岩石は割れ、破片が次々と堆積していった。
堆積した岩石は、現在も動き続けている。その速度は、1年に数センチから50センチほど。
こうした石の川には、木はほとんど生えない。そのため、歩く時は細心の注意を要する。苔の生えた岩の方が安定しているので、そうした岩を選んで歩くのがおすすめだ。