カプースチン・ヤール打ち上げ基地では、すでに6回連続となる高層大気圏(地表から約10キロメートル以上の高度)への実験的な犬の打ち上げの準備が進められていた。
今回は、雑種のネプチョーヴイとロジョークというペアが飛ぶことになっていた。選ばれた2匹の犬は、理想的な健康状態と強い精神力を持ち、互いの相性も良かった。
出発の前夜、犬たちは再び検査されたが、朝、椿事が起きた。ロジョークが、鍵のかかった檻からどこへともなく消えてしまった!
モスクワから新しい訓練された犬を連れてくる暇はなく、今さら実験を中止するなど論外だった。
そこで、ある人が、食堂をうろついていた子犬を飛ばそうと提案した。この雑種を捕まえ、身体を洗って、毛を剃り、必要なセンサーを取り付けて、ロケットに乗せた。驚いたことに、この間ずっとこの犬は、まったく平然としていた。
ロケットは高度100キロメートルまで達した後、エンジンが停止。犬を乗せた先端部分が切り離され、地上に落下し始める。そして、最後の7キロメートルをパラシュートで無事降下した。
「ソ連の宇宙開発の父」で、ロケットの主任設計者であるセルゲイ・コロリョフは、装置の中に見慣れない犬がいるのを目にして非常に驚いたが、誰も彼に「替え玉」のことを敢えて話そうとはしなかった。しかし、コロリョフはすごく喜んだ。
「ほら、見たまえ!この調子でいくと、人々はそのうち、労働組合の優待券を使って、休暇を過ごしに我々の宇宙船に乗るだろう」
テストされた子犬はZIB(ロシア語で「ЗИБ」)(「消えた犬の予備」の略語)と名付けられた。コロリョフは、指導部への報告書の中で、この略語を「訓練を受けていない予備研究員」と説明した。
ZIBはそれ以降のフライトには参加しなかった。科学アカデミー会員のアナトリー・ブラゴンラヴォフが犬を自宅に引き取った。
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