一角獣がまだ存在すると信じられるだろうか?北氷洋の冷たい水の中に、長い角のある非常に珍しい海の生物が生息している。このような生物は世界でも唯一である。
イッカクはバフィン島にて(カナダ)
Legion Mediaイッカクは巨大である。体長は4.5メートルに達し、体重は1.5トンで、しかもそのうちの3分の1が皮下脂肪である。しかしそれは残念なことではない。イッカクは北氷洋の氷の中に生息しており、熱を奪われないようにするため、脂肪は必要不可欠なものなのである。
イッカクの牙
Legion Mediaイッカクの特徴は、長い角(ただし雄にしかない)である。イッカクには下の歯がなく、上の歯は2本だけで、そのうちの1本が次第に牙になる。そしてそれはときに3メートルもの長さにまで伸びる。
この角はとても強度があって柔軟性もあるが、折れても、神経の末端部分を守るため、骨組織のようなもので覆われる。そう、牙にも神経の末端が通っているのである。
牙は何のために必要なのか。これについては研究者の間でも意見が分かれている。敵から身を守るためだという説もあれば、海洋上の厚い氷の層を割るためだという説もあり、また神経の末端を使って水温を測っているのだという説もある。
そしてもちろん、角は雌を引きつけるためのものでもあり、もしかするとこれが主な機能である可能性もある。
イッカクは哺乳綱偶蹄目(鯨偶蹄目とする説もあり)イッカク科イッカク属に分類される鯨類。本種のみでイッカク属を構成している。
イッカクのロシア語の名称である「ナルヴァン」は、あらゆる面から判断して、アイスランド語のnar (死体)とhval(クジラ)に由来するものである。少しおどろおどろしい名前であるが、これはくすんだグレーに黒い斑点のある皮の色からきている。
しかしながら、1990年に研究者らはイッカクとシロイルカの交雑種を発見している。
イッカクの群れ、カール=アレキサンダー島にて(バレンツ海)
ガスプロムネフチ (CC BY-SA 4.0)イッカクは小さな群れを成しているが、そこに集まるイッカクすべてが血のつながりがあるとは限らない。そしてイッカクは独特の音を使って交流する。その音とは、ため息のようなものや弾くような音、そして叫び声である。群れは一緒になって小魚や貝を捕まえたり、音で会話したりする。そしてとりわけ興味深いのは、それぞれの群れに独自の言語または「方言」のようなものがあるということである。つまり、ある群れの言葉が別の群れでも理解されるのかについては、明らかになっていない。
イッカクは非常に海洋の遠く離れた冷たい海域に生息しているため、その生態を調査するのもかなり困難となっている。イッカクはフランツヨシフ諸島、スヴァールヴァル諸島、グリーンランド付近で発見されている。また流氷の動きとともに、イッカクの移動も見られ、英国の沿岸部でも見つかっている。とはいえ、主な生息地は、人のいない冷たい高緯度の場所である。研究者らは、イッカクは世界に4〜5万頭ほどいると考えているが、これは正確とは言い難い数である。
イッカクには敵がいるが、それはシロクマとアザラシである。しかし、個体数が減少しているのは主に人間の活動による。いくつかの文化では、その角がどんな病気にも効く万能薬だという伝説があるからである。また牙から工芸品も作られている。
イッカクは囲われた状態では生きることができない。ただし自然の中では50年は生きることができる。
そのため、イッカクは絶滅の危機にある動物に近いとして、国際的なレッドリストに登録されている。ロシアではイッカクを産業に用いることは完全に禁止されている。
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