「ラフタ・センター」:サンクトペテルブルクにある、ヨーロッパでもっとも高いビルについて知っておくべきこと

Anton Galakhov/TASS
 「ラフタ・センター」はヨーロッパで最も高く、世界で最も北に位置する高層ビルである。建設は2018年に終了しているが、内装工事が終わっておらず、まだ中に入ることはできない。

 「ラフタ・センター」は最初はサンクトペテルブルク市民には不評であった。建物は人々の間で「とうもろこし」、「サウロンの塔」、「ガスプロム塔」、「針」などと呼ばれた。

 現在の「ラフタ・センター」(当時は「オフタ・センター」)は、コンノグヴァルデイスキー地区にあるボリシェオフチンスキー橋の近くに建てられる予定であったが、都市の保護を訴える人々の反対に遭った。高層ビルはサンクトペテルブルクの歴史的景観を損ねるというのがその理由であった。

 その結果、建設は街のはずれにあるラフタで行われることになった。しかも、ビルの高さは当初予定されていた396メートルから462メートルに延ばされた。

もっとも高いビルはどのようにして建設されたか

 「ラフタ・センター」という名前は建設が行われた地区の名称をとってつけられた。ラフタというのは、サンクトペテルブルクが創建されるずっと前に作られた古いフィンランドの居住区である。ラフタというのはフィンランド語で「湾」または「入江」という意味である。実際、フィンランド湾がこの場所の近くまで広がっている。しかし、すぐそばに湾があるこの沼地に、どうやって高層ビルを建てたのだろうか?

 土壌の表面は確かに弱く、不安定である。しかし、その下には60万年以上前にできた古い粘土層がある。高層ビルは264本の杭が支えており、2015年3月1日にできたコンクリートの基礎はギネスブックに記録されている。「ラフタ・センター」は、連続したコンクリート打設作業で記録を打ち立てた。基礎を作るのに49時間もの間、コンクリートが流し込まれたのである。レニングラード州の13の工場が24時間作業でコンクリートを作り、建設現場には1分ごとに違うミキサー車が現れた。

 これらの基礎が、重さ67万トンの構造物、つまりラフタ・センターを支えることになる。もっとも、2019年にインドのパラヴァラムダム建設がこの記録を打ち破った

興味深い事実

 世界で11番目に高く、ヨーロッパでもっとも高い「ラフタ・センター」には、その高さ以外にも興味深い特徴がある。

 ビルの基礎は五角星の形をしている。ビルには、外の構造を作る5つの翼があり、およそ90℃に回転し、上に行くほど細くなっている。この作りによって、建物がねじれているような印象を与えるようになっている。

 建物に屋根はなく、天辺は尖塔状になっている。ちなみに、この尖塔は避雷針として機能している。雷のとき、ラフタ・センターに稲妻が落ちるため、サンクトペテルブルク市民らは美しい写真を撮る機会にめぐまれている。

 尖塔には自動気象観測所が付けられている。2019年に設置された観測所は、以来、温度、湿度、風力、風向に関するデータを記録している。サンクトペテルブルクの天候は一年のほとんどが雨で、尖塔は雲の下に隠れていることが多い。

 緑色のライトアップのおかげで、この建物は冬には巨大なもみの木になる。民族的なお祭りのときには、ロシア旗の3色でライトアップされる。しかもこの建物は街のどこからでもよく見える。

 きわめて激しい嵐のときでも、高層ビルの尖塔は軸から26センチしか傾かない。展望台を訪れた人々も何も感じないという。

 ちなみに2022年、展望台に天使の彫刻が設置された。この彫刻は、サンクトペテルブルクの宮殿広場にあるアレクサンドルの円柱に飾られているものを模造したものである。つまり街には現在、2つの守護天使がいることになる

 2021年、「ラフタ・センター」は高層ビル・都市居住協議会賞を受賞し、「高層ビルのファサード」部門で最優秀賞に輝いた。

中には何ができるのか?

 高層ビルが賃貸者や訪問者に対して開かれるのがいつになるのかはまだ分からない。ビル内部には、320メートルの高さのパノラマが楽しめるレストラン、そしてさらに上階に展望台が作られると言われている。隣接する複合施設には、プラネタリウム、大きさや形を変えられるイベントホール、スポーツ複合施設、科学教育センター、ショップなどが作られる。

 「ラフタ・センター」の上から見たサンクトペテルブルクの景色を見たければ、展望台にあるカメラが捉えれるリアルタイム映像を見ることができる。ヨーロッパでもっとも高い建物を訪れた人々の目の前にはこんな景色が広がっている。

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