ソ連時代の連ドラ:超人気の10作品はこれ

カルチャー
アレクサンドラ・グゼワ
 諜報員、警官、探偵――これらの長短さまざまな連ドラの主人公たちは、ソ連国民には身近に感じられ、広く愛されるようになった。

1. 『盾と剣』(1968年)

 アレクサンドル・ベローフ(俳優スタニスラフ・リュブシンの当たり役)は、ソ連の諜報員。彼は、ナチス・ドイツの「アプヴェーア」(諜報機関)に潜入し、重大な機密情報を入手することができた。

 しかし、彼は普通の人間として描写され、決して超人的ではない。また、ソ連映画で初めて、ナチスは滑稽な愚か者としてではなく、賢くて巧妙な敵手として描かれた。

 これは連ドラではなく、4部からなる大作映画であり、ソ連の諜報員についての最初の本格的な作品の一つだ。ソ連の秘密警察「KGB」の対外諜報を担当していた「第一総局」の創設50周年を記念して製作された。1968年の2か月間に、4部が続けて公開。映画館で上映されて大成功を収めた。映画の主題歌「祖国はどこから始まるか」は、時代を超えた大ヒットとなっている。

 主演のリュブシンによれば、ウラジーミル・プーチン大統領が諜報員になろうと決心したのは、この映画に触発されてだという。

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2. 『捜査は玄人がやる』(1971~2002年)

 モスクワ市刑事捜査局の 3 人の職員が、家庭内の殺人から美術品の違法取引まで、多種多様な難事件を解明していく。しかし、この連ドラでは、アクションシーンはそれほど目立たない。「捜査の玄人たち」は、主にオフィスで、頭脳と推理によってすべての犯罪を明らかにする。

 この作品は、ニコライ・シチョーロコフ内務大臣のイニシアティブで放映された。彼は、ソ連の警察の威信を高めようと試みた(1970年代には、勇敢でしかも人間味のある警官を描く映画やテレビドラマがブームになっていた)。

 このシリーズは 18 年間途切れることなく続き、その間に 22 本の映画が公開され、2002 年には 2 部構成の続編『捜査は玄人がやる:その10年後』が公開された。

 このシリーズと主な役を演じた俳優たちは、大いに人気を博した。また、主題歌も大変人気があり、その一節は慣用句として広まった。すなわち、「我々の仕事は危険で難しい。けれど、ちょっと見には目立たない」

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3. 『影は正午に消える』(1972年)

 富裕な商家の跡継ぎたちは、共産主義に盛んに反対していたが、革命と内戦の後、偽名でシベリアの村に隠れることを余儀なくされる。ところが、驚くべきことに、彼らの子供たちとその後の世代は、もはや典型的なソ連国民になりつつあった。

 7 つのエピソードは、ある村の生活を例にとって、内戦と第二次世界大戦から 1970 年代にいたるまでの20世紀全体をたどる。このように、この連ドラは、人々の運命を多面的に描き出している。この洞察力に満ちたドラマは、映画館でも上映された。

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4. 『春の十七の瞬間』(1973年)

 第二次世界大戦の末期、1945年早春のベルリン。ソ連の諜報員が、マックス・オットー・フォン・スティルリッツの偽名で、ナチス・ドイツの権力中枢に潜入していた。彼の任務は、ドイツの西側への降伏交渉を妨害することだ。毎日、見つかる危険を冒しながらも、彼は完璧に仕事をこなし、驚嘆すべき不屈さを発揮する。

 最も印象的なシーンの一つは、スティルリッツと妻の出会いだ。二人は、カフェの別のテーブルに座り、お互いを知らないふりをする。

 この 12 話のテレビ映画は、今も昔も非常に人気があり、多くの国家賞を受賞しており、ソ連の指導者レオニード・ブレジネフもお気に入りだった。スティルリッツのイメージ(ヴャチェスラフ・チーホノフが見事に演じた)は、多くの人にとってモラル、ヒューマニズム、プロフェッショナリズムの理想として残っている。

 2019年、スティルリッツは、理想的な政治指導者のイメージに最も合致する映画の登場人物として、世論調査で1位となった。

 さらに、彼は、ポップカルチャーでも真のヒーローになって、何千という小話(アネクドート)のネタになってきた。

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5. 『長い休み時間』(1973年)

 若い歴史家ネストル・セヴェロフは、若い労働者のための夜間学校で教師になり、さらにクラス担任もまかされる。多くの生徒は、この教師よりも年上で、みな家族持ちであり、それぞれの問題や悩みを抱えている。だから、ネストルは、歴史と規律を教えるだけでなく、彼らの個人的な問題にも取り組まなければならない。

