20年後のロシア兵の軍装はどうなるか

Nikolay Khizhnyak/Sputnik; Sergey Fadeichev/TASS
 軍装の一部の要素がすでにシリアで使用されている。

 スナイパーライフルによる銃撃に耐え、対人地雷の爆発を未然に防ぎ、夜間は赤外線カメラに映らず、昼間は周囲の景色に完全に溶け込む。未来の軍装「ラトニク3」はこれらすべてを実現できる。軍装の一部とサブシステムはシリアの実戦ですでに試験されている。近いうちに軍が軍装の一部を大量に導入し始める見込みだ。これには特殊カムフラージュを施した軍服と通信装置、戦場映像装置だけではなく、どこに標的があり、どうすれば効率的に仕留められるかを兵士に指示するスマートライフルも含まれる。

 

新軍装の外観

ライフルMP-155「ウルティマ」

 新軍装は兵器見本市「アルミヤ2021」で来訪者に限定で公開された。セルゲイ・ショイグ国防大臣は軍装を目にして大いに喜んだという。カラシニコフ・コンツェルンはニューラルネットワークを統合した銃を軍司令官に見せた。銃は発砲するだけでなく、文字通り兵士と「会話」し、どのタイミングで最も効果的な射撃が行えるかを教える。正確には銃自体ではなく、兵士の防護装備に組み込まれた光学電子・偵察照準システムがこれを担当する。

 これに先立ち、カラシニコフは民間市場向けに、まるで映画『スターウォーズ』から出てきたような近未来的でスマートなライフルMP-155「ウルティマ」を公開した。この銃で試された技術が軍用にも応用された。製品の公開の際、カラシニコフはMP-155「ウルティマ」が携帯式コンピューターとデジタルディスプレイを備えたスマートな銃であることをアピールした。スマートライフルはさまざまな電子機器と同期し、タイマーや残弾数のインディケーター、射撃回数のカウンターを備えている。

 

現在ロシア兵は何を使用しているか 

 現時点で軍にはコード番号「2」の第2世代軍装「ラトニク」がある。この軍装は攻撃、防御、操作、生命維持、エネルギー維持を管理する5つの連携要素から成る。それぞれがモジュール式のサブシステムを持ち、天候条件や戦闘状況に応じて変更できる。例えばヨーロッパロシアでは兵士は緑と黒が基調のカムフラージュを使う。シリアでは砂地に溶け込むよう、ピンク・黄緑・灰の色合いになっている。変わった配色であることから、この軍装は冗談で「豚ちゃん」と呼ばれている。北極では兵士は白黒の軍装を身に付ける。

 開発者らによれば、カムフラージュの他、軍装は生命活動に最大限快適な環境を保証できる。軍装は48時間着続けられる。繊維に特殊な化合物を染み込ませており、空気を通して湿気を逃がす。冬用の軍装もある。夏用との違いは、暖房・保温効果が考慮されていることだ。バッテリーをつなげば、個人用の暖房装置が起動する。

 軍装の各要素はすべて組み合わせることができる。つなぎとスナイパーライフルの弾が直撃しても着用者を守る防弾チョッキから成る標準軍装の総重量は約10キログラムだ。ヘルメットとレベル6の防弾チョッキ、肩と太ももを守る防弾プレートを加えた完全装備ならば約20キログラムになる。新しい軍装の一式は兵士の体表面の約90パーセントをカバーできる。

 敵を倒す武器として、兵士は自動小銃、ライフル、マシンガンを使用できる。軍種に応じて、ニコノフ式自動小銃、AEK-971、最新のカラシニコフ自動小銃AK-12、AK-15、あるいは機関銃「ペチェネグ」を装備し得る。12.7 mm口径の6V7Mスナイパーライフル、新しい40 mm口径の銃架式自動擲弾発射器6G27「バルカン」もある。敵の軽装甲車両や防御施設を破壊できる新しい23 mm口径の携帯式砲システムも登場する予定だ。これには電子照準装置とヘルメットに取り付けるモニターがセットで付いている。これらの装置により、兵士は掩蔽壕から頭を出さずに、つまり「曲がり角の向こう」から撃てる。

 

ロシア兵は将来何を手にするか

 「ラトニク3」の開発状況は極秘だが、部分的な情報は兵器展示会「アルミヤ2021」で知ることができた。ロシア企業のスタンドに軍装を着た人物が立っていた。頭を完全に覆うヘルメットはバイクのヘルメットに似ており、シールドにモニターに3Dの映像が映し出すモニターが統合されている。防弾チョッキは爬虫類の鱗に似た複合材料の板でできている。さらにチタン製の外骨格は、兵士がほぼ自分の体重分の荷重に耐えることを可能にする。行く手にある地雷の存在を兵士に知らせるだけでなく、妨害電波で近接信管を無効にできるスマートなブーツも宣伝されていた。 

 どのような形でこれが軍に採用されるかは予想が難しい。第2世代の「ラトニク」は兵士用の一式で20万ルーブル(約3000ドル)だ。第3世代の軍装は、現代の電子機器と複合材料やチタン合金を使っているため、価格を推計しようという専門家は一人もいない。とはいえ、価格は一番重要な要素かもしれない。軍人は実用主義的で、今まさに本当に必要なものしか買わない。このため、「ラトニク」の従来モデルはどちらも部分ごとに段階的に軍に採用された。まずカムフラージュと個人用防御手段、それから小火器、次いで電子・光学照準装置だった。照準装置を完全装備で有しているのは特殊作戦軍と空挺軍の兵士、機甲部隊や砲兵部隊の指揮官だけだ。

 一見これは普通のタブレットだ。周囲の地図や標的の座標、それを仕留めるための提案が表示される。例えば、戦車兵や砲兵のための風向や風力の自動計算のデータや、特殊作戦軍と空挺軍の活動地域にどんなヘリコプターや飛行機がいるかというデータだ。兵士はレーザー測距儀で標的に照準を合わせ、航空機が砲弾を標的に自動的に飛ばせるよう、ディスプレイで航空機が搭載する具体的な砲弾を指で(手袋をしたまま)選ぶだけで良い。 

 飛行機やヘリコプターに搭載された受信機は「ゲフェクト24」と呼ばれている。このコンピューターは地上の各兵士とつながっており、地上から信号を受けた操縦士は武器の使用準備ができたことを確認するだけで良い。後はすべて電子機器が自動で行う。ロシア航空宇宙軍がシリアで旧式の、高精度照準システムを備えていない航空兵器を非常に効果的に使用できたのは、まさにこの連携の賜物だ。

*筆者は『独立軍事評論』紙の編集長である。

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