「ファイブ」ガム
RBTH「12枚入りのガムで、包み紙に特定の課題が書かれている。『街で一番高いところまでのぼってセルフィーしよう』、『誰かに鳥肌が立つようなことをしよう』、『友だちに歯向かおう』、『死ぬ前に何をすることが必要か』」など」と、「ロシア連邦内務省アストラハン州局」のウェブサイトに記載されている。
「ウィリアム・リグレー・ジュニア・カンパニー」ロシア法人の法人窓口の責任者ナデジダ・ロバチョワ氏は、同社のガム「ファイブ」および「真実か行動か」の販売を停止する決定を行った。
ロシアの児童に危険な課題を課しているのはこれだけではない。児童に自殺を呼びかける「死のグループ」と呼ばれるグループがインターネット上で人気となっていることから、この「ファイブ」ガムをめぐり、騒動が起こった。
ロシアの人気交流サイト(SNS)「フコンタクチェ」で、匿名のユーザーが2015年に「クジラ」というゲームを始めた(「フコンタクチェ」は、4億1千万以上の登録ユーザーがおり、世界5位の人気を誇る)。このゲームには、「手を刺し通す」、「朝4時20分に起きて怖い動画を見る」、「刃物で足からクジラを彫り取る」、「一日中誰とも交流しない」、「高い建物の屋上に行って足を下へ垂らす」など、自分の肉体または精神に害を与える50の課題(1日に1つの課題)があり、それを実行する必要がある。最後の課題は自殺で、それにより、ゲームは「高度に発展」した、ゲームのシンボルである沿岸に打ちあがるクジラのようにこの世の重荷から「開放される」ものとなる。参加者の課題は、偽のアカウントから課せられている。ルールには、「誰にも言わないこと」、「常に課題を遂行すること」などがある。「クジラ」グループには、陰気な画像、日常の無意味さについてのコメント、大人のシニカルな世界への反発などがたくさんある。「心理療法・臨床心理学研究所」職員のアナスタシア・デリャギナ氏はロシアNOWにこう話す。「ベテランの心理学者がゲームを開発しているかのような感じを受ける。児童はどんな秘密でも惹かれる。死に関係するものならなおさら。児童に心理的な問題やトラウマがあるなら、ゲームの最後まで進んでも驚きではない」
2016年5月に「ノヴァヤ・ガゼタ」紙が調査記事を掲載したことで、このようなゲームがあることが明らかになった。ロシアの児童の自殺の統計と原因を探り、2015年11月から2016年4月までの間に自殺した児童の100人以上が、何らかの形で自殺に関連しているインターネットのグループに参加していた。「ロシア連邦捜査委員会」が記事に注目。「自殺に追い込んだ」容疑がグループにかけられた。「ロシア連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督局」の要求で、フコンタクチェの運営側は「クジラ」のハッシュタグのついたグループおよび投稿を削除し、ハッシュタグを貼りつけたユーザーをブロックするようになった。ゲームに対するユーザーの関心は冷めたものの、ロシア社会インターネット技術センターは今年2月、新たな有害なハッシュタグを発見した。これらは画像投稿サイト「インスタグラム」に、分単位で登場してくる。全部で4万5000の書き込みが発見された。投稿しているアカウントは、作成されて間もない偽アカウントばかりであった。
「合法性・政治的抗議研究センター」のエヴゲニー・ヴェネディクトフ所長は、「このような投稿は自然発生型でもなければ、一人のおかしな人間がやっていることでもない。これは統制された大人数の作業」
別の意見もある。「クジラ」と児童の自殺件数の増加の間に直接的な関係はなく、ゲームの登場自体は合法的だと。「ロシア科学アカデミー民族学・人類学研究所」の主任研究員ドミトリー・グロモフ氏は、ロシアNOWの取材に対して、こう話した。「児童の自殺の原因はかなり前から調査されている。家庭の問題、学校の問題、将来に対する恐怖心、罰に対する恐怖心。自殺の増加はいつも、経済危機、社会危機の時に起こる。自殺に追い込むことは可能だし、インターネットで自殺グループをブロックすることも必要だが、これで問題を解決することはできない。魚は頭から腐る」デリャギナ氏もこう話す。「あらゆるゲームが始まるかなり前から、ロシアの児童の自殺件数は世界で上位にあった(国連の2013年のデータによれば、ロシアはヨーロッパ第1位)。したがって、グループとは結果にすぎず、原因は家庭内、保護者が児童の問題から離れていることにある」
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