西洋美術をからかうソ連のアニメーション5選(動画付き)

Grigory Kozlov/Soyuzmultfilm, 1962
 長い間、ソ連では西洋のものへの愛を告白することはまったくできなかった。してもいいのは嘲笑したり批判したりすることだけ。アニメーションも同様だった。アニメーターはジャズ、不協和音、映画、抽象芸術についてコメントを惜しまなかった。

『大衆のお気に入り』 (1937年)

 伝説的なモスクワの映画スタジオ「ソユーズムルトフィルム」は1936年にディズニーの技術と美学を目指して設立された。 それは初期の作品、たとえばアレクサンドル・イワノフ監督の『大衆のお気に入り』などで特に感じられる。これはディズニーのシリーズ『シリー・シンフォニー』に似た作品だが、熱い風刺が込められている。

 制作者は、歌手のグース・ラプチャティと彼の仲間のフリュ・フリュ(ブー・ブー)を使って、歌謡界のいい加減な奴たちを嘲笑している。一つ目として、主人公は(初期のデザインの)ドナルドダックに信じられないほど似ている。グースの仲間は1933年のディズニーの同名のヒット作に登場する「3匹の子豚」のうちの1匹と明らかに関係がある。

 歌手志望の彼らは、他の音楽家の曲を盗み、コンサートを終えずに退席するだけでなく、西側のフォックストロットを流行らせる。そのうちどれが一番悪いのかはわからない。

『別の声』 (1949年)

 ソ連アニメーションの先駆者の一人であるイワン・イワノフ=ヴァーノについては、主におとぎ話が思い浮かぶ。彼の代表作にはピョートル・エルショフ原作の「せむしの仔馬」を基にした作品が2 つ、サムイル・マルシャーク原作の「森は生きている(12か月)」、その他多くの子供向けアニメがある。

 しかし、アニメーターやおとぎ話作家であっても、常に時代のテーマに関する何かを求められた。それは特にイデオロギー運動の時代はそうで、いわゆる「コスモポリタニズム」や「西洋の偶像化」(1948年から1953年)に対する闘争などを強く求められた。

 当時はポピュラー音楽を含むあらゆる文化領域がそのようなテーマの影響を受けた。当時の有名なスローガンは「今日ジャズを演奏している者は、明日は祖国を売るだろう!」だ。

 アニメの寓話『別の声』では、幸いにもイワノフ=ヴァノの作品は反逆罪までには至らず、「偶像化」であるとされた。プロットは、カササギは流行りを取り入れた海外から戻ってきて、森のみんなに古き良きナイチンゲールの鳴き声は時代遅れだと宣言する。カササギは素晴らしいジャズセッションを披露して、これからどのように歌うべきかを教えるが、森のみんなはカササギを笑い、追い払う。

『ある画家のできごと』 (1962)

 1962年12月にフルシチョフがマネージで行われた有名な展覧会を訪れた後、ソ連における抽象芸術への批判は頂点に達し、ソ連指導者はわいせつな発言をもってそれを批判し、前衛芸術家がギャラリーから排除され始めた。

 「ソユーズムルトフィルム」では、グリゴリー・コズロフが西側の写実主義芸術家の窮状を描いたアニメをすでに制作していた。その画家の絵を買う人は誰もいない。あまりにも退屈で、まったく流行りのものではない。ある日、彼の絵(エドワード・ホッパーの『夜のフクロウ』を彷彿とさせる)が雨に打たれて「浮き」はじめ、絵の具の染みとなり、そうするとその後すぐに高額で売却された。

 画家は状況を理解し、新しいジャクソン・ポロックとなった。彼はカンバスに絵の具をまき散らしたり、裸足でカンバスを踏みつけたり、ほうきでめちゃくちゃにしたり、肖像画や静物画をあらゆる方法で壊してゆく。

 夜には報いが訪れる。彼は自分が自分の絵の世界にいるという悪夢を見る。そこでは、自分が作ったモンスターに命が吹き込まれ、画家自身をモンスターにしてしまおうとする。

『オーケストラの国』 (1964年)

 15年経って『別の声』の物語が異なる設定で繰り返された。アメリカ人のサックス奏者が、超モダンなジャズプログラム「コカ・コーラフォニア」(資本主義の象徴である不協和音と炭酸飲料の両方を暗示している)をもって、交響楽団の楽器が住むこの街をツアーで訪れる。

 ヴィオラ、トロンボーン、バイオリン、その他の町民が初演に駆けつけたが、彼らの憤りは際限がない。メロディーはなく、サックスは音符の代わりにカエルを吐き出し、ドラムの伴奏者はブリキ缶を叩く。楽器はその音楽家たちにブーイングを浴びせるだけでなく、徹底的に叩きのめし、追い出して列車に乗せる。家に帰れ!

 物語を紹介し、最後の教訓を読み上げるナレーションを除いて、楽器は音楽のみを使って語る。

『強盗のやり方』 (1978)

 時代は変わり、西洋芸術、少なくとも映画は愛情をもって笑えるようになった。エフィム・ガンブルクの作品集はソ連のものを含む 4つの犯罪映画作品の常套手段をパロディ化した4つの短編作品で構成されている。

 アメリカ編では当然、銃撃戦、爆発、追跡が多い。カーク・ダグラスはお金をもらって服を着ていく逆のストリップを踊り、マーロン・ブランドは汚職警官を「演じる」。

 フランス編では、ジャン・ギャバンとアラン・ドロンがアニメーションの魔法を使い、訓練されたネズミを使って銀行強盗をする。しかし、重要なことは盗むことではなく、盗品をどのように分けるかだ。

 イタリア編では、多くの子供を持つ貧しい父親である主人公マルチェロ・マストロヤンニは、強盗の考えを声に出すだけでよく、イタリア全体と同じように、銀行員のいる一つの大家族が彼を助けるために動く。ただし、獲得金は金を貸してくれた人たち全員に直ちに分配されなければならない。すぐに幸せなニュースが父親に届く。彼の妻はさらに5人の子供を出産した。

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