豆とプルーンを入れた南ロシアのボルシチ(レシピ)

ユリヤ・ムリノ
 ときおり、もっともクラシカルな料理さえも、その土地の気候や食の伝統の影響で、大きくアレンジされることがある。では、ロシア南方のクバン地方ではどのようなボルシチが作られているのか見てみよう。

 ボルシチは言うまでもなく、ロシアでもっとも愛されている料理であり、それぞれの地域にそれぞれの特徴がある。モスクワのボルシチといえば、深紅のビーツが豊富に使われていて明るい赤い色をしているが、南方のボルシチは温かみのあるオレンジ色をしている。それはトマトが主要な材料となっているからである。

 クバン地方で最初にボルシチが登場したのは18世紀。ウクライナ風のボルシチを主に作っていたコサックの到着がきっかけであった。しかし、ときと共に、クバンのボルシチはさまざまに変化していった。たとえば、クバンで使われるビーツは色が薄いため、ボルシチの色も明るめになる。

 南方の地域では、トマトやピーマンなどの野菜が豊富に採れ、どちらも甘くてスパイシーである。そこでクバンのボルシチには、トマトペーストではなく、ピーマンや生のトマトが使われている。

 隣接するカフカス地方のボルシチにもその影響が残っている。地域の料理には、豆とプルーンが広く使われている。このタイプのボルシチではジャガイモの代わりに豆が使われたり、あるいはジャガイモを入れた上でさらに豆が加えられたりしている。プルーンはスープに甘みを与えてくれる。

 豆とプルーンを入れることで、ボルシチはより具沢山で栄養たっぷりのスープとなり、さらにヴィーガンやダイエットをしている人にもぴったりな一品になる。ただし、基本的にはボルシチには肉が入っていることが多い。またカフカスのボルシチをさらにスパイシーにするには、「アジカ」と呼ばれる辛い唐辛子のソースを加える。

 クバンのボルシチは濃厚で香り豊かで、心温まる一品であり、健康な身体に必要なミネラルとビタミンを豊富に含んでいる。クバンの人々はこのボルシチを日常的にも、またお祝いの日にも作る。

材料(6人分=3リットル鍋):

  • 豆 1カップ
  • キャベツ(中) 1/2個
  • ビーツ(白い筋入りでもよい) 中2個または小5個
  • ニンジン 1本
  • タマネギ 1個
  • 甘い赤ピーマン 1個
  • 骨つき牛肉 300g〜
  • スペアリブ 600g(お好みで)
  • プルーン 60g
  • トマト 3個
  • トマトペースト 大さじ1
  • ニンニク 2片
  • 唐辛子 1個(お好みで)
  • ローリエ 2枚
  • ディル(お好みで) 1本
  • 塩・黒コショウ 適宜
  • 植物油(ひまわり油) 調理用 

作り方:

1. ドライビーンズをパッケージ通りに水にひたす。ミックスビーンズなら8時間ほど浸けておく。明るい色のスープにしたければ、ホワイトビーンズを使うとよい。

2. 水に浸けた豆(8時間後)と牛肉を冷水に入れ、ローリエ、塩、コショウを加え、120分から180分(肉の大きさや豆の種類により異なる)煮る。肉の骨も一緒に茹で、肉が柔らかくなるまで煮る。スペアリブを入れてもよいが、ブロスが十分に濃厚であれば、使わなくてもよい。スープをさらに濃厚にするには、牛肉を60分から100分煮た後に、スペアリブを加え、1時間煮る。

3. ブロスを作っている間に、他の材料を用意する。ニンジン、タマネギ、赤ピーマンをスライスし、塩をかけて、植物油をひいたフライパンで炒める。柔らかくなったら取り出し、同じフライパンでビーツを炒める。

4. ここではわたしが庭で栽培しているレインボービーツを使ったが、なければ普通のビーツでよい。皮を剥き、刻んで、油で炒める。トマトを刻んで加え、トマトペーストを入れ、ブロスを少々加える。この段階で、アジカソースを入れてもよい。まろやかな味がお好みの場合は、特に何も加える必要はない。ビーツが柔らかくなったら火を止める。

5. キャベツは千切りにし、ブロスがほぼ出来上がった頃に投入する。加えてから10分後にニンジンとビーツを加え、さらに5分茹でる。

6. 最後に刻んだプルーンと潰したニンニクを加える。またディルと新鮮なローリエを入れる。5分から7分、トロ火にかけ、火を止める。スープは1日置いてからいただくとよい。

7. クバンのボルシチはサワークリームとハーブ、ネギ、唐辛子を添えていただく。白パンとラードと一緒に出してもよい。

8. 華やかな南方の伝統料理をどうぞ召し上がれ!

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