なぜロシアにはカラフルな建物がたくさんあるのか?(写真特集)

Mikhail Kireev/Sputnik
 住宅の色が鮮やかであればあるほど、人々の目を楽しませることができる。陰鬱な人ばかりが住んでいるというステレオタイプがあるこの国の色鮮やかな建築物を紹介しよう。

 ソ連時代、大都市の「ベッドタウン」のほとんどは、モノクロームのコンクリートのフルシチョフカ住宅と灰色のアスファルトの道路という外観であった。夏になるとそこに木々の緑が添えられ、そして冬には雪がこれらの色をややスッキリしてくれた。

モスクワにあるコプテヴォの5階建て住宅ビル

 しかしながら、現在、住宅地はまったく違った様相をしている。外国人は、ロシアの都市にこれほど多くの派手でカラフルな住宅が立っていることに驚く。 

 モスクワにも色鮮やかな建設地がある。

 サンクトペテルブルクでも。

 ウラジオストクでも。

ノヴォシビルスクでも。

 古いコンクリートやレンガの建物は、グラフィティのアーティストたちによって彩られることが多い。 

 ロシアでこのようなカラフルな住宅が作られるようになった理由はいくつかある。まずは、自治体の役人にも、建設業者にも、その方がより美しいと感じられたからである。モノトーンで、違いのない建築物は批判を受けた。

 タタールスタン共和国のルスタム・ミニハノフ大統領は、最近の色鮮やかな建設事業に「きれいな家だ!」と評価する。「このような色使いにするという決定がなかったら、バルコニーも陰鬱で面白味のないものになっていたでしょう」。

 またタタールスタン共和国、ナベレジヌィエ・チェルヌィ市の建設部門の役人も、大統領に同意し、「産業施設がグレーだと労働生産性が落ち、住宅施設がグレーだと出生率が落ち、牛舎がグレーだと牛乳がとれません」と話す。

 鮮やかな色は、アクセントとしても、個別に立っている建物(モスクワの小児病院のように)にも間違いなくしっくりくる。しかし、建物全体にさまざまな色が塗られていたら、おそらく違和感があるだろう。

 ちなみに、児童広場や子どものための施設はカラフルな方が良いと考えられている。 

 「学校や幼稚園を色鮮やかにするという許可は役所から出ていて、人気のあるデザインや色合いが乗っているカタログを紹介してくれることもあります。ときに、話し合いが長引くこともありますが、いつもかなり明るい色になります」と話すのは、モスクワ地方の建設会社の経営者である。

 しかし、モスクワやカザンのカラフルな家々が趣味の問題だとすれば、極北ではこれは実質的に必要不可欠なものである。ここでは、1年のほとんどの間、モノクロームな白黒の景色が広がっており、短い夏の間にわずかな植物の緑が加えられるだけなのである。このような景色によって、人々は鬱状態になる可能性があることから、明るい色が不可欠なのである。

 厳しい気候の北方では、1980年代の末ごろから、住宅の建物を明るい色に塗るようになった。たとえば、極圏のサレハルド(写真上)、チュコトカ半島のアナディル(写真下)などはこんなにカラフルな街並みになっている。

 しかも、色のついた建物は、強い吹雪や大雪のときに場所や方向を確認するのに便利である。とりわけ、ノリリスクではこれが非常に重要なものになっている。

 ノリリスクなどでは、番地や通りの名前も大きな文字で書かれている。

 ロシア最北の国際的な港、ドゥディンカでは、住宅の入口もかなり色鮮やかに塗られている。

 サハリンでは、ストリート・アートの助けを借りて、位置情報に関する問題を解決している。サハリンのある村には、同じような建物が並ぶ同じような通りが多いため、壁に描かれた絵で迷わず、正しい建物にたどり着けるようになっている。

 有名なロシアの建築家ボリス・ベルナスコーニさんは、「建物をカラフルなものにしたいという気持ちは、ソ連時代の人々の心理に関係しており、彼らは今もそれを解決しようとしています。ソ連時代、人々は長い間、多様性が失われた、モノトーンのグレーな環境で暮らしていました。そこで、今ようやくあのとき持てなかった色づかいを取り戻そうとしているのです」と語っている。

 その上で、ベルナスコーニさんは言う。「色というのはとても強い力を持つもので、色使いには細心の注意を払わなければなりません。出なければ、アンバランスなものになってしますのです」。ベルナスコーニさんによれば、都市建設において、正しい配色について助言してくれる専門的な知識が欠如していることが大きな問題になっているという。今のデベロッパーには、建設事業の最初の段階から完成まで管理するような建築家との共同作業のシステムが出来上がっていないとのこと。

 インターネットのユーザーたちは、街の美しさを損ねる住宅のストリート・アートについて、「闘鶏」や「メイクの下手な女性」などと形容している(下の写真は、ノヴォシビルスクの住宅地)。

 住民自身は、鮮やかな色に塗ることで、建物入口の老朽化や損傷を隠されていることが多いと嘆いている。

 一方で、思い出してほしい。ロシアでもっとも有名なあの建築物を!「聖ワシリー寺院の色使いの美学はわたしたちの遺伝子の中に組み込まれているのです。これこそがロシアの建築物なのです」とベルナスコーニさんは指摘している。

 というのも、「赤い」を意味するロシアの古い言葉は、「美しい」と同じ意味を持っているのである。そして、だからこそ、ロシアでもっとも主要な広場は「赤の広場」と呼ばれているのである。

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