村を幽霊にしてしまうのに、何頭のクマが必要だろうか。たとえば、ノーヴァヤ・ゼムリャー島では、お腹を空かせた50頭のシロクマが人に近づこうと北極の村に現れ、人々を恐怖に陥れた。ではエゾヒグマではどうだろう?実は1頭だけで十分なのである。あるとき、日本の村を1頭のエゾヒグマから救うために、60人の武装した男性から成る狙撃チームが必要となったことがある。1ヶ月のうちに、クマは7人の農民を襲った。現在、エゾヒグマは依然、世界でもっとも攻撃的なクマの1種である。
エゾヒグマはウスリー州、アムール州、 サハリン、クナシル島(国後島)、北海道、中国北東部、朝鮮半島の沿岸部と山森に生息している。
ロシア語でのエゾヒグマの名称には、「褐色の」という言葉がついているが、エゾヒグマの毛は、普通のヒグマよりもっと濃い色をしている(黒い部分すらある)。そのため、研究者たちは、一時、ウスリーのエゾヒグマは、ヒグマとアジアクロクマの交雑種ではないかと考えていた。しかし、結局、これは確証されなかった。
エゾヒグマはその大きさでは、コディアック島のクマに劣っているだけであるが、しかもその差はわずかである。メスの体重は200〜250キロだが、オスは紛れもない重量級選手で、最大で600キロにも達する。後ろ足で立つと、体高は3メートルにもなる。
巨大な身体になるのは、幅広いものを食べるからである。エゾヒグマは肉食というより、草食動物である。夏の間は、シーバックソーン、すぐり、チョークベリー、樹皮などを好んで食べる。近くの貯水池に魚がたくさんいるときには、食糧の最大30%が魚になる。冬が到来する前に、体重を増やすために、エゾヒグマは農作物を大食するため、耕作地を歩きまわる。しかし、必要の場合、他の動物を攻撃しても構わない。時折、さまざまな大きさの哺乳類を食べることもあり、子グマを襲うこともある。
これが原因で、メスのエゾヒグマは「勝手きまま」な振る舞いをしている。同時に生まれた子グマの父親が異なるオスであることも多い。というのも、メスの持つパートナーが多ければ多いほど、より多くのオスが子グマは自分のものだと考える。しかし、母グマは、生まれてから3年間は、子グマたちができるだけ成熟したクマと遭遇しないようできる限りのことをする。
エゾヒグマは単独で行動する動物である。交尾のとき以外の多くの時間、エゾヒグマは一頭だけで生活している。しかし、エゾヒグマの暮らしは楽なものではない。生息圏には、最強の称号を競い合う別の捕食者がいる。それがアムールトラで、両者の歩くルートが交わるところでは、本物の戦争になる。
クマはそんなトラとの遭遇を避けようとしているが、飢えと、人間の活動による生息地の減少から、両者が衝突する頻度はますます高くなっている。そんな衝突では一体どちらに軍配が上がるのだろうか。過去の記録によれば、衝突の50%でトラが勝利を収めている。ただここには微妙なニュアンスがある。アムールトラは成熟した力強いクマよりも子グマを襲うのを好む。また冬の初めの冬眠の時期を急襲することも多い。クマを殺したトラはクマの脂肪を食べる。
現在、エゾヒグマは脆弱な(そう、あの恐ろしい外見でありながら)絶滅危惧種と考えられている。しかし、その理由はトラでもなく、人間による密猟や都市の経済活動の拡大のためである。
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