ロシアについてもっともよく聞かれる噂といえば、いつも寒く、雪が降っているというもの。これは世界中のマスメディアで広められているロシアのイメージで、ハリウッド映画ではロシア国外のシーンであってもそうである。(たとえば、映画『RED/レッド』の中で、ブルース・ウィリス演じるフランク・モーゼズが在米ロシア大使館に行くときは雪が積もっているのだ!)
しかし、本当にそうなのだろうか?実際、冬がない都市も多く存在する。ソチ(クラスノダール州)、エリスタ(カルムイク共和国)、グロズヌイ(チェチェン共和国)などで、これらの場所では雪や霜はほとんど見ることはない。
それにもかかわらず、これらの南国の町においても雪が降ることがあり、地元民にとっては、大イベントでたちまちニュースが広がり、SNSで話題になるのである。
しかしながら、概してこの国の気候はとても多様で、夏であっても雪が降る場所がある。
夏の暑さでなく、夏の降雪
この動画は、ロシア極東の都市、マガダンの映像。道路は完全に雪に覆われ、雪嵐も起こり、気温は氷点下近くまで下がっている。これは冬に撮影された動画ではなく、ご想像通り、2022年6月中旬だ。
この地方の気温は数日前は25度あったのが、突然冬になった。一週間後には気温は13度―15度に戻り、雨が降り出した。すなわち、1〜2週間の間に全ての季節がやって来たということだ。
冬期の気温がマイナス50度以下になることも珍しくなく、夏には30度以上になる、ヤクーチア共和国の気候にも驚かされる。真夏の最中に雪が降ることがあり、雪は数日残る。
更に、中心都市であるヤクーツクでは暑い夏の気候であっても、北部地方では雪が降ることがある。そして氷河が溶け出しているところもあり、地元民はレジャーに出かける。
30度の気温の中、川に巨大な氷の塊が流れているのを想像してみてほしい。このような氷でもっとも有名なのは「ブルウス」と呼ばれている。本当の氷の砂浜だ!
通常このような氷が融け出すことはない、と言うのも、ヤクーチアのこの地域(ヤクーツクからおよそ100㌔)では暑さが続くのは数週間に過ぎないからだ。しかし、熱波が異常に長く続くと(そしてこれはあり得る)、「ブルウス」の氷は7月にはごく小さな塊にまで小さくなってしまう。でも、心配することはない。9月までにはまた雪が適当に降って、好みの氷の上で休むこともできるようになるからだ。
ノリリスク、ヴォルクタ、サレハルドなどのロシア北部では夏でも暑くならず、10度〜15度程度だ。しかし、時にはそれが25度以上になったり、零度近くになったりする。また、雪が融け切らずにあちこちに残り、6月になっても黒く汚れた雪を見ることが出来る年もある。
モスクワ、サンクトペテルブルク、カリーニングラードなど多くのヨーロッパ・ロシアの都市では、気候は大体季節通りである。春はあたたかくぬかるみ、夏になると天気はよく気温があがる。秋は紅葉が始まり雨も増え、もちろん冬には雪がふり極寒となる。そして、ここでも、夏に降る雪は、住民をもちろん驚かすけれども、異常な事とは言われない。
雪のない日などない
ロシアには、雪が完全には融けない場所がある。もちろんこれは北極海の離島の話だ。
ノヴォシビルスク諸島、フランツ・ヨシフ諸島、ノーヴァヤ・ゼムリャ諸島などでは、夏に訪れる機会があれば、少し冷たい海で泳いだ後、流氷の上で休む白熊やセイウチの姿を見ることが出来るだろう。
夏になると雪が融けて岩肌を露出させるが、気温は6月や7月でも零度を少し上回る程度の島々がある。そこでは8月には寒さが再びやって来るので、単純に雪が融ける時間がないのである。