ロシアのエスニック・ウェディングドレス(写真特集)

 ロシアには200を超える民族が居住していて、それぞれの民族独自の結婚の習慣がある。今でも多くのカップルが伝統的な衣装を着て、古い習慣に従い、自分らのスタイルで結婚を祝っている。

 ロシアの結婚式は明るく陽気なイベントで、大人数で祝うのが普通だ。女性はお祝い用の白いロングドレスを着てベールをかけるか、後にも着れるようなイブニングドレスを選ぶ。一方、男性はスーツを着用するのが一般的だ。しかし、エレガントに見える民族衣装を着るカップルも多い。

オセチア人

 カフカス地方にはウェディングドレスを製作、展示しているショップがあり、そこで伝統的な婚礼衣装を注文することができる。カフカスの婚礼衣装の特徴は丈が床に着くほどで、両袖も長く腕を覆い、ウエストは細い。

1970年

 北オセチア・アラニヤ共和国の伝統的なウェディングドレスはサテン、シルク、ベルベットなどの高価な素材を使って作られ、金糸や銀糸を使った刺繍が施されることが多い。時には、刺繍に加えて、宝石で飾られることもある。長いカフタン風の上着をドレスの上から身に着ける。腰には幅広のベルトが巻かれるのが常で、これは金属製であることが多い(特に高価な衣装な場合は銀製である)。花嫁の頭上には、伝統的な帽子が載せられる。今では、この婚礼衣装は白であることがほとんであるが、歴史的には、上着と帽子は赤であることが多い。

 男性は普通のスーツか、黒か赤の伝統的なチョハを着、パパーハ帽を被る。

チェチェン人

 チェチェン共和国の花嫁は、ベールをかぶる代わりに、ドレスと同じデザインの刺繍が施されたショールを身に着ける。時には、スカーフの上から頭に宝石で飾られたティアラを着けることがある。ウェディングドレスそのものは、白だけでなく、クリーム色、薄ピンク、金色などどんなパステル色でも良く、レースや宝石で飾られていた。形はストレートなものも、ボリュームのあるロングトレーンドレスもある。

イングーシ人

 イングーシ女性が着るウェディングドレスはストレートで、ウエストが細く、幅広ベルトが巻かれ、多数の宝飾品が付けられる。このドレスには帽子がセットされている。今日では身に着けるすべてのものが白い素材で縫われ、金糸か銀糸の刺繍が施される。さらに花嫁は顔を隠すためにベールか半透明のシルクのショールを被る。それに伝統的に「ナドゥギ」と呼ばれる幅広袖をもつ上掛けをドレスの上に着て、花嫁が他人と偶然触れ合ってしまうのを防ぐ。

タタール人

ムスリムの結婚式

 タタールスタン共和国の現代の婚礼衣装はヨーロッパのものに似ているが、民族独自の興味深い差異がいくつか見られる。しかも、白である必要はなく、民族の伝統的な色である紫であったり、緑や青でもよい。花嫁の頭上には、スカーフかヒジャブまたはダイアデムのつけられたベールに伝統的なタタール帽―フェズが被せられる。ムスリムの人たちは婚姻届を出す前に、モスクで結婚式を挙げるのだが、この時に花嫁は頭を覆わなくてはならないのだ。花嫁は結婚式と婚姻提出時に違うドレスを着ることも珍しくはなく、例えば、真っ白なドレスに同じデザインのスカーフと、色鮮やかな民族衣装という風にだ。

 男性は、ごく普通のフォーマルスーツを着用するが、モスクワではフェズを被る。

マリ人

1973年

 歴史的に、マリの花嫁は鮮やかな(通常は赤)の刺繍が施された白のフォーマルドレスを着用し、頭上にショールを結びつける。これは結婚式(もしくは婚姻届けの提出)が終わると、キツネ帽に被りかえる。男性は普通のスーツを着るが、シャツには長い刺繍のされたベルトを巻く。

 民族伝統のスタイルで結婚式を行いたいと考える現代のカップルは、民族衣装に長い色鮮やかなリボンとコインをつなげたネックレスをつけ、幅広ベルトを巻く。マリでは招待客も通常の服装に明るい色のリボンをつけることになっている。

 ネネツ人

 北方の先住民であるネネツ人はツンドラ地帯に住み、多くが今でもトナカイの放牧に従事している。彼らには伝統的な婚礼装束があるわけではないのだが、結婚式には新しくて上等な衣服を着用するのが普通で、花嫁の髪は三つ編みにされビーズのついたリボンで飾られる。

1983年

 結婚式は特別にたてられたテントで行われ、テントに入る前に新郎新婦は清めの儀式を受ける意味で焚火の上を飛び越える。この伝統は今でも受け継がれている。

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