ロシアの決済システム「ミール」が必要なわけ

Kirill Zykov/Moskva Agency
 ロシアの銀行が発行したVISAとマスターカードは、外国では使用できなくなる。現在、ロシア国内の主要な決済システムは、国内で開発された「ミール」になりつつある。

 2022年3月10日以降、ロシアの銀行(制裁対象外のものを含む)が発行したVISAとマスターカードでは、外国のオンラインストアでの商品やサービスの支払い、および現金の引き出しはできなくなる。また、これらのカードでは、Apple Pay、Samsung Pay、GooglePayのモバイル決済システムが機能しなくなる。

 しかし、ロシア国内では、VISAとマスターカードの所有者は、カードの有効期限が切れるまでは、口座の残高から引き出したり支払ったりできる(一部の銀行では、カードの有効期限が数年間延長されたり、無期限になったりする)。これらのオペレーションは、ロシアのカード決済システムで処理されるため、制裁の影響を受けない。カードが機能しなくなったら、銀行は、この決済システム「ミール」に基づいて、新しいカードを自動的に発行する。

 

「ミール」とは何か

 2014年に、ロシアのカード決済システムが作られた。これが、カード「ミール」のオペレーターで、国際決済システムのカードから切り離された場合に備えたものだった。既にその当時から、官庁など国の組織は、VISAとマスターカードを通じての支払いを徐々に減らし始めていた。年金、社会保障手当、公務員への給与などは、「ミール」のカードシステムに移行し出した。

 この国内カード決済システムによると、2021年夏、ロシア人の50%以上が、少なくとも1枚の「ミール」を持っていた。 2021年第3四半期の終わりまでに、それは国の支払いの25.2%を占め、合計1億1,200万枚のカードが発行されていた。

 

「ミール」はどこで使えるか

 ロシア人は、ロシア決済システムのカード「ミール」を外国でも――それを受け入れた国なら―使うことができる。現時点では10か国だ。

1. トルコ

2. ベトナム

3. アルメニア

4. ベラルーシ

5. カザフスタン

6. キルギスタン

7. タジキスタン

8. ウズベキスタン

9. 南オセチア

10. アブハジア

 また、ロシアの銀行「Tinkoff」のウェブサイトには、アラブ首長国連邦、韓国、イギリスでカードの受け入れがテストされているという情報が出ている。

 外国で現金を引き出すための条件は、銀行(カード所有者)に確認する必要がある。たとえば、Tinkoffのカード「ミール」を使うと、TinkoffのATMでは、手数料なしで最大50万ルーブル(*1ルーブル=0.87 円)、その他の任意のATMで3千~10万ルーブルを引き出せる。

 「ミール」は、Apple PayとSamsung Payに読み込まれる。このカードはまた、それ自身のモバイルウォレットを持っている。「ミールペイ」(Mir Pay)だ。NFCをサポートするAndroidスマートフォン(バージョン6.0以降)で利用できる。

 

他の国でのロシア人の支払いは?

 ロシア国外で購入代金を支払い、現金を引き出すには(「ミール」が無効な場合)、ロシア人は、二つのシステムを統合したカードをつくらなければならない。こうしたカードでの取引は、オペレーションが行われる国に応じて、さまざまなシステムで処理されることになる。しかし、追加で外貨の口座を開設する必要はない。必要額は、支払い時に、当該の通貨に換算される。

 ロシアのカード決済システムは、外国での購入代金の支払いと現金の引き出しのために、ロシア人に対して、「銀聯」(Union Pay)との「統合カード」をつくることを推奨している。

 「銀聯」は、中国の国内決済システムであり、2005年以来、国際的な地位を獲得している。しかも、2015年以降、世界で処理されたトランザクションの量の点で、VISAとマスターカードを上回っている。これは、中国の国内市場の規模が大きい一方で、他国の決済システムが実質的に存在していないためだ。

  「銀聯」に基づく「統合カード」は、中国を頻繁に訪れるロシア人顧客向けに、極東の地方銀行によってすでに発行されている。ロシアの他地域でも、こうしたカードをガスプロムバンク、ロスセリホズバンクその他でつくることができる。ロシアの大手銀行も、「統合カード」の発行を早急に始める計画だ。

 

ミール・銀聯カードに問題はあるか?

 2020年までは、中国の決済システムの普及は、中国人観光客が好む観光スポットと関係していた。「銀聯」によると、このカードは世界180カ国で受け入れられている。しかし、この数には裏がある。アジアでは実際、「銀聯」が広く普及しているが、世界の他地域の国のなかには、このシステムは、その国の1つの銀行、あるいは1つの店舗にしか通用しないことがある。

 また、次の問題も未解決のままだ。つまり、ロシアの銀行が発行した「統合カード」の選択的ブロックが、BINコード(発行者識別番号)によって確実に外れるかどうかだ。BINコードは、カードの最初の4桁番号で、銀行を識別するのに役立つ。

 

外国人はカード「ミール」をつくれるか?

 外国人にとって、VISAとマスターカードの制限は、それらがロシア以外で発行されたものである場合、それらによる決済がロシアではできなくなったことを意味する。

 外国人は、ロシアで買ったり払ったりするために、「ミール」のデビットカードをつくることができる。これは、158の銀行のどれか1つで行うことができ、その完全なリストは、このシステムのウェブサイトにある。たとえば、最大手のズベルバンクでは、このオプションはオンラインで行える。

 そのためには、ウェブサイトまたは銀行のファイルの申請書に記入し、メールアドレスと電話番号を示す。それらを通じて、カードができたという通知が来る。その際に、カードを受け取る支店を選択する。仮想形式(プラスチックなし)でカードを発行することも可能だ。

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