1897年、ロシア帝国のセルゲイ・ヴィッテ財務相はルーブルについて金本位制を導入し、第一次世界大戦の勃発まで続いた。1ルーブルは純金量0.77gに相当することになった。1ドルは1.94ルーブルであったので、100ドルは194ルーブルに相当することになる。
当時としては大金だ。労働者の月給は20~70ルーブル、つまり10~36ドル程度。100ドルあれば良馬が1頭、あるいはジャガイモが13,000kg近く、卵が8,430個、ニワトリが388羽買えた。
小都市なら、馬車の御者には(当時の公共交通機関)20コペイカが支払われていたので、100ドルあれば馬車に970回乗れたことになる。
1897年に宝石商のカール・ファベルジェは、中に黄金の箱馬車が仕込まれたイースターエッグ「コロナーツィヤ」を製作し、7,150ルーブルで売りに出した。ドルにすれば、3,700ドルである。現在であればこのような品はその歴史的、文化的、宝石的価値ゆえに、オークションなどで2,000万~3,000万ドルといった価格で取引される。
20世紀初頭のロシアは繰り返される革命、第一次世界大戦への参戦、ロマノフ王朝の終焉、ボリシェヴィキの政権掌握、そしてハイパーインフレに見舞われた。
1922~1924年にかけての通貨改革で、旧ルーブルのデノミネーションが実施された。新1ルーブルは1923年型ルーブルに対し1対5万の比率で交換された。実施された全てのデノミネーションを総合すると、1917~1921年のルーブル対し1対500億の比率だった。ドル相場は2ルーブル22コペイカに落ち着いた。
100ドル(222ルーブル)あれば、1924年にはジャガイモを4,440kg、肉なら444kg、卵は6,340個買えた。当時の平均月収は40~60ルーブル(18~27ドル)だった。
高級車GAZ-21「ヴォルガ」
Yuri Abramochkin/Sputnik1961年に通貨の「フルシチョフ改革」が実施された(ニキータ・フルシチョフ第一書記によるもの)。旧10ルーブルは新1ルーブルに交換された。同様に給与や商品価格も改定される。
1米ドルは90コペイカであり、100ドルは90ルーブルに相当した。平均月収は80~100ルーブルだったので、ちょうど100ドル程度ということになる。100ドルで買えたのは、ジャガイモが900kg(50年前と比較して、ほぼ5分の1)、卵は690個(同10分の1)。お祝い事があれば、100ドルでケーキ「レニングラード」を34個、またはコニャックを21瓶買える。また、地下鉄の乗車券なら、100ドルあれば1,800枚購入できた。
裕福な国民は、高級車GAZ-21「ヴォルガ」の購入を夢見た。価格は5100ルーブル(5,670ドル)。それが叶わないなら、せめて410ルーブル(455ドル、約5か月分の給料)のオートバイ「ヴォスホード」を買いたいと願ったものだ。
モスクワの闇市場、1992年
Roger JOB/Gamma-Rapho/Getty Images1985年から1991年にかけては、ソ連はペレストロイカを経て崩壊に至った時期である。ペレストロイカ期には、価格はそれ以前と比べて約1.5倍に上昇した。
1991年の初めに「パヴロフの通貨改革」が実施された(ヴァレンティン・パヴロフ首相の名にちなむ)。この改革では、1961年型の50および100ルーブル紙幣の使用停止と交換が行われた。交換期間は3日間で、その後2か月間は1,000ルーブルまで交換が可能だった。
対ドルの公式レートは1.75ルーブルまで下げられた。しかし市場のレートは1:30、秋には1:55になっていた。輸入品は、通常は闇市場で取引され、流動する相場に基づいて価格が設定されていた。
1991年末頃の平均月収は500~600ルーブル(286~343ドル)だった。100ドルあれば、(公式レートの場合なら)牛肉は11kg、ジャガイモは77kg、卵は390個、地下鉄の乗車なら29枚、映画のチケットなら92枚が買え、保養所での休暇なら8日分だった。
モスクワ州のポドリスク市で展示される中国自動車大手チェリー 新ブランド「Omoda」
Mikhail Voskresensky/Sputnik2022年2月にロシアはウクライナで特別軍事作戦を開始。これに対し、経済面を含む国際的な制裁が科せられた。結果、ルーブルの相場は非常に不安定になった。作戦開始前の2021年の平均的なレートは73.7ルーブルだったが、2022年は63.5ルーブル(最高値は3月の103.5ルーブル、最低値は6月の57ルーブル)となった。2023年の8か月間の平均レートは81.6ルーブル(最低値は1月は68.8ルーブル、8月は95.3ルーブル)。
2023年中盤、100ドルで買えるのは、牛肉19kg、ジャガイモ250kg近く、卵1,200個。1991年と比較すると、牛肉は1.5倍、ジャガイモは3倍、卵も3倍多く買える計算だ。
しかし、他の分野では値上がりもある。100ドルで買える地下鉄の乗車券は173枚(1991年との差は6倍)、映画のチケットは32枚(1991年の3分の1)。保養所での休暇なら3日分(2.5分の1)だ。
現在、平均給与は70,000ルーブル(2023年6月は76,600ルーブル、連邦統計局のデータによる)であり、これは約800ドルに相当する(1991年比で2.5倍)。自動車の平均価格は190万ルーブル(約2万ドル)である。
馬の話に戻ろう。19世紀なら、100ドルあれば馬が1頭買えた。現在、馬の平均価格は約15万ルーブル、つまり、実に1,600ドルである。
*本記事中では、ロシア連邦統計局(Rosstat)およびオープンソースのデータを使用した。
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