ドラマの最初の舞台となるウィンターフェルの本城は、丘に囲まれた雪深い土地にある。スターク家の一族郎党はそうした丘に住み、いざ敵襲あれば堅牢な城内に籠る。
そんなウィンターフェルに引けを取らないのが、ナルヴァ川のほとりに15世紀に築かれたイヴァンゴロド要塞だ。イタリアの建築家らが設計した要塞は、銃眼を備えた強固な城壁を誇り、円錐形の屋根を備えた多数の塔が建ち、内側にも幾つかの建物を残している。その外観は、どことなくスターク家の居城に似ている。
第1シーズンは、壁の向こう側、未開拓の雪深い土地から始まった。森林も広がる地域だが、大部分は雪と氷に覆われた未踏の地である。
ロシアのコラ半島に連なるヒビヌイ山脈は、冬になると壁の向こう側の「自由民」の土地と見分けがつかない。3億9000万年前のものと推定されるヒビヌイ山脈にはいくつかの氷河があり、フリーライドの競技会が行われ、運が良ければオーロラにも出会える。
七王国とホワイトウォーカーを隔てる北の壁の元ネタは、ヤクーチアのレナ石柱自然公園ではないかとさえ思える。
作中の「壁」は高さ200メートル、長さ数百km級の、海から海まで伸びる巨大な氷の壁だ。伝説によると、最初の人間たちと巨人たちが共同で建設したという。
レナ川の石柱群は、河岸に40kmにわたって続いており、高さも100~220メートルに達する。ユネスコ世界遺産に登録されているこの自然の造形は、石の森を思わせる。何億年もの昔は海底だったが、地殻変動によってシベリア大陸が上昇し、石灰質の堆積物が地表で山岳状になったものである。
この石柱群は冬の間、雪と氷に覆われる時期が特に美しい。川べりに、まるで巨人が並んでいるかのような風景を作り出す。尾根の上から眺めれば、柵のように連なる石柱が龍の尾を連想させる。
ドラマシリーズの当初から、北部と対照的な七王国の首都キングズ・ランディングが登場する。丘の上の荘厳な「赤い城」は統治者一族の居城であり、城の一方からは市街のパノラマが広がり、反対側は川に面した断崖である。
よく似た場所が、クリミアのアイ・トドル岬にある。ロシア・ネオゴシック様式の「ツバメの巣城」は、高さ40メートルの突き出た崖の上にそびえる。ロマン主義的なこの建築は、おとぎ話に登場する城を思わせる。キングズ・ランディングの城よりも小さいが、より優美だ。
ツバメの巣城には4つの部屋の他は、玄関と、窓の無い石造りのガラス天井の台所があるのみだ。もともとは裕福な貴族のために建てられ、その家族が住んでいた。1917年の革命後に建物は放棄され、後に倉庫や読書室、レストランとして使用された。
デナーリス・ターガリエンは族長の妻となると、夫のドロゴとその騎馬軍団とともに遊牧民の唯一の都市ヴァエス・ドスラクに向かって草原を長旅する。
白海沿岸のポモールの集落近くに、クゾメニ砂地がある。別名「北の砂漠」とも呼ばれるこの土地は、約100年前に樹木の伐採と家畜の放牧によって砂漠になってしまったもので、窪地や砂丘が形成されている。
クゾメニ砂地は現在、四輪バギーや四輪駆動車の愛好家が集うスポットとなっている。砂丘のレースは、現地の住民や観光客に人気のレジャーだ。
七王国中でも特に裕福な土地を治めているタイレル家のハイガーデン城は、ウェスタロスで最も美しいとも言われる。川のほとりに位置し、鋸状の鋸壁に三重に囲まれている。
その外観からは、スダクにあるジェノヴァ要塞が連想される。要塞の面積は30ヘクタール。ビザンチン帝国がこの地に最初の防御施設を建造したのは7世紀のことで、中世になって監視塔などが増築された。
七王国のさらに南部に、砂漠と熱風と山ばかりの土地、ドーンがある。ドーンを統治しているマーテル家の居城がサンスピア城、離宮がウォーターガーデンズだ。後者は高地にあり、高い塔や迷宮のような居室を強固な城壁が隠している。
ドーンの描写は、ダゲスタンに似る。ダゲスタンのデルベントは、ドーンのロケ地としても適しているように思われる。古都デルベントの小高い丘の上には、ペルシャの要塞ナルィン・カラがある。その強固な城壁は厚さ2メートル、高さ20メートルにもなる。
6世紀にカスピ海の戦略上重要な地点に築かれたこの要塞は、現在まで良い状態で保存されている。浴場跡や地下貯水池、泉、宮殿やモスクの廃墟など、見所は多い。まさしく中世ファンタジー世界の様相だ。
グレイジョイ家が統治する鉄諸島は、荒々しい住民と残忍な海賊が住む。荒海の渦巻く湾を根拠地とする彼らは、頻繁な濃霧を利用して船舶を襲う。
カムチャッカ半島の沿岸の風景も、中々の迫力だ。半島の東側は湾や入江に富み、沿岸には急斜面が多い。独特の自然、温泉や黒砂の浜辺など、優美な風景を好む観光客を惹き付ける要素に溢れている。
赤い山脈のふもとの石造りの丸い塔は、シーズン6に登場する。喜びの塔と名付けたのは、レイガー・ターガリエン。彼はこの地で愛するリアナ・スタークと暮らし、リアナはここでジョン・スノウを産んだ。
ドーンからの強い風に晒された荘厳な建物は、劇中でも非常によく映える。負けず劣らず雄大な風景が広がるのが、イングーシ共和国のジェイラフ地区にあるヴォヴヌシキの中世の塔群だ。
これは山岳地帯にそびえる防衛目的の建築で、3つの塔から成る。2つは崖の上、もう1つは反対側の斜面に建っている。塔は細長いピラミッド型、銃眼を兼ねたスリット状の窓を持つ。建設時期は、17~18世紀と推定される。
山の尾根を背に、美しい峡谷の川に塔が建つ風景は、お姫様や騎士の闘技会やドラゴンの物語を連想させる。
ウェスタロスから東の巨大なエッソス大陸には、多くのドラゴンが暮らしていた。『ゲーム・オブ・スローンズ』の冒頭では、ドラゴンは絶滅したと考えられていた。初期のシーズンには、ドラゴンの巨大な骨と石化した卵が登場するのみである。
ジラントは「カザンのドラゴン」とされ、カザンの紋章に描かれている他、メインの鉄道ターミナルの建物、海軍省の建物や地下鉄にもその姿が見られる。カザン市のミレニアム公園でジラント像を探す「ドラゴン狩り」という楽しみ方もある。
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