北はいつでも北だと思いがちだが、「北方ロシア」とはどう言う意味だろうか?それは北極圏ではなく、シベリアでさえない。そう、地理的な意味ではないのである。
「北方ロシア」という語が現れたのは19世紀後半のアルハンゲリスク州知事の記述の中で、それ以来、作家、科学者、それに官僚の間でも使われるようになった。それは、ロシア北西部に居住する人々が持つある共通した文化のことを意味していたのだ。科学者たちは、彼らは北方ロシアの民族グループを代表するとし、似たような文化、生活様式を持ち、言語も近いと指摘した。
通常、北方ロシアとは、バレンツ海や白海の沿岸からウラル山地に至るまでの地域、すなわち北ロシアの欧州部分のことだと考えられている。含まれる地方は、カレリア州、アルハンゲリスク州、コミ共和国、ムルマンスク州の一部、ネネツ自治管区、ヴォログダ州、ヤロスラヴリ州の一部、キーロフ州の一部、ペルミ地方だ。
トトマの景色
Legion Media巷間言われる言葉に、「北方はヴォログダに始まる」というものがある。昔は、ヴォログダ地方はヨーロッパからアルハンゲリスク経由で中央ロシアやシベリアに至る交易路が通っていたことから商業的にとても重要な地域であった。
ベロゼルスク、ヴェリーキー・ウスチュグ、トトマは裕福な商人(ロシア領アメリカの創始者も含め)たちの本拠地であった。この地位は、サンクトペテルブルクの発展と交易ルートが白海からバルト海に変わったことで失われていった。
アルハンゲリスク州シュジマ村の景色
Alexander Lyskin/Sputnik実際、サンクトペテルブルクは北方ロシアに属したことはない。逆に、常に西欧や外国からロシアにやって来るものすべての窓口だと考えられていた。一方、北方ロシアは、ロシアの伝統を守っているところであった。しかし、レニングラード州にも北ロシアに属する場所がいくつかある。これらは、ヴォログダ、チフヴィン、スターラヤ・ラドガ、ヴォルホフと境を接する州東部にある。今では、これらの場所は北方ロシアの中心であると考えられている。
アルハンゲリスク州の木造芸術博物館
Pavel Lvov/Sputnikこれらの場所の特筆すべき特徴は、素晴らしい木造建築にある。これらはただの平素な家屋ではなく、芸術的な彫刻を施した壮大な建物である。ロシアには古い北方の教会、家屋、風車小屋や公共建造物を展示されている屋外博物館がいくつかある。木は耐久性のある建材ではないが、まばらに他から隔絶して存在していたことから、今でも数百年前の木造教会がどんなであったのかを見ることができる。
同じ理由から、多くの伝統工芸もよく保存されている。ヴェリーキー・ウスチュグの彫銀細工、ホルモゴルイの骨彫刻、カルゴポリの粘土人形などだ。
キリロ・ベロゼルスキー修道院
Legion Mediaロシアには14世紀から16世紀につくられた歴史ある多くの修道院が残されている。有名なものは、ヴォログダ州のキリロ・ベロゼルスキー修道院やフェラポントフ修道院、ソロヴェツキー諸島の要塞修道院、レニングラード州のアレクサンドロ・スヴィルスキー修道院などだ。ベーロエ湖の修道院は、初期のキリスト教の隠者の場所として、エジプトのテーベと比べ「ロシアのテバイス」と時折詩にも詠まれている。これらの修道院は、宗教的な意義だけでなく、文化的な貢献も大きい。イコン芸術や建築の北方学派がここで育ち、多くの村や町がこれらの修道院を中心として興った。
ポモール族、20世紀初頭
Nikolai Shabunin17世紀後半には、北方ロシアは古儀式派の拠点となった。
彼らは主流派の改革を嫌い、誰にも見つけられないこれらの僻地に移り住んだ。しかも、住人はピョートル大帝が導入した新歴〈古いスラブ歴を使っていたポモール族によれば、現在は7530年〉を使うのを長い間拒否し続けた。この古い伝統は何世紀もの間北方ロシアで「守られて」きた。(世界的に見れば、近代的な通信手段と交通手段が現れるまでだったが)。
マースレニツァを祝っているポモール族
Vladimir Trefilov/Sputnikロシア北方で使われるのは3つのロシア語の方言で、それは聞いてみればすぐにわかる。(方言についてもっと知りたければこちらから)。北方ロシアの言葉は、美しいフォークソングのようにとてもメロディアスで、多くの「O」の音が聞こえる。この動画で少女がおとぎ話を語っているのを聞いてみてほしい。
ホッキョクグマ、チュクチ自治管区にて
Maksim Deminov/Sputnik重要なのは、「北方ロシア」と「極北地方」を混同しないこと。この2つはまったく別物である。極北も地理的な意味とは完全にはリンクしておらず、より社会的、経済的側面に拠っている。ロシアの多くの地域の気候は長くて寒い冬があり信じられないほど厳しい。これは極北においても同じだ。ここでは永久凍土がヤマル半島からチュコト半島までひろがり、人を寄せ付けないシベリアの土地もある。例えば、トゥヴァ共和国の多くの集落がそうだ。
もっと知りたければ、こちらからどうぞ。
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