極圏の向こうでは、他の地域よりかなり遅れてではあるものの、前触れもなく突然、夏がやってくる。昨日まで子どもたちが雪だるまを作っていたと思うと、今日は日焼け止めクリームを塗り、ほぼ1日中、陽が差す極日を楽しむ。
北極の夏に関するもっとも美しいエピソードの一つが、ツンドラの花である。融けた雪の下から信じがたいほど色鮮やかな植物が顔を覗かせる。花の季節は6月半ばごろに始まる(北に行けば行くほど、遅い)。
果てしなく白い雪で覆われたツンドラはまず柔らかい苔の絨毯と化す。そして数日の間に、冷たい灰色の石を突き抜けて、花々があちらこちらに姿を表す。
針葉樹も緑に色づき、一面のすみれが咲き乱れ、赤や黄色のシャクナゲが花開く。それは北極の緯度で見ることができる、モスクワのスノードロップのようなものである。
北極の花、アンドロサセはひなぎくに似ていて、シベリアアネモネは水仙に似ている。
サクラソウ(小さな紫色の蕾をつける)の茎は苔で覆われているように見えることが多い。寒さから守るために、自然がこの花に与えた「コート」のようなものである(というのも、灼熱の夏から、夜になると急激に寒い気候になるため)。
花だけでなく、夏のベリー類もツンドラに彩りを添える。極地では、ブルーベリー、クラウドベリー、ツルコケモモ、コケモモが育つ。
ツンドラといえば、どこも同じようなツンドラだと思われているが、ロシアではそれぞれの地域にそれぞれの植物が生育している。極圏のウラルのツンドラでは、シベリアのバラと呼ばれる珍しい花を目にすることができる。蕾は本当にバラによく似ていて、色は炎のようなオレンジ色をしている。
チュコトカ半島では400種ほどの苔や地衣類が見られる。特にここではアカバナがよく育っており、お茶にして飲む(イワンチャイと呼ばれることが多い)。
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北氷洋に流れ込む東シベリア海の沿岸では、自然が作り出す奇跡を目にすることができる。ここでもっとも多いのは普通のひなぎくである。ロシア最北の町ぺヴェク(69°42′)は「ロマンティックな人々とひなぎくの町」とも呼ばれている。
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