赤の広場で謎めいた暗殺未遂事件

Kira Lisitskaya (Photo: Konstantin Kokoshkin/Global Look Press; Anatoly Garanin/Sputnik; The Swedish Army Museum)

 かつて、赤の広場で謎めいた暗殺未遂事件が起こった。あまりにも不可解で奇妙なこの事件は機密扱いとなり、ソ連の一般市民が知ることは決してなかった。

 1942年のボリシェヴィキ革命25周年を記念するこの日、祝典に参加するため要人が続々と赤の広場に到着していた。時を同じくして、赤の広場にある聖ワシリイ大聖堂の近く、 「ロブノエ・メスト」としても知られるこの場所に得体の知れない歩哨が一人立っていた。赤の広場を警備していたソ連警察は、軍服を身にまとい武装したその男に不審を抱いたが、毅然としてその場所にいる理由を答える男の様子にすっかり混乱してしまった。

 赤の広場周辺の警備隊がその男に対する警戒を緩めると、男はライフルを構え、政府車両の車列の一台に向けて発砲した。銃撃戦となり、最終的に男は手榴弾の爆発で気を失い、捕らえられた。

 その男サヴェリイ・ドミトリエフ上等兵が自分の持ち場を放棄し、密かに赤の広場に侵入して、政府車両に発砲した理由に関しては様々な説があり、ナチスのスパイによる筋書きなのでは、反革命勢力の陰謀ではないか、などと言われた。ヨシフ・スターリンが標的にされた可能性もあることから、捜査当局は事件の解明に全力で当たった。しかし、ドミトリエフから動機に関して多くの情報を引き出すことはできなかった。

 結局、捜査当局は陰謀説を排し、単純な結論に達した。これは「ローンウルフ型の単独テロ行為」である、というものである。サヴェリイ・ドミトリエフ上等兵は死刑を宣告され、処刑された。しかし、機密扱いを受けたこの事件には未解明の重要な空白部分が残されており、いまだ疑念が消えることはない。

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