ロシアの諺「ゆっくり行けば、より遠くに行ける」(急がば回れ)

Kira Lisitskaya, Keystone Press Agency/Global Look Press, Pixabay
 ロシア語には、矛盾に富んだこの文化の特性が現れた慣用句、諺がたくさんあり、広く使われている。これもその一つだ。

 いったいどうして、ゆっくり進む人がより早くゴールに到達できるのだろうか?それでも、このロシアの金言はいつでもどこでも当てはまる(新しいiPhoneは別かもしれないが)。

 ロシア・ビヨンドが読者に対して行ったアンケート調査によると、回答者は、これをロシアの最も重要な諺の一つに挙げている。だから、確かにロシア人のメンタルを反映しているのだ!

諺の意味は?

 «Тише едешь дальше будешь» (Tishe yedesh dalshe budesh)

 文字通りに訳せば、「ゆっくり行けば、さらに遠くへ行く」、または「ゆっくり行けば行くほど、遠くに行ける」

 ちなみに、これに似た意味の英語の諺がいくつかある。

  • “Haste makes waste” 「急ぐことは、無駄をつくることだ」→「急いては事を仕損じる」
  • “Slowly but surely” 「ゆっくりとしかし確実に」
  • “Slow and steady wins the race” 「ゆっくりと着実なのが競争に勝つ」

 これは、ロシア人が子供の頃から両親に言われていることだ。急いではいけないよ!本当に大事なことは急いではいけない。急ぐ人はしばしば間違いを犯し、最初からやり直すか、間違いを直さなければならない。とにかく時間を無駄にするだろう。前もってちゃんと準備しておけば、その時間は節約できるはずだ――。 

ロシア的メンタルのアブナイ裏面?

 ロシア語には、これと同義の諺がたくさんある。それらはみな、人が物事をさっさと速く済ますことを妨げるだろう。次に「大胆な」例をいくつか挙げよう。

  • 「お前が急ぐと、人を笑わせるだろう(愚か者だけが急ぐ)」
  • 「(布地は)七回測ってから裁て(飛ぶ前によく見ろ)」          
  • 「話された言葉は雀ではない。一度飛んでしまうと捕まえられない(もう口にしたことは引っ込められない)」

 これらのことわざはすべて、チャンスは一回しかないのだから前もって慎重に準備しろ、と勧める。そして、ロシア人の多くは、これを子供の頃からずっと聞かされるので、むしろ何かをしたり言ったりしない方がよいのだ、という感覚を植え付けられて成長する。自分が愚かに見えたり馬鹿にされたりすることを常に恐れる人は多い。言うまでもなく、これは多くの人にコンプレックスをつくり出し、そのせいで彼らは、千載一遇の機会をしばしば逸する。

 また、このことから、ロシア人の生活における大きな矛盾の原因が見えてくる。彼らは、何か物事を決めるのにすごく慎重で、重大な一歩を踏み出すことに(あるいは、生活の在り方を変えることに)、散々ためらい、悩み苦しむ。

 と同時に、その裏面あるいは心理的補償として、ロシア人は車を思い切り飛ばすなど、エクストリームな活動を好む。ただし、それは、感情的なまたは実存的な領域ではなく、身体的、物理的な領域においてだが。

 さらに、ロシア人は嘲笑されるのを嫌うけれども、自分で自分を自虐的に笑い飛ばせる人は多い。

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