ボブィシキはリペツク州(モスクワの南400キロ)の郷土料理である。それぞれの家庭に独自のレシピがあり、この料理を独特なものにする秘訣がある。
ボブィシキは小さくて甘いパンケーキまたはパンで、精進期によく食される。また多くの人にとっては、おばあちゃんが心のこもった朝ごはんを作ってくれたという思い出の一品になっている。
伝統的にボブィシキのベースとなっているのはきびを茹でた後の汁である。小麦粉とイーストの他に、生地には塩と砂糖しか入っていない。生地は一晩寝かさなければならない。そしてミニパンケーキは伝統的に薪のかまどで焼かれた。
毎日の生活の中でこのパンケーキを作るのは便利で、茹で汁を捨てないための方法だと思う人もいるだろう。女性たちは夕飯に粥を作り、残りの茹で汁を生地作りに使った。そして翌朝、素早くボブィシキをかまどに入れれば、家族のための朝食ができたのである。
このパンケーキのもう一つの特徴はサイズが小さいことである。オーブンで焼くと小さなパンのようになり、フライパンで焼けばミニパンケーキになる。
3つ目の特徴は、甘いトッピングをつける点である。生地は脂肪分がないため、トッピングが料理に甘さを与えてくれる。かつては、麻の実と砂糖でクリームが作られていた。もう一つ、一般的だったのはハルヴァシロップのソースである。後になると、ココアパウダーがソースに加えられ、チョコレート味がつけられた。どの場合もソースは前もって作られる。熱々のボブィシキは大きなお皿に並べられ、上から甘いソースがかけられる。
ボブィシキのレシピでは、伝統的な特徴を考慮に入れつつ、今の事情も取り入れ、今手に入る食材を使うようにしている。また比率というものを大切にしている。きびの茹で汁と小麦粉の割合は1対1。生地はやや水気が多く、伝統的なパンケーキよりも厚く出来上がる。
ボブィシキをオーブンとフライパンの両方で作ってみたあと(写真参照)、わたしはフライパンで作った方がいいという結論に達した。オーブンで焼いたボブィシキはスポンジのようなパンになった。子どもたちはいろいろなフィリングが入っているこの小さなパニーニがお気に入りである。
上からかけるソースにはベリーのキセーリを作る。かなりパサパサした感じのボブィシキをソースに浸すと柔らかくて、ジューシーになる。
ここでは伝統的なやり方とはちょっと違う方法で盛り付けてみる。大きなお皿ではなく、一人一人のボウルに盛り付け、フレッシュなベリーと種を添えたデザートのような感じになっている。
材料(6〜8人分):
ボブィシキ:
- 小麦粉 - 350 g
- キビ - 75 g
- 水 - 750 ml (またはきびの煮汁400 ml)
- ドライイースト - 5 g
- 砂糖 – 大さじ2
- 塩 – 大さじ2/3
- 植物油
キセーリ:
- ラズベリー - 300 g
- 水 - 500 ml
- 砂糖 – 大さじ3〜6 (お好みで)
- コーンスターチ – 小さじ3
作り方:
ボブィシキ
1. 鍋にきびのひき割りと水を入れ、蓋をして40分ほど煮る。これでひき割りは柔らかくなり、完全に火の通った状態になる。
2. 煮汁をザルで濾す(400mlくらい取れる)。煮汁を冷やす。
3. 粗熱をとった煮汁に砂糖、イースト、塩、小麦粉を加える。ドロッとした生地を加える。ラップをして、冷蔵庫に入れ、7時間以上休ませる。
4. 翌日、生地は膨らみ、ブクブク泡立つ。ドロドロで手で扱いにくいときは、2本のスプーンを使う。
5. 昔ながらの作り方に従い、ここでも200℃のオーブンで15分ほど焼く。一つスプーン1杯(18グラム)で作る。
6. 焼くと、何を添えてもおいしく食べられるパンができる。
7. わたしのお気に入りの作り方、パンケーキのようにフライパンで焼くというもの。テフロン加工のフライパンにほんの少しの植物油を引いて焼く。ティースプーンでパンケーキの生地を広げ、焦げないよう弱火で焼く。弱火にしていてもすぐに焼けるので、木製のスパチュラでひっくり返す。
8. ボブィシキはふわふわでスポンジのようだが、それほど柔らかくはない。
9. ボウルにミニパンケーキを盛り付け、キセーリあるいはお気に入りのソースをかけ、しっとりするまで待つ。
10. ベリー、ナッツ、種などを添えて出す。
キセーリ
1. ベリーと水450mlを鍋に入れて沸騰させる。砂糖を加えて、さらに5分煮て、コンポートを作る。
2. ベリーをコンポートから取り出す。
3. コーンスターチを水50mlに入れ、均等に混ざるまで、泡立て器で混ぜる。
4. スターチをベリーの水に少しずつ加えていく。かき混ぜ続けること。混ざったら沸騰させる。
5. 常にかき混ぜ続け、キセーリがドロッとしてきたら火からおろす。
6. キセーリは温かいと水のようだが、冷めると固くなる。
7. 温かいキセーリをソースとして使う。