 エフゲニー・コノノフからロラン・ブイコフにいたるまで、ソ連の人気俳優が、この4話のミニシリーズにずらりと顔をそろえている。多種多様な人物像と状況がそこで展開する。このミニシリーズはコメディ要素を持ちながら、ほのかな抒情性も兼ね備えている。今でもテレビでよく放送される人気シリーズの一つだ。

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6. 『永遠の呼び声』(1976~1983年)

 これもシベリアの村を描いた長編だ。この村もまた、20世紀に3度の戦争と革命を経験した。日露戦争から帰還した者もいるし、将来のボリシェヴィキとなる革命政党に密かに加わる者もいる。 歴史はこれらすべてを巻き込んで展開し、今やソビエト政権、集団化、第二次世界大戦、残酷な強制収容所が現れていく。物語は1961 年に終わるが、視聴者は最後まで、誰が正しく、誰が責任を負うべきか、誰が裏切り者で、誰が良心に忠実なのか、熟考を強いられる。

 連ドラは、2シーズン、合計19話からなる。このシリーズは非常に人気があり、国家賞を数多く受賞し、テレビでも繰り返し放映された。原作は、アナトリー・イワノフの同名の小説だ。彼は、これは正義、幸福、尊厳を求める人々の困難な闘いについての作品だと述べ、その中心的な思想をこう表した。「あらゆる真実、そして日々の生活の真実、とりわけ社会的なそれは、人々が簡単に到達できるようなものではない」

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7. 『集合場所は変えられない』(1979年)

 戦後のモスクワは、強盗その他のさまざまな犯罪に悩まされていた。モスクワ市刑事捜査局のグレブ・ジェグロフ大尉(詩人・俳優・シンガーソングライターのウラジーミル・ヴィソツキーが演じる)が、刑事部門を担当している。復員したばかりの若くて決断力のあるウラジーミル・シャラポフ(ウラジーミル・コンキンが演じる)が、彼を補佐する。

 このテレビ映画は、ソ連の警察を描いた連ドラの中で最も成功したものだろう。人気は非常なもので、全5回のエピソードがテレビで放送されているときは、その都度、文字通り街の通りが空になり、犯罪さえ減ったという伝説があるほどだ。

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8. 『シャーロック・ホームズとワトソン博士』(1980年)

 探偵界の最も有名なコンビが、一連の不可解な犯罪を捜査する。ソ連のこのシリーズは、アーサー・コナン・ドイルの原作にごく忠実につくられている。そして、屋外のシーンがロンドンではなくレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)、リガ、タリンで撮影されたにもかかわらず、驚くほど「本物っぽい」出来になった。 

 ソ連の俳優たちが11のエピソードで、純然たる英国紳士を表現できたことは、エリザベス女王からも高く評価され、ワシリー・リヴァノフ(シャーロックを演じた)は、大英帝国勲章を授与されている。このシリーズは、マーガレット・サッチャーも気に入っていた。

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9. 『タスは公表を承認された…』(1984年)

 KGBがあるスパイを突き止めようとしている。そのスパイは、アフリカの架空の国におけるソ連の活動に関する機密情報を米中央情報局(CIA)に渡している。

 米ソの諜報機関の対決は、冷戦時代に最も人気があったテーマだ。原作の推理小説は、ある程度、実際の事件に基づいており、モデルになった人物もいる。脚本の作者は執筆に当たり、KGBから直接助言を得ている。

 主役の1つは、誰もが好きな「スティルリッツ」、つまり名優ヴャチェスラフ・チーホノフが演じた。10 話構成のこの映画は、1984 年のロサンゼルス・オリンピック開催中に上映された。1980年のモスクワ・オリンピックを米国がボイコットしたのに応じて、ソ連もこれをボイコットした。

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10. 『海軍士官候補生よ、進め!』(1988年)

 18世紀のロシア帝国。3 人の若き海軍士官候補生が、国家の重大事の渦中の人となる。彼らは、さまざまな事件、宮廷クーデター、陰謀、そしてもちろん愛の渦に巻き込まれる。

 ロシア版の『三銃士』とも言うべき、この 4 話構成の冒険ミニシリーズには、素晴らしいキャスト(セルゲイ・ジグノフ、ドミトリー・ハラチヤン、ウラジーミル・シェヴェリコフのトリオ)と、今でも人気のあるサウンドトラックなど、すべてがそろっている。

 三銃士が「一人はみんなのために、みんなは一人のために」と言ったとすれば(*『ダルタニャン物語』第1部「三銃士」)、この海軍士官候補生たちは「そうがっかりするなよ!」と叫ぶ。 

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