モスクワから出ずに、ロシアの25都市を見るには?

Pavel Kuzmichev
 列車が音を立てて走り、自動車が渋滞に巻き込まれ、人々は仕事に急ぎ、住宅が建設され、男女が恋をし、若者がロックコンサートに出かける・・・。この模型は、すべてがまるで本物の街のようである。本物と違うのはただ一つ、すべてが87分の1の大きさであることだけだ。

 ペテルブルクからモスクワに列車で移動し、ロープウェイでエルブルス山に登り、モスクワ・シティ近くで渋滞にはまる・・・。これらすべてをたった1日で体験することができるのが、モスクワのジオラマ博物館「模型の皇帝」である。ここでは87分の1の大きさに縮小されたロシアを歩き、そこに住む人々と知り合うことができる。

ミニ列車でロシアを周回する 

 ここでロシアを知る旅の最初の都市はプスコフ。ここには歴史あるクレムリンと巨大な鉄道駅がある。ここでは、本物の鉄道と同じように、列車だけでなく、機関車を修理する工場、連動装置、それに列車を乗り間違えた乗客をも見ることができる。

 そもそも、列車と道路というのは模型の主要部分である。作者らは、居住区の間に数十のルートを作っているが、この輸送機関の運行状況は、実際の列車と同様、常に管理され、不具合があるとすかさず修理されている。

 次の街はサンクトペテルブルクである。1日に2度開く跳ね橋のドヴォルツォヴィ橋、聖イサアク聖堂、造船所、白夜に川岸で行われる結婚式、観光客を乗せて有名な大通りを走るバス・・・。そして、この街の天候の特徴も皮肉たっぷりに表されている―ここでは「夜中」じゅう、雨が降っているのである(地元の人々曰く、ペテルブルクでは創建(1703年)されて以来ずっと雨が降っている)。

 一方、モスクワでは、高層ビル群モスクワ・シティ周辺に長くて現実的な渋滞を目にすることができる。他の地域の自動車と違い、モスクワの自動車は1ミリも動かず、悲しげにライトを点滅させ、クラクションを鳴らすばかりである。一方で、「歩行者」たちには嬉しいサプライズがある。渋滞を少し離れたところにチョコレート工場があり、ボタンを押すと、小窓から本物の板チョコをもらうことができるのである。

 モスクワ中心部のクレムリン近くでは、考古学の発掘作業が行われている。また「地下」では、地下鉄ノヴォスロボツカヤ駅とその美しいモザイク画を見ることができる(このモザイク画について、詳しくはこちらから)。列車は、本物のサイズのモスクワと同じく、2分に1本の頻度で運行されている。

 モスクワから南に移動し、ロストフ・ナ・ドヌーに行ってみよう。ロストフといえば、サッカー。街は11分ごとに夕方になり、巨大なスタジアムではサッカーの試合が始まり、周辺には大好きなチームを応援しようと、人々が集まる。

 続いて、ロシアの海と山のリゾート地に行ってみよう。旅行者がリュックサックを背に目指すのは、ロシアでもっとも高いエルブルス山。

 山の地下部分では、洞穴学者らが、幻想的な発見をしている。

 ポヴォルジエ(ヴォルガ川流域)地方には、素朴な木造の家々、動物のいる農場、古い形式の小さな店などがある村を通っていく。

 ここには「焼けてしまった」建物や打ち捨てられたままの古い建物もある。

 西の飛び地であるカリーニングラード州はもちろん、模型の主要部分から離れたところに作られている。街の中心部ではケーニヒスベルグ大聖堂や戦前のケーニヒスベルグを再現した観光用の「魚村」を簡単に見つけることができる。

模型の皇帝の「イースター・エッグ」 

 この「模型の皇帝」は2021年にオープンした。製作したのは30人から成るチームで、ここまで5年の歳月をかけて作業が行われてきたが、しかしその製作工程はまだ続いている。細かい部分や名所が加えられ、また新たなエピソードや人も付け足されている。現在、この模型の国には10万人が「暮らして」いる。しかし、実は人間だけではない。よく見ると、ちょっと奇妙な生物もいるのに気がつくだろう。

 ロックフェスティヴァルでは、ニンジャ・タートルズがピザをオーダーし、モスクワのある家の屋根には画家のカジミール・マレーヴィチが抽象的な「スポーツマン」をデッサンしている。

 またモスクワのベッドタウンには、有名な写真「摩天楼の頂上でのランチ」の複製が飾られている。

 一方、ペテルブルクでは道路を渡る「ビートルズ」の4人の姿を見つけることができる。 

 装飾を担当したメンバーによれば、この模型にどれだけの「イースター・エッグ」が隠されているのかは、彼ら自身も把握していないという。今までに分かっているだけで30以上あるというが、新たなアイデアが次々と現れ、それが少しずつ形になっているという。

 現在、装飾家らは、シベリア部の模型の製作に取り組んでいる。シベリアはかなり広大な土地であるが、1年後には完成させるとしている。ここだけの話だが、バイカル湖はもう出来上がっていて、とても印象深い仕上がりになっている。

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