イルクーツクのシンボル、珍獣バブル

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アンナ・ソロキナ
6月1日は、「イルクーツク市の日」。今年、このシベリア東部の都市は、363周年を迎える。

 イルクーツク市の紋章には、水かきの付いた足と長いヒゲ、狐のような尾を持つ、奇妙な動物が描かれている。口にはクロテンを咥えているので、獰猛な生き物なのは間違い無い。

 紋章について、現在の公式説明によれば、描かれているのは「赤いクロテンを咥えて、左方向に走るバブル」である。

 当初イルクーツクの紋章には、クロテンを咥えて走るトラが描かれていた。アムール虎の生息域はイルクーツクより東の方だが、この地域まで辿り着くことも有り得る。

 昔のシベリアの住民は、トラやヒョウなどの危険なネコ科動物をバブルと総称していた。口に咥えたクロテンは、毛皮商売の象徴である。

 イルクーツクは1661年に設立された。トラ(バブル)の紋章は1790年にエカテリーナ2世によって承認されたことが知られている。

 しかし、それから1世紀後のアレクサンドル2世の頃、ロシア帝国の紋章を再承認した際、ペテルブルクの役人たちは記述にスペルミスがあると判断した。バブルではなく、ボブル(ビーバー)はないか!もっとも、それでは何故ビーバーがクロテンを咥えているのか、意味不明である。ビーバーはクロテンを襲わない。

 当時は40以上の州の紋章を一気に再承認したため、作業を急ぐ中、誰もバブルとはいったい何なのか、確認しなかった。

 紋章は画工によって修正された。もともとあった縞模様をなくし、水かきとビーバーらしい尾を描き加えた。しかし、獲物のクロテンはそのままである。紋章に関する記述も、以後はバブルではなく、「ボブル(ビーバー)」となった。

 1990年代になって、記述は元通り「バブル」になったが、紋章には空想上の動物が残された。市の中心には、この奇妙な動物の立派なモニュメントも設置されている。

